WRC世界ラリー選手権に参戦しているヒョンデ・シェル・モビスWRTが、2022年最終戦『ラリージャパン』以来となるダブル・ポディウム・フィニッシュを飾った。シリル・アビテブール率いる韓国メーカーのチームは、2月9~12日にスウェーデンで開催された今季第2戦『ラリー・スウェーデン』において、優勝こそ逃したもののクレイグ・ブリーンが総合2位、ティエリー・ヌービルが総合3位表彰台を獲得している。
ラリー1カーの『ヒョンデi20 Nラリー1』で“WRCハイブリッド時代”の2年目のシーズンに臨むにあたり、元ルノーF1のアビテブールをチーム代表に迎えたヒョンデ・モータースポーツ。新体制となったチームは、先月行われた開幕戦モンテカルロでの3位表彰台獲得に続く結果を求めて、シーズン唯一のフルスノーラリーに乗り込んだ。
アビテブール代表の、「木曜日のスタートはひと筋縄ではいかなかったが、金曜日以降は大きな勢いをつけた」との言葉どおり、今大会においてヒョンデ勢は2SSを除いてトヨタに支配された開幕戦の“お返し”とばかりにスピードを誇った。
その最たるはMスポーツ・フォードWRTから古巣復帰を果たし、今戦が2023年シーズンの初陣となったブリーンだ。彼はデイ2オープニングのSS2で最初のステージウインを達成すると、午後のSS5とSS6で連続ベストをマーク。今戦を制したオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)を逆転し、総合首位に躍り出る。
トヨタから移籍してきたエサペッカ・ラッピも、コンスタントに上位タイムを記録して表彰台圏内のポジションにつけた。しかし、彼は土曜日のSS13でタイヤのバーストに見舞われたことで“スノーバンク”にスタック。脱出に7分以上の時間を要したことでトップ10圏外に落ち表彰台のチャンスを完全に失ってしまう。
また、金曜日以降タナクと首位を争うブリーンも同SSでタイヤトラブルによってマージンを失う。さらに、デイ3の午後はハイブリッドシステムのトラブルも重なったことでペースダウンを余儀なくされた彼は、最終日を前にライバルにポジションを奪われてしまった。
「全部で18のステージの内、10本のステージで優勝できたのは、我々のチーム、マシン、クルーが非常に競争力があったことを示している」とアビテブール。
「ターニングポイントになったのは土曜日のSS13で、アクシデントによりクレイグ(・ブリーン)のペースが落ちてしまった。またEP(エサペッカ・ラッピの愛称)は表彰台のチャンスを失った」
「そこでEPの作戦をパワーステージ(SS18)に集中させることにしたのだが、その作戦が功を奏して彼が最大限のポイントを獲得したのは見事だった」
チームの新代表は、「同時に、ティエリー(・ヌービル)を上位に押し上げるチャンスでもあった」と付け加えた。
■わずかなミスで不発に終わったチームオーダー
ラリーの最終日、ヒョンデチームは前日にカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)を逆転して総合3番手となったヌービルを2位でフィニッシュさせるべく、トップとの差が開いたブリーンに対してチームオーダーを発令した。
ブリーンはこの指示に従いSS17後のTCに遅れて入り、10秒のタイムペナルティを受けることでチームメイトに順位を譲った。陣営としてはサードカーをシェアするかたちで参戦するブリーンよりも、フルシーズンドライバーであるヌービルにより多くのポイントを獲得させたかったのだ。
しかし、ヒョンデチームの目論見は外れる。その原因は最終SS18でのヌービルのドライビングミスだ。
彼はスノーバンクにヒットしてタイムを失い、ブリーンから1.8秒遅れのステージ6番手でフィニッシュした。ステージ開始前の両者のギャップは0.5秒であったためヌービルは3位に後退し、余計に得られるはずだった3ポイントを失ったばかりか、パワーステージでのボーナスポイントも獲得することができなかった。
「クレイグにペナルティを課すことで、その作戦をサポートした」とアビテブール。
「だが、プランどおりにはいかなかった。スピードの神々はそうではないと判断したのだ。我々はそれを完全に尊重する」
「素晴らしい復活を遂げたティエリーを含め、私たちは笑顔でいる。(ヌービルは)ラリーのスタート直後からさまざまな理由で苦戦したので、(そこから挽回して)表彰台に上ったことは彼にとって素晴らしい話だ」
「クレイグは、スピードやパフォーマンスだけでなく、チームの状況を理解する姿勢も含めて、この週末をとおして非常に高い貢献をしてくれた」
「全体として素晴らしいチーム成績だ。控えめに言っても波乱万丈だったラリー・スウェーデンを締めくくるのに、これは素晴らしいゴールだと思う」