2023年02月28日 10:21 弁護士ドットコム
別居中の夫(父)が、無断で自宅の鍵を交換し、自宅から妻子の荷物を持ち出して立ち入りをできなくしたとして、妻と子が、夫と夫の代理人弁護士に対して損害賠償を求めていた裁判で、1月31日、千葉地裁松戸支部は計165万円の賠償を命じる判決を下した。
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判決ではこれらの行為について、緊急事態宣言下であり、不動産屋も休業中だったため、妻と子らは「すぐに住居を見つけることができず、原告(妻)の職場の上司や妻の代理人弁護士の協力により一時的な住居や必要な生活用具を確保したのであって、これらによる精神的苦痛は多大」「被告の行為が原告の生活に打撃を与える態様でなされた事情に加えて、本件で現れた一切の事情を総合考慮」した上で、原告(妻と2人の子)に対して計165万円を支払うよう命じた。
夫の代理人弁護士のみ控訴した。
判決文から経緯をたどる。
夫は2019年8月末日、不貞相手の女性との不貞行為が発覚した後に別居をはじめ、自宅には妻子が残った。妻は夫婦関係円満調停を申し立て、妻の代理人から夫の代理人に対して、不在中は自宅に立ち入らないように伝えていた。また自宅の売却のための内覧に妻が同意することにも合意していた。
事態が変わったのは、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発出されていた翌2020年4月以降のことだった。
妻は人との接触を減らすように求められているとして内覧を断った。すると夫は、妻子が不在中(子の入院にともなって妻は不在)、父母の協力を得て玄関と勝手口の鍵を交換した上、妻子の所有物を搬出し、千葉県内のトランクルームに移動させた。
この行為について、事前に妻側には不在を確かめる連絡などは一切なかった。
裁判では(1)鍵を変えたこと、荷物を搬出したことについて、夫の弁護士の共謀が認められるか否か (2)被告らの行為について違法性が阻却されるか、あるいは過失相殺事由があるか否か、などが争われた。
判決では、夫の弁護士が「被告が荷物を搬出する可能性があることを認識した」日から実際に搬出された日までの間、妻の弁護士に対し、妻が実家に帰宅しているか、内覧のための移動を承諾するか確認することがなかったことを指摘。
夫や夫の父母が搬出、鍵の交換をしたことにつき、夫の弁護士はそれらについて「容認」していたとして、夫や夫の父母と「共謀したと評価することができ、共同不法行為の責任は免れない」とした。
また、こうした行為が緊急事態宣言下であったこと、子が入院していたことなどから妻が内覧を拒否したことは「責められる事情とは認め難い」として、夫が「自力救済を行うことを肯定する特段の事情は認められず、原告に過失があるとは認めることができない」と判断を示した。