2023年02月25日 10:11 弁護士ドットコム
お店にない商品を取り寄せる「お取り寄せ」。商品を注文後にお客からキャンセルされてしまったという小売店側からの相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
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相談者は、電話で商品の取り寄せを依頼されましたが、商品入荷後にお客から「やはりいらないからキャンセル」と言われました。取り寄せた商品は本来店頭にて販売できるものではないため、デッドストックとなってしまいます。
本来は事前に「ご注文後の商品のキャンセルは受け付けておりません」と伝えることになっていましたが、今回は伝達ミスで伝えていませんでした。お客は「消費者保護の法律でキャンセルは認められているはずだ!」の一点張りで、キャンセル不可の連絡をしていなかったこともあり、客の要望に応じることになりました。
今回のように、店は取り寄せ商品について客側からキャンセルされた場合、代金を請求できるのでしょうか。その場合、事前通告していたかどうかがポイントになるのでしょうか。大村真司弁護士に聞きました。
——お客は「消費者保護の法律でキャンセルは認められているはずだ!」と主張しているようですが、どうなのでしょうか。
まず、消費者保護の法律で、この場面のキャンセルに使えそうなものはありませんね。
いわゆるクーリングオフは無条件解約の権利ですが、訪問販売、電話勧誘販売など、取引類型が限定されています。民法や消費者契約法に基づく契約取消は、業者側に問題行動があった場合に適用されます。
自分から電話で連絡して取寄せを依頼し、心変わりでキャンセル、という場面にはどの法律も適用されません。
——店側はキャンセルした客に対して代金を請求できますか?
今回の問題は、売買契約が成立していると言えるか、つまり、売主と買主が売買について意思の合致をしたといえるかどうかです。
今回の件では、取寄せ依頼とその承諾には争いがないですが、売る・買うという点の明確な合意がありません。そこで、これが売買についての合意と評価できるかが問題です。
注文後のキャンセル不可を伝えたケースでは、売買の合意があったと判断できるケースが多いでしょうが、今回は伝えてないので微妙ですね。
商品がありふれたものだった場合は、ただの取り置きと評価される場合が多いでしょうが、オーダーメイド商品などの場合には、売買契約成立と判断されるケースもあるでしょう。
「デッドストックになった」ということは、ありふれたものではないのでしょうが、デッドストックになるほど希少ということまで顧客に予想できたかは分かりません。トラブルを防ぐ意味でも、キャンセル不可を伝えることは重要だと思います。
【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。広島弁護士会 非弁・業務広告調査委員会委員長、消費者委員会委員、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員
事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com