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TGR WRCチャレンジプログラム2期生、ラリー・スウェーデンでついにWRCデビュー

2023年02月14日 14:21  AUTOSPORT web

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大竹直生/マルコ・サルミネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)2023ラリー・スウェーデン
 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生、大竹直生、小暮ひかる、山本雄紀は、2月9日(木)~12日(日)に開催されたWRC世界ラリー選手権第2戦『ラリー・スウェーデン』に参戦し、二輪駆動のラリー4車両を用いるRC4クラスでWRCデビューを果たした。

 今回のラリー・スウェーデンでは、TGR WRCチャレンジプログラムの1期生である勝田貴元が自身初となるワークスノミネートを受けてTGRワールドラリーチームから出場。勝田の後輩にあたる大竹、小暮、山本も将来トップカテゴリーへの参戦を目指しているが、今回WRCに参戦した目的は勝田とはまったく異なるものだ。

 大竹をはじめとする3選手は、2022年1月にフィンランドで開催されたTGR WRCチャレンジプログラムの2期生の選考会に参加し、翌2月にプログラムへ選出された。それから約1年という節目を迎えた3選手は、これまで参戦してきた国内選手権レベルの大会から世界選手権へ大幅なステップアップを果たすこととなった。

 今回のWRC初参戦における主な目的は、4日間で計18SS、都合301.18kmという長い競技区間(スペシャルステージ)を走るイベントへの適応だ。 

 3選手は今回のラリー・スウェーデンに、これまでも使用してきたルノー・クリオ・ラリー4で出場したが、過去に参戦してきたラリーとは状況が異なり、RC4クラスには他に1台しか参加車両がいないうえ、彼らのスタート順は上位クラス51台の後となり、荒れた路面を攻略しなければならなかった。さらに、雪と氷に覆われたスノーラリーへの参戦も1月のラップランド・ラリーに続いてまだ2回目であり、多くのステージで暗闇の中を走るなどチャレンジングなラリーを経験することになった。

 ラリー序盤のステージでは大竹と山本のタイムが非常に近く、デイ2(金)の最終ステージ終了時点ではわずか1.3秒の差で大竹/サルミネン組がリードしクラストップに立っていた。その後、タイムコントロールへのレイトチェックインにより山本/テイスコネン組に10秒のペナルティが加算されたことで、両車の差はデイ2終了時点で11.3秒に拡がった。

 デイ3(土)では山本/テイスコネン組が挽回をみせ、午後のSS12で大竹/サルミネン組をわずかにリードして一時トップに立つ。しかし、続くSS13で電気系統のトラブルが発生。これによりふたつのステージを残してデイリタイアとなってしまう。山本の脱落により後続との充分なタイム差ができた大竹/サルミネン組は、その後も大きなミスやトラブルなく完走し、前回のアークティック・ラップランド・ラリーでの2位に続いてクラストップでラリーを終えた。

 一方の小暮は、デイ2のSS5でタイヤ交換を行ったためタイムを失い、難しい出だしとなってしまったが、デイ3以降は自身のペースを取り戻しラリーを走り切った。最終日のSS17では雪壁にスタックしたことで約15分のタイムロスをしたものの、週末を通してその成長をしっかりと周囲に示してみせた。

「改善点はまだたくさんあるが、彼らが集中力を保ち、うまく対応したことには良い意味で驚いている」と育成プログラムのチーフインストラクターを務めるミッコ・ヒルボネンは語る。

「難しいコンデションかつ距離の長いラリーのほぼ最後尾を走るという状況で、彼らは柔らかくなった雪がサイドにたくさんある、深い轍の上を走ることになった。参加台数の少ないクラスで競争はあまりなかったが、皆うまくやったと思う」

■大竹「逆に難しく感じてしまった」

 ヒルボネンは、大竹と山本、そして小暮、各選手の走りを次のように振り返った。

「 大竹は後続と差がつき、このまま結果を維持してフィニッシュしたいという状況で少しプレッシャーを感じたと思うが、とてもうまく対応してミスなく走り切った」

「山本には今回もまたトラブルが発生してしまい、とても申し訳なく思う。戦線離脱を余儀なくされ、本当に不運だった」

「小暮は週末を通して大きく成長した。彼 には金曜日が終わった後、勇気を出してもう少しプッシュすることでドライビングが流れに乗りやすくなるとアドバイスをした。彼は土曜日にそれをしっかりと実践し、とてもうまく改善できていた」

今回の『ラリー・スウェーデン』で、初めてWRCに参戦した3選手コメントは以下のとおりだ。

●大竹直生(ルノー・クリオ・ラリー4/RC4クラス1位)
「新しいことがたくさんあり、学ぶことばかりのとてもエキサイティングな週末でした。路面状況はかなり荒れていて、とても狭いと同時に高速のセクションがあったり、新しい経験でした」

「山本選手との接戦は楽しかったです。勝ちたいと思ってプッシュしていましたが、良いリズムとフィーリングを掴むことができました」

「山本選手がデイリタイアになってしまった後は、自分自身がきちんと走り切ることがポイントになり、ミスをしないようにと思ったら、逆に難しく感じてしまいました」

●山本雄紀(ルノー・クリオ・ラリー4/RC4クラス4位)
「初めてのWRCは、素晴らしい経験でした。今回もテクニカルトラブルでストップしてしまったのは残念でしたが、それでもなお、多くの距離を走れましたし、多くの車両が走った後の荒れた路面を走るという経験ができたのもよかったです」

「雪が柔らかくなっている2ループ目は、私たちの二駆車両にとってはかなり難しかったのですが、それでもラインに残って良いペースを保たなければならないという状況もとても良い経験になりました」

「週末を通して良いペースで走れましたし、改善点をたくさん見つけた前回のラリーからとても成長できたと思います」

●小暮ひかる(ルノー・クリオ・ラリー4/RC4クラス3位)
「前回のラリーの後、たくさんのレッキトレーニングとフィジカルトレーニングに加え、オンボード映像を見て自分のドライビングを分析し、準備をしてきました」

「今回のラリーではタイムとパフォーマンスの両面で改善ができたと思います。金曜日、他の選手に比べてタイムは失ってしまいましたが、土曜日は徐々にフィーリングが良くなり、タイム差が縮まりました」

「さまざまなコンディションの中で、長い距離を走ったことはとても良い経験になり、とても楽しいイベントでした」