働いていれば理不尽な目に遭うこともあるが、ものには限度がある。複数回の転職経験があるという大阪府に住む40代前半の男性(エンジニア、機械・電気・電子・半導体・制御/年収600万円)が、「IT業界の特定派遣として客先に常駐していた」ときの、理不尽すぎるエピソードを語ってくれた。
特定派遣とは、派遣元の会社に常時雇用される働き方(編注:2015年に廃止)で、男性によれば正社員扱いで「会社と顧客の間で、人件費について契約されて」いたという。
「終電の時間になっても誰も帰れない」
「ある時、大手電機メーカーに常駐することになり、『定時内の作業なので、人件費は定額』として、会社間で契約されており、私の残業代も出ないことになっていました。(給与は年俸制に近いため)」
ところが、いざ勤務を開始すると、 大手電機メーカーのプロジェクトリーダー(課長クラス)からは、
「残業代が出ない我々の代わりに、残業代の出る君らに稼がせてあげているんだ!」
と、契約とはまったく違うことを言われた。しかし言い返すことはできなかったようで、「業務を早く終わらせても次から次へと割り振られ、 深夜までの残業・休日出勤が当たり前の状況に」なっていたという。
「終電の時間になっても誰も帰れない状況で、無言の圧力に負けて…… 毎日のように、タクシーで帰るようになっていました。タクシー代を差し引くと給料が、半分になっていたのは衝撃でした」
「怒りと情けなさに、すぐ辞めたかった」と語るが、「一般派遣と違い自分の会社の顔があるので、周りから文句を言われないように」と耐え、タクシーに乗って帰るのが精いっぱいだったと振り返る。
最終的には「半年ほどで運よくプロジェクトが消滅したので、引き上げることができました」という結末になった。
「契約と実態が違うということで、全員がボイコットした」
しかし、話はそれで終わらない。男性は「余談です」としてその職場で一緒に働いていた他の協力会社について次のように明かしている。
「ある日、協力会社の人が全員欠勤したので大騒ぎになりました。契約と実態が違うということで、全員がボイコットしたのでした。引継ぎも何もしておらず、その協力会社は損害賠償や裁判沙汰にされたら困るということで、ペナルティとして、無償で1か月間引継ぎしてから引き上げるということになっていました」
労働条件の不満からボイコットしたであろう協力会社の人たちも、大手企業に最後まで歯向かうことはできなかったのだろう。同様の立場だった男性は、身につまされたように当時をこう回想していた。
「引継ぎをしていた人達は隅へ追いやられ、死んだような眼をしていました。大手電機メーカーの怖さを感じた瞬間でした。そして、もう二度と、このメーカーの製品を買うことは無いと心に決めました。あれから10年経ちましたが、今でも思い出すと気持ちが重くなります」
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