2023年03月07日 17:11 弁護士ドットコム
凸版印刷(東京都文京区)で働く40代の女性社員が、フレックス制度の利用を認められないといった仕事上の不利益取り扱いなどが原因で適応障害を発症したとして、中央労働基準監督署が労災認定した。認定は2022年4月28日付。女性と女性が加入する労働組合が3月7日、記者会見を開いて明らかにした。
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女性は「労災認定されても、会社は就業規則上の業務上の災害とは認めず私傷病扱いとしており、今も不利益を被っています。社内でも私の労災を知っている人は少ないです。労災後の不利益な取り扱いが繰り返されないように会見を開きました」と訴えた。
女性が加入する「総合サポートユニオン」によると、女性は2011年に入社し、人事労政本部に配属され人材育成業務を担当してきた。
女性は2020年5月の緊急事態宣言明けに、育児のため有給休暇を取得した。8月に復職すると、緊急事態宣言中に止まっていた業務に追われた。11月にはフレックスタイム制度に勤務形態を変えたいと希望したが、残業申請を適切に行っていなかったなどの理由で、適用してもらえなかったという。2021年2月に適応障害を発症したという。
労基署は、女性が2020年8~9月に残業が月20時間以上増加し月45時間以上の残業をしたこと、20年9月と11月~12月に2週間以上にわたって連続勤務をしたこと、上記フレックスタイムが適用されなかったことなどが原因で心理的負荷を受けたとして、労災認定した。
女性によると、2020年当時、女性はフレックス制度が適用されていなかったため、持ち帰り残業が禁止されていた。上司からは「(テレワークで)残業をつけてはいけない」と言われていたため、止むを得ず勤務は申請せずにサービス残業をしていたという。
女性が2020年11月にフレックスタイム制度を希望すると、会社は12月のPCログを調べ、女性が勤務表で申請せず自宅でサービス残業をしていたことを指摘。「虚偽の申告を行った」などの理由で、懲罰委員会の対象としたという。
中央労働基準監督署は、2020年12月に未申請だった25時間分の残業代未払いが労働基準法37条違反にあたるとして、同社に2022年7月12日付で是正勧告を出している。
女性と同じ職位の同僚は、ほとんどがフレックス制度を適用されているという。女性は「今後、職場環境の改善と子育てと仕事が両立できる働き方を求めて、交渉していく」と話した。
凸版印刷広報部は取材に、以下のようにコメントした。
「女性正社員に労災保険が給付された事例については、認知しておりますが、会社としては、当社の勤務制度の適用に則って、適切に対応しており、ご指摘にかかる差別や不利益な取り扱いは行っておりません。 本件に関しましては、すでに労働基準監督署に相談をしており、今後も確認しながら、適切に対処してまいります」。