2023年02月09日 10:41 弁護士ドットコム
警察庁はこのほど、一定の基準を満たした電動キックボードが自転車と同様に歩道を走行できるなどの交通ルールを定めた改正道路交通法を2023年7月1日から施行するとの方針を示した。
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2022年4月に成立した改正道交法は、最高速度(時速20キロメートル以下)や車体の大きさが一定要件を満たす電動キックボードを「特定小型原動機付自転車」に区分。16歳以上なら運転免許が不要で、ヘルメット着用も努力義務となり、時速6キロ以下に制御できる場合には自転車通行可の歩道も走行できる。
大手自動車メーカーも電動小型モビリティ市場に参入するなど勢いを増しているが、今回のルール変更で、今後さらに街中で電動キックボードを見かける機会が増えそうだ。
しかし、歩道を走行することも可能ともなれば、歩行者との接触事故などが増えることも懸念される。電動キックボード利用者や歩行者はどう備えるべきか。中島宏樹弁護士に聞いた。
——今回の道交法改正で特に注目すべき点は何でしょうか。
ヘルメットの着用は任意であること、運転免許が不要(ただし16歳未満の運転は禁止)であること、が注目すべきポイントとなります。
ラストワンマイル(公共交通機関を下車したところから目的地までの区間)の移動など、電動キックボードを手軽に利用できる環境が整えられたといえます。
——法改正により、利用の幅は広がりそうですが、一方で事故増加などを懸念する声も見受けられます。
電動キックボードは免許の無い方も運転が可能となりますので、自動車のような教習を一度も受けることなく公道を走行する運転者が出てくることが想定されます。
事故発生を防止するべく、違反者への反則金や事後的な安全講習のみならず、事前の安全講習や安全意識の啓発活動などにも力を入れる必要があると思います。
——電動キックボードの利用者だけでなく、歩行者にも影響がありそうです。
ヘルメットの着用が罰則などの定めがない努力義務のため、未着用で運転するケースが十分想定されますが、ひとたび事故が起こると、大けがにつながる危険性が大きく、実際に、ヘルメットを着用していなかった運転者の死亡事故も発生しています。
また、一定の要件を満たせば歩道を走行することもできますので、歩行者との接触の機会も増えることになります。利用者は、より一層、慎重な運転を心掛ける必要があると思います。
今後、歩道は、歩行者や自転車のみならず、電動キックボードも走行する場となります。歩行者は、歩道を歩行している時であっても、今まで以上に周囲の安全に注意を払う必要があると思います。
また、利用者・歩行者とも、万一に備え、任意保険への加入についても検討されるのが良いと思います。
【取材協力弁護士】
中島 宏樹(なかじま・ひろき)弁護士
京都弁護士会所属。弁護士法人大江橋法律事務所、法テラス広島法律事務所、弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所を経て、平成30年7月、中島宏樹法律事務所を開設。民暴・非弁取締委員会(委員長)、弁護士法23条照会審査室、日本弁護士連合会「貧困問題対策本部」委員。
事務所名:中島宏樹法律事務所