Text by CINRA編集部
ダニエル・シュミット監督の映画『書かれた顔 4Kレストア版』が3月11日からユーロスペースほか全国で順次公開される。
1995年に『ロカルノ国際映画祭』で上映された同作は、歌舞伎『鷺娘』『積恋雪関扉』の舞台映像や、芸者に扮した坂東玉三郎を2人の男が奪い合う挿話『黄昏芸者情話』を通して、玉三郎の世界に誘う作品。杉村春子や武原はんの談話、大野一雄の舞踏も挿入される。フィクションパートとなる『黄昏芸者情話』の助監督は青山真治が務めた。撮影は日本。
今回の発表とあわせてメインビジュアル、予告編に加え、青野賢一、草野なつか、黒田育世、甫木元空、麿赤兒らのコメントが到着。
【ダニエル・シュミット監督のコメント】
この映画はドキュメンタリーではありません。フィクションです。わたしは、黄昏についての物語、すなわち映画についての映画を作り上げようとしているのです。
わたしは坂東玉三郎という奇跡を何度も目のあたりにしてきました。けれど、わたしはその謎を、その秘密を、解き明かそうとは思いません。この作品は、その坂東玉三郎という秘密とともに作った映画であり、日本という秘密とともに作った映画なのです。
※公開当時パンフレットに掲載されたコメントの抜粋
【青野賢一のコメント】
女形を演じることについて坂東玉三郎が語り、役のために顔を塗る姿をカメラがとらえるとき、フィクションの世界が現実を侵食する。作中の『黄昏芸者情話』の悲しくも甘美なノスタルジーと大野一雄の舞踏に心打たれた。
【川口隆夫のコメント】
魂の水底の深い暗闇から湧き起こる大野一雄の踊りは、シュミットの映像の中でほわっと浮きがり、まるで水面を滑るように軽やかで優雅、しかもこの上なく愛くるしい。
【川村美紀子のコメント】
その顔は誘う。ふと僕を香らせたかと思えば、ほの暗い奈落へと姿くらませて。いま追いかける、目くばせの先を。ひそやかに踊る唇を。
【草野なつかのコメント】
幕が閉じて映画が始まる。
はざまの場所で<ごっこのできる人たち>が無邪気な笑顔や少女のようなはにかんだ表情をみせ、舞踏のブルーが、<こちら側>との距離を曖昧にする。
『黄昏芸者情話』の素晴らしい音設計を経て、時間も空間も超えた旅は終わりへ向かっていく。それでもきっと、幕は何度でも開くのだろう。
【黒田育世のコメント】
かけがえのない芸で舞台のためにご自身を手放していく姿。
その美しいお姿が、厳しいお稽古と失敗の許されない本番の、気の遠くなる程の積み重ねであること。
この構図が異次元のそして異様な優しさに思えてなりません。
あの時舞台一面に湛えられた夢のような風景は、次元を超えた優しさによって観客に手渡されていたはずです。
たしか10歳だった私は、玉三郎さんの舞に取り憑かれ、その夢を大事に持ち帰り、40年近く経った今も心にずっとしまっています。
俳優の優の字をもう一度ずしんと手渡してくれる映画です。
【スピリアールト・リサのコメント】
舞と弦、隠れた鏡、重なる層。あやつる指と、舐める指。見終わったあと、私の心に青い宝石箱がありました。アメイジング!
【甫木元空のコメント】
大学に入り授業で初めてみた映画が「書かれた顔」でした。
物語を飛び越える幸福なアクションの連続。登場人物の所作一つ一つが一筆書きの踊りの様に映画を貫く。
ドキュメンタリー?フィクション?真実?嘘?そんな事どうでもいいと言わんばかりにアクション映画でありミュージカル映画……
次から次へとジャンルをはみ出しながら動き続ける黄昏と映画。
映画の謎がこの映画には散りばめられている、そんな気がします。
【麿赤兒のコメント】
日本のレジェンドたちの妖・怪・美をダニエル・シュミット監督が色鮮やかに織り上げる!
我々は秘密の花園に誘われ浮遊する。