2023年02月24日 09:51 弁護士ドットコム
体調が悪くなり会社を休む場合、まだ消化していない有給休暇を当てることはできるのでしょうか。弁護士ドットコムには「体調が悪いため明日有給を取りたいと派遣会社に連絡したところ、有給を認めてもらえませんでした」という相談が寄せられています。
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相談者の妻が働く派遣会社は、身内などに不幸があった場合を除き、7日前に申請しないと有給扱いにできないという規定があります。そのため、直前の申請は欠勤扱いとなると説明。
今回のケースのように、前日や当日など、直前のタイミングで有給申請をした場合、有給は認めてもらえないのでしょうか。江上裕之弁護士に聞きました。
——有給の取得日はどのように決められていますか?
労働基準法は、従業員が有給取得日を指定する権利を持つことを前提として、それが「事業の正常な運営」を妨げる場合に、会社は有給取得日を変更できるという形で調整を図っています。
つまり、従業員が希望する日に有給をとることができるのが原則ではあるが、「事業の正常な運営」を妨げる場合は、会社は有給取得日を別日に変更できる、というのが基本的なルールです。
——当日申請もOKなのか、前日までに申請しないとダメなのか、法的に決まっていますか?
有給申請の締め切りについて、法律上の規定はありません。
そのため、就業規則などで、有給の申請は7日前までに行うことなどのルールを設定している会社も多く、判例は、このような定めは合理的な内容である限り有効としています。ですので、このような定めがある会社では、一応そのルールにのっとって事前に有給を申請しておくのが無難です。
しかし、そもそも会社が有給日を別日に変更できる根拠は、「この日に有給をとられると『事業の正常な運営』の妨げになる」という理由です。
例えば相談者の方が同僚らに事情を説明し、同僚らが相談者の方の業務をカバーしてくれる体制をとれているようであれば、前日や当日の申請であっても、会社側は有給の取得を認めるべきだと考えます。
——仕事に支障がなければ問題がないことも多そうですね。
例えば「原則7日前までに申請が必要だが、代替要員を確保するなどして担当業務に穴をあけないよう手配を済ませている場合は前日の申請でも可」など、有給のルールを分かりやすい・使いやすいものに変えていくことは可能です。
有給取得のルールが不透明、7日前に申請しないと有給をとれないなどでお困りの場合、弁護士または労働組合を通じて会社側と協議すると良いでしょう。
有給のことに限らず、会社の就業規則を分かりやすい・使いやすい形に変えていきたいとお考えの方は、労働者側・使用者側問わずご相談をお受けしていますので、ご相談ください。
【取材協力弁護士】
江上 裕之(えがみ・ひろゆき)弁護士
日本労働弁護団・九州労働弁護団所属。主な取り扱い分野は労働問題と医療問題で、平成24年からは公益社団法人全国労働基準関係団体連合会の委託を受けて、全基連の主催する個別労働紛争処理研修の講師も務めている。
事務所名:岡部・江上法律事務所