2023年03月08日 13:11 弁護士ドットコム
海外に滞在するNHK党のガーシー(本名・東谷義和)参院議員は3月8日、参院本会議を欠席し、懲罰処分として求められていた「議場での陳謝」に応じなかった。これまで一度も国会には出席しておらず、さらなる処分が検討されているという。
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ガーシー氏をめぐっては、インターネット動画サイトで著名人を中傷したなどとして、警察が暴力行為法違反(常習的脅迫)や名誉毀損、威力業務妨害などの疑いで、捜査を進めているとされる。
ガーシー氏は3月7日にインスタグラムを更新し、陳謝動画で「かならず日本には帰国いたします」と述べた。国会議員である彼は、日本帰国後に逮捕される可能性はあるのだろうか。今後の刑事手続きの行方について、元警察官僚の澤井康生弁護士に聞いた。
「警視庁はガーシー氏について暴力行為法違反(常習的脅迫)や名誉毀損、威力業務妨害などの疑いで家宅捜索をおこなったり、被害者から事情聴取するなどして証拠を収集しているはずです。ただ、仮に帰国したとしても、いつまた外国に行くかわからない状態といえるため、『逃亡の恐れ』も否定できません。したがって、警視庁はガーシー氏を通常逮捕するため逮捕令状を請求することができます」
澤井弁護士は、このように見解を語る。しかし、ガーシー氏は国会議員であるため、憲法によって、国会会期中は不逮捕特権が認められている。
「不逮捕特権とは、国会会期中はその所属する院の許諾がなければ、国会議員を逮捕することはできないという特権です。もともと、不逮捕特権は三権分立のもと、立法権を担う国会議員が行政権力たる警察や検察から不当な干渉を受けることのないようにその身分を保障した制度です」
不逮捕特権があるかぎり、警視庁はガーシー氏を逮捕することはできないのか。澤井弁護士は、国会会期中にガーシー氏が帰国した場合、次のような手続きをふめば、通常逮捕ができると説明する。
「まず、警視庁が東京地方裁判所に対して逮捕状を請求します。裁判所が逮捕状発付が相当と判断した場合、裁判所は、内閣に逮捕許諾請求書を提出します。これを受けた内閣は、閣議決定を経て被疑者となっている議員が所属する議院に対して、逮捕許諾を求めます。所属する議院の許諾が得られれば、警視庁はガーシー氏を通常逮捕することができます」
実際に、戦後、国会議員に対する逮捕許諾請求が認められた事件は16件あるという。
「参議院としてもガーシー氏の逮捕許諾請求を否決する理由はないと思います。会期終了後に逮捕する場合には不逮捕特権は認められませんので、警視庁は議院の許諾なく、ガーシー氏を通常逮捕することができます」
3月8日の国会を欠席したガーシー氏に対しては、さらなる処分として、除名処分の可能性も報じられている。
「実際に除名処分がなされた場合、ガーシー氏は議員ではなくなりますので、不逮捕特権も自動的になくなります。したがって、警視庁はガーシー氏をいつでも通常逮捕することができるようになります」
【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(3等陸佐、少佐相当官)の資格も有する。現在、朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/