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真冬に「室温14度」で寒すぎる!会社は「我慢しろ」の一点張り

2023年02月10日 10:21  弁護士ドットコム

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寒さがますます厳しくなり、暖房やヒーターが手放せないこの季節。弁護士ドットコムには「職場の暖房の設定温度が低いせいで、風邪をひいてしまった」という悲痛な相談が寄せられている。


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相談者の職場では、エアコンの設定温度を20度に設定している。ただ、席には外気が入ってくるため、室温は14度ほどになり、相談者は体調を崩してしまった。



しかし、上司は「会社で決まっている設定温度だから我慢しろ」の一点張りだ。なぜ20度にこだわるのか尋ねると、「事務所は高齢者が多いので、ヒートショックを懸念して、外と室内の温度が変わらないようにしないといけない」ともっともらしい言い訳をされてしまったという。



真冬に体調を崩すほど寒すぎる職場は、法的に問題ないのだろうか。河村健夫弁護士に聞きました。



●「気温が18度以上28度以下」の努力義務

——職場の温度は何度でもOKなのでしょうか。



職場の室温は快適と感じる温度が人によって異なることもあり調整の難しい問題ですが、さすがに14度というのはひどいですね。14度では体調を崩す人も多いと思います。



勤務場所の室温については労働安全衛生法を受けた事務所衛生基準規則が規定します。



同規則4条は「気温が10度以下の場合は、暖房する等…温度調節の措置を講じなければならない」とし、5条はエアコン設置がある場合に「気温が18度以上28度以下…になるよう努めなければならない」とします。



問題のケースは室温が14度ですので、5条が適用されます。ただし、同条は「努めなければならない」として努力義務を使用者に課すだけですので、使用者は室温が18度以上になる温度設定に応じないことも想定されます。



——では、手の打ちようがないのでしょうか。



そんなことはありません。使用者は労働者に対し職場の環境が安全かつ労働に適した状態にあるよう保持する義務(安全配慮義務)を負いますので、相談者の周囲の室温が体調を崩すほど低温な状態のまま放置すれば、安全配慮義務に違反することになります。



「ヒートショック防止」という要請が仮に実際に存在しても、相談者の近くに個別の暖房機を設置するなどして相談者周囲の気温を上げつつ、部屋全体の温度はヒートショック防止に適した温度に設定することも十分可能です。会社の「言い訳」は通用しません。



なお、労働安全衛生法は窓のないリストラ部屋に多人数を押し込めるなどの「職場いじめ」に対する反撃の武器としても有効です。もっと知られて欲しい法規の一つです。




【取材協力弁護士】
河村 健夫(かわむら・たけお)弁護士
東京大学卒。弁護士経験22年。鉄建公団訴訟(JR採用差別事件)といった大型勝訴案件から個人の解雇案件まで労働事件を広く手がける。社会福祉士と共同で事務所を運営し「カウンセリングできる法律事務所」を目指す。大正大学講師(福祉法学)。

事務所名:むさん社会福祉法律事務所