トップへ

【インディカー2022年シーズンの楽しみ方】現行エンジン最終年。移籍、復帰、新人多数で勢力図にも変化か

2023年02月08日 15:21  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

2022 NTTインディカー・シリーズ第1戦セント・ピーターズバーグ 決勝スタートの様子
 2月27日、NTTインディカー・シリーズの2022年シーズンが開幕を迎え、開幕戦セント・ピーターズバーグでは、スコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)がポール・トゥ・ウインでインディカー初優勝を挙げた。ここでは2022年シーズンのインディカーをより楽しめるよう、基本的なレギュレーション、シーズンエントリー状況や、開催スケジュールといった各種情報を改めてお伝えする。

 2022年シーズンのNTTインディカー・シリーズでは引き続き、ダラーラDW12のワンメイクシャシーで競われる。ダラーラDW12は2012年に導入され10年目を迎えるシャシーだが、例年細かなアップデートが施されており、2020年シーズンからはエアロスクリーン型ドライバー保護デバイスを装着し、見た目も大きく変化を遂げた。

 エンジンは引き続き、ホンダとシボレーの2メーカーが供給する2.2リッターV6ツインターボで、燃料はエタノール85%に石油15%を混合したE85燃料を使用する。なお、2023年シーズンより2.4リッターの新型エンジンが導入され、新開発のハイブリッドシステムも搭載される予定だ。

 タイヤは2022年もブリヂストンの北米子会社であるファイアストンがワンメイク供給し、ストリートとロードコースではハード目のプライマリータイヤとソフト目のオルタネート・タイヤの2スペックが使用される。プライマリータイヤは通称“ブラックタイヤ”、オルタネートタイヤはサイドウォールがレッドに彩られていることから“レッドタイヤ”とも呼ばれる。

 また、レース中のオーバーテイク機会を増やす試みとして、『プッシュ・トゥ・パス』が導入されていることもインディカーの特徴だ。これはロード、ストリートコースでのレース中、1回の使用で20秒間ターボ過給圧を増加させ、その間、出力が約60馬力向上するというシステムだ。サーキットごとに使用時間は異なるが、レース中、合計200秒間使用でき、各ドライバーはここぞという勝負所で使用する。

 レースの行く末を占う上でも、どのドライバーが何回『プッシュ・トゥ・パス』を使用したのか、そしてどこで使用するのかをチェックしておきたいところだ。

 また、インディカーではピットストップ戦略も大きな鍵となる。燃料補給、タイヤ交換をスムーズに実施することはもちろんのこと、ロード/ストリートではブラック(ハード)とレッド(ソフト)というコンパウンドの異なる2種類のタイヤの使用義務があるため、どちらのタイヤでスタートするのか、摩耗の早いレッドタイヤで何周走るのかが順位を左右するポイントとなる。

 さらに、アクシデント発生時に導入されるローカルイエロー(ロード/ストリートのみ)やフルコースコーション導入のタイミング次第ではピットインでポジションを大きく上げる、もしくは下げることもあるため、各チームはフルコースコーション導入も見越した上でピットストップのタイミングを見極めなければならない。ドライバーの腕やマシンのセットアップだけではなく、ピットストップのタイミングを見極めることもインディカーを制する重要な要素となるのだ。

■ダラーラDW12(2022)主要諸元表
メーカーダラーラ(イタリア)モデル名ダラーラ IR-12(DW12)素材炭素繊維、ケブラーなどの複合素材重量約1630ポンド(ロード/ストリートコース)、約1620ポンド(ショートオーバル)、1590ポンド(スピードウェイ)(燃料、ドライバー等は含まず)全長約201.7インチ全幅最大76.5 インチ, 最小75.5 インチ全高約40インチ軸距117.5~121.5インチフロントホイール直径15インチ、幅10インチ、最低重量: 13.48 ポンドリヤホイール直径15インチ、幅14インチ、最低重量: 14.7 ポンドタイヤ銘柄ファイアストン製ファイアホークフロントタイヤフロント 最大26インチ、最小25インチ @ 35 psiリヤタイヤリア 最大 27.5インチ、最小26.5インチ @ 35 psiブレーキPFC製CR90モノブロックアルミキャリパー、カーボンブレーキディスク&パッドギアボックスXトラックス製ギアボックス 6速パドルシフト燃料タンク18.5USガロンエンジンメーカーホンダ、シボレーエンジン形式2.2L V6 ツインターボエンジン最低重量248 ポンドターボボーグワーナー製EFR 7163ツインターボチャージャーエンジン回転数最大12,000 rpm(レブリミッター装備)最大ブースト圧1300 mbar(スーパースピードウェイ)、1400mbar(インディ500予選)、 1500mbar (ショートオーバル、ロード/ストリート)、 1650mbar (プッシュ・トゥ・パス使用時)馬力550-700 馬力(サーキットごとのターボブースト圧で異なる)燃料E85燃料(エタノール85%、ガソリン15%のブレンド)インジェクター1気筒あたり最大2つのインジェクター、1つは直接噴射用、最大燃料システム圧力は300バールECUマクラーレン・アプライド・テクノロジーズ製TAG-400iスロットルドライブバイワイヤ制御 ポートスロットル

■移籍、復帰、新人多数のドライバーラインアップ

 2021年シーズンは参戦2年目、24歳のアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)がシリーズタイトルを獲得した。全日本F3選手権やスーパーGT GT300クラス、そして全日本スーパーフォーミュラ選手権といった日本のレースでもスピードを見せていたパロウのタイトル獲得は、それぞれのレースカテゴリーのファンの間でも大きな話題となった。

 ディフェンディングチャンピオンとなり、持ち前の巧みな走りにさらなる期待がかかるパロウはチップ・ガナッシに残留。引き続き、カーナンバー10を背負いシリーズ連覇という新たな目標に挑むことになる。一方、ベテランドライバーの復帰や移籍が多いのも2022年シーズンの楽しみなポイントだ。

 まず、エリオ・カストロネベスがメイヤー・シャンク・レーシングから5年ぶりのフル参戦を果たす。2021年に4度目のインディ500制覇を成し遂げた大ベテランの存在はシリーズタイトル争いの大きなポイントになりそうだ。

 そして、注目の佐藤琢磨はデイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングへ移籍。新たなエンジニア、ドン・ブリッカー氏とタッグを組むことになり、ふたりのコンビネーションがどのようなマシンを作り上げるのかに注目が集まる。

 また、7年シーズンと長きにわたりチーム・ペンスキーに在籍したシモン・パジェノーはメイヤー・シャンク・レーシングへ。そして、2021年から参戦する元F1ドライバーのロマン・グロージャンはデイル・コイン・レーシングから強豪アンドレッティ・オートスポートへと移籍している。それぞれ新体制のもと、どのような走りを見せてくれるのだろうか。

 さらに、2022年は6名のルーキードライバーが参戦する。2021年のインディライツ王者のカイル・カークウッドン(AJフォイト・エンタープライズ)を筆頭に、2021年インディ・ライツのランキング2位のデイビッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング)、2021年インディ・ライツのランキング6位のデブリン・デフランチェスコ(アンドレッティ・スタインブレナー)、そして、FIA-F2で速さを見せたクリスチャン・ルンガー(レイホール・レターマン・ラニガン)、カラム・アイロット(フンコス・ホーリンガー・レーシング)、そして2020年、2021年とスーパーフォーミュラを戦ったタチアナ・カルデロン(AJフォイト・エンタープライズ)がインディカー初参戦を果たす。

 日本やヨーロッパでキャリアを重ねてきたドライバーたちの、北米最高峰レースへの初挑戦の様子も大きな楽しみとなるだろう。

■NTTインディカー・シリーズ2022年エントリー(編集部集計)
No.DriverTeamEngine8マーカス・エリクソンチップ・ガナッシ・レーシングホンダ9スコット・ディクソンチップ・ガナッシ・レーシングホンダ10アレックス・パロウチップ・ガナッシ・レーシングホンダ48ジミー・ジョンソンチップ・ガナッシ・レーシングホンダTBAトニー・カナーンチップ・ガナッシ・レーシングホンダ2ジョセフ・ニューガーデンチームペンスキーシボレー3スコット・マクロクリンチームペンスキーシボレー12ウィル・パワーチームペンスキーシボレー5パト・オワードアロウ・マクラーレンSPシボレー7フェリックス・ローゼンクビストアロウ・マクラーレンSPシボレー6ファン・パブロ・モントーヤアロウ・マクラーレンSPシボレー26コルトン・ハータアンドレッティ・オートスポートホンダ27アレクサンダー・ロッシアンドレッティ・オートスポートホンダ28ロマン・グロージャンアンドレッティ・オートスポートホンダ98マルコ・アンドレッティアンドレッティ・オートスポートホンダ29デブリン・デフランチェスコアンドレッティ・シュタインブレナー・オートスポートホンダ6エリオ・カストロネベスマイヤー・シャンク・レーシングホンダ60シモン・パジェノーマイヤー・シャンク・レーシングホンダ15グレアム・レイホールレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングホンダ30ジャック・ハーヴィーレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングホンダ45クリスチャン・ルンガーレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングホンダ18デイビッド・マルカスデイル・コイン・レーシングホンダ51佐藤琢磨デイル・コイン・レーシングホンダTBAエド・カーペンターエド・カーペンター・レーシングシボレー20コナー・デイリーエド・カーペンター・レーシングシボレー21リナス・ビーケイエド・カーペンター・レーシングシボレー4ダルトン・ケレットAJフォイトエンタープライズシボレー11タチアナ・カルデロンAJフォイトエンタープライズシボレー14カイル・カークウッドAJフォイト・エンタープライズシボレー32カラム・アイロットフンコス・ホリンガー・レーシングシボレー23サンティーノ・フェルッチドレイヤー&レインボールドレーシングシボレー24セイジ・カラムドレイヤー&レインボールドレーシングシボレー

 さらに、レース開催サーキットのバラエティの豊富さもインディカーの魅力のひとつだ。世界3大自動車レースに数えられるインディ500を筆頭に、オーバル、ロード、ストリートのさまざまなサーキットでレースが繰り広げられる。それぞれ、走り方や作戦も大きく異なるから、インディカーはファンを飽きさせることのないシリーズとも言えるだろう。

 全17戦が開催される2022年シーズンのNTTインディカー・シリーズ。2022年も活躍が期待できそうなパロウの連覇はあるのか。それとも、2021年ランキング2位のジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)、ランキング3位になったパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)らがリベンジを果たすのか。また、強豪アンドレッティ・オートスポートに移籍を果たしたグロージャンも初勝利を遂げ、タイトル争いに加わる可能性は十分にあるだろう。

 そして、日本人としては参戦13年目を迎え、第1戦セント・ピーターズバーグでシリーズ参戦200戦目を迎えた佐藤琢磨の円熟の走り、そして新チーム、初めて組むエンジニアとのコンビネーションがインディ500に向けてどのようなマシンを作り上げるのかにも注目したいところだ。

■NTTインディカー・シリーズ2022年レーススケジュール
ラウンド日程開催地コース第1戦2月27日セント・ピーターズバーグストリート第2戦3月20日テキサス・モータースピードウェイオーバル第3戦4月10日ロングビーチストリート第4戦5月1日バーバー・モータースポーツパークロードコース第5戦5月14日インディアナポリス・モータースピードウェイロードコース第6戦5月29日第106回インディアナポリス500マイルレースオーバル第7戦6月5日デトロイトストリート第8戦6月12日ロード・アメリカロードコース第9戦7月3日ミド・オハイオ・スポーツカーコースロードコース第10戦7月17日トロントストリート第11戦7月23日アイオワ・スピードウェイ/レース1オーバル第12戦7月24日アイオワ・スピードウェイ/レース2オーバル第13戦7月30日インディアナポリス・モータースピードウェイロードコース第14戦8月7日ナッシュビルストリート第15戦8月20日ゲートウェイオーバル第16戦9月4日ポートランド・インターナショナル・レースウェイロードコース第17戦9月11日ラグナセカロードコース