2023年02月22日 07:41 リアルサウンド
「職場恋愛」と聞くと、どうしてもリスクに目がいきがちな時代かもしれない。しかし、2月6日にTwitter上で公開されたオリジナル漫画『天然課長と真面目部下の恋が始まるかもしれない話』(こんなわたしも恋がしたい!)を読むと、仕事を通じて結ばれた関係性の尊さと、いじらしい展開に胸がキュンとする。
(参考:漫画『天然課長と真面目部下の恋が始まるかもしれない話』を読む)
学生時代に男子生徒から容姿いじりされた経験がトラウマとなり、男性と話しているとつい表情がこわばってしまう斎藤清美。周囲から怖がれがちな清美だが、それでも課長の原田は色眼鏡で見ずに接してくれる、大好きな存在だ。なんとか原田と親密になりたいものの、恋愛面には自信がないため関係は進展せず。そんななか、原田が体調を崩したことを知り、清美が彼の自宅を訪問すると――。
本作を手がけたのは、高校時代に30分かけて文房具屋さんまで母親に車を出してもらい、同人誌用の原稿用紙とつけペンを買ったり、現在に至るまでお姉さんから漫画制作を応援してもらったり……と、家族のサポートを受けながら漫画制作を続けてきたという、ただのゆうさん(@Yu_Tadano444)。大人になっても胸がソワソワする、甘酸っぱい本作を描いた経緯など話を聞いた。(望月悠木)
――『天然課長と真面目部下の恋が始まるかもしれない話』を制作したきっかけから聞かせてください。
ただのゆう:2022年5月ごろに、初めて担当さんについてもらった状態でデビューを目指して原稿作りを始めました。ただ、本作は2人目の担当さんと作ったものになります。というのも、1人目の担当さんとはずっと学生モノを想定して制作していたのですが、緊張していたのもあって煮詰まりに煮詰まっている間に異動になってしまい……。その後、後任として現担当さんがすぐに決まり、「気分転換に大人の恋愛でも描くか~」と筆を進めた結果、本作ができ上がっていました。気分転換って本当に大事ですね。
――登場人物はとてもわかりやすく、しっかり作り込まれた印象を受けました。
ただのゆう:「とにかく男らしくて性格も体格も頼り甲斐のある男性が描きたい!」という思いから生まれたのが原田課長です。完全に私の中の理想の人ですが(笑)。ただ、理想だけだと読者に共感してもらえなかったり、「こんな人いるわけないじゃん!」と思われたりするので、女心に鈍感なところとか、その他本作で描いていたところでも現実味をできるだけ持たせる意識をしました。
斎藤はモデルなどはいませんが、「“自分の容姿に自信がない”という性格などは自分自身が少し投影されてる」と思います。漫画って自分の知っていることしか描けないので、自分と似た部分が出てくるのは必然なのかもしれませんね。
――斎藤の喜怒哀楽がわかりやすく描写されていましたね。
ただのゆう:斎藤は幼少期の男子からの容姿いじりのせいで、大人になった今も男性と対峙する時は無意識に顔がこわばってしまいます。「斎藤が怖いと周りから思われていることを読者にわかってもらえるように、1ページ目の彼女の表情はしっかり怖く描いてください」と担当さんには念を押されました。また、彼女が恋をしている表情は、とても幸せそうに恋人の話をしている友人が参考になった気がします。そういう時の彼女たちは本当に幸せそうで、そして可愛いんです。ですので、後半の斎藤はそういう可愛さが出るように心がけました。具体的な描き方でいうと、眉毛と口は他部位よりも意識して丁寧に描いています。
――原田は筋肉質に描かれており、マッチョな男性も登場しました。男性の筋肉を描く際のこだわりを教えてください。
ただのゆう:胸筋はこだわって描いています。また、どんなに細い男性でも筋肉をつけることを忘れないことです。目に見えなくてもいいので、とりあえずちゃんと筋肉がついてる動きをさせます。ただ、これは女性も同じですね。
――描いていて楽しい筋肉、もっと上手く描きたい筋肉などはありますか?
ただのゆう:描いていて楽しいのは三角筋から指先までの流れと、人体を斜めから見た時にチラ見えする広背筋です。もっと上手く描きたいのは全部ではありますが、強いて言えば骨盤あたりと背面の筋肉全部です。私にとって筋肉は男女問わずキャラの色気を表すのに、とても大事な部分だと思っているのでもっと勉強します!
――斎藤が過去を回想するシーンで、原田が斎藤を庇っていましたが、その際の原田のセリフがとても印象的でした。決して陰口をたたくことは否定せず、それでもTPOをわきまえることを諭すのは素敵だと思いました。
ただのゆう:動画サイトの心ないコメントを見て思ったこと、嬉々として会社内の上司と部下の関係をあることないこと噂する親戚に対して感じていたことなど、いつの間にか課長が代弁してくれた形になりました。
その人が感じることを善悪に分けることなんてできないと思っています。ただ、私たちは独りで生きているわけではなく、家庭や学校や職場その他の場所でも常に周りに人がいて、人がいる数だけ人生があって、心があると思います。不満をいう側にも心があるし、それを聞く・聞こえてしまう側にも心があります。そのことを考えずに不満を言っていた喫煙室の彼の言葉はいわば“暴言”です。「私も課長のように言葉を紡げる人になりたい」という思いが込められたシーンでもあります。
――続編の予定はありますか?
ただのゆう:まだ詳しいことを言えませんが、その予定はあります。読者さんからも「続きが読みたい!」という声をもらっているので本当に嬉しく思っています。
――最後に今後の目標などあれば教えてください。
ただのゆう:現在連載に向けた作品を担当さんと作成中ですので、楽しみにしていただければなと思っています!
(望月悠木)