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嫌疑不十分で不起訴なのに、警察が指紋データを消さない…日弁連が人権侵害だと勧告

2023年03月01日 18:21  弁護士ドットコム

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嫌疑不十分で不起訴処分となったのに、指紋情報をデータベースから削除しないのは人権侵害であるなどとして、日弁連は3月1日、警察庁と警視庁に速やかに削除等をするよう勧告したことを明らかにした。勧告書は2月27日付。


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都内の警察署から任意の取り調べを受けた人物が、人権救済申立てをしていた。



●指紋とりたがる警察

勧告書によると、持参したハンコを供述調書に押印したにもかかわらず、警察が署名と指印も求めてきたという。さらに断ることができると説明することなく、別途この人物の指紋を機械でも読み取り、記録として保管した。



この点について日弁連は、警察がハンコで十分なのに指印が必要であると誤信させたと指摘。警察が適切な対応をとっていれば、異議を述べたり、拒否したりもできたとして、人格権やプライバシー権の侵害に当たるとした。



また、指紋記録は不起訴処分となった後も削除されていないといい、この点についても人権侵害だとした。



●指紋やDNAめぐるルール整備は不十分

指紋データは警察の捜査に有益で、警察は2014年4月時点で約1040万人分の指紋情報を保管している。



しかし、指紋データは同時に終生不変の高度にセンシティブな情報でもある。日弁連は1997年に無罪が確定した場合は、指紋データを削除するよう勧告。今回の勧告はさらに不起訴処分のうち嫌疑なし、嫌疑不十分についても同様とすべきと範囲を広げたものだ。



しかし、指紋データの削除について明確な規定はなく、一度警察に指紋をとられるとデータ削除は容易ではないのが実態だ。



近年は指紋だけでなく、DNAが採取されるケースもある。愛知県では、不起訴処分や無罪になった男性たちが指紋やDNAデータの削除等を求めて裁判を起こしている。一審では削除を命じる判決と保管を容認する判決が出ており、それぞれ高裁で争われている。