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コミナタ商品開発部~堀江瞬編~ 第2回 本格的に服作り、黒しか選べない男がまさかの色彩感覚を発揮

2023年02月06日 19:04  コミックナタリー

コミックナタリー

堀江瞬
「コミナタ商品開発部」はコミックナタリーが声優やマンガ家とコラボグッズを制作し、最終的にオンラインショップ・ナタリーストアで販売してファンに届ける企画。第1弾では堀江瞬さんが、憧れの着こなしを実現すべくアパレルアイテムを作ることになりました。本企画に協力してくれるファッションブランド・glambと初めて打ち合わせをし、テーマと商品ラインナップを決めたのが前回まで。果たして、猫のグラフィックは堀江さんの思い描く形になっているのでしょうか? 実際のデザイン案とともに、2回目の打ち合わせの様子をレポートでお届けします。

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取材・文 / 西村萌 撮影 / ヨシダヤスシ ヘアメイク / 松本江里子(M's hair&make-up) 協力 / glamb

■ 2回目の打ち合わせへ
初回の打ち合わせから約2カ月後。メールでのやり取りを重ね、ようやく最終的なデザイン案が完成しました。ラインナップはTシャツ、フーディー、スウェット、ソックスの4アイテム。今回の打ち合わせではシルエットや素材、色などのディテールを詰めていきます。

■ Tシャツ編
堀江さんのアイデアを活かすべく、Tシャツはネックレスとのセットに。合わせて着用することで、胸元にプリントされた猫がネックレスに戯れているように見えるのがポイントです。また右裾には、堀江さんのプロデュースアイテムであることを証するオリジナルタグをあしらいます。

□ グラフィック
背中に天使の羽を付けた猫のグラフィックは、堀江さんの愛猫・だいふくがモデル。glambのデザイナーがだいふくの写真をもとに描き起こしたもので、堀江さんからも「実物に忠実!」と太鼓判をいただきました。「ざらつきを感じるようなタッチが理想」というリクエストにもバッチリ応えられているとのこと。顔の向きの異なる2パターンが用意されていましたが、よりオシャレに見える横向きのほうを採用します。

□ メッセージ
次にグラフィックの下に入れるメッセージを考えていきます。メッセージのヒントになればとglambのスタッフが堀江さんにさまざまなお題を出しますが、Tシャツにデザインするにはどれもいろいろな意味で難しそう……。

だいふくによく掛ける言葉:「おいで」「ごはん」「寝るよ」
だいふくは自分にとってどんな存在か:家族
だいふくの名前の由来:とある作品で演じたキャラクターの名前の語感がかわいかったから。
座右の銘:「奇跡を待つより捨て身の努力よ」(アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」より、葛城ミサトのセリフ)

しばらく悩み、ふと閃いたように堀江さんから「『大』と『福』を英語にするのはどうですか? 直訳すると“だいふく”になる、みたいな」と提案が。glambのスタッフも堀江さんのアイデアに賛成し、それぞれの類語を何パターンか組み合わせてみることに。結果、字面が一番しっくりきた「Too Huge Too Glad」で満場一致しました。

グラフィックとメッセージは、金泥(きんでい)インクでプリントします。金泥インクは上品な光沢感を持っているため、天使の羽が付いた猫というグラフィックをより引き立たせてくれるとのことです。

□ パッチ
glambのアイテムでは定番となっている裾部分のパッチ。工場の仕分け作業で用いるタグから着想された、いわゆる“インダストリアル”なデザインです。「Collection」「Theme」「Inspiration」という3つの項目に、今回は堀江さんの直筆文字をプリント。「ほどよくラフに」と注文を受け、納得いくまで紙に書いていきます。たまたま近くにあった赤色のペンで文字を書いた堀江さん。後から色を黒に修正する予定でしたが、赤の文字がデザインのアクセントになるだろうということで、このまま使用することになりました。

□ シルエット
堀江さんは袖が短めより、5部丈ぐらいのほうが着やすいそう。glambの定番シルエットのTシャツを試しに着てみると、「もはやこれがいい!」と理想通りだった様子。ネックレスやオリジナルタグなどデザインの要素も多いため、変形シルエットではなく、ここはシンプルに定番オーバーサイズシルエットで進めます。

□ ネックレス
Tシャツの打ち合わせで一番難航したのは、ネックレスのチャームデザイン。チャームにだいふくが戯れているように見せることを考えると、ごはんやおやつ、オモチャなどのモチーフが思い付きます。だいふくが一番好きなのはカリカリに入っている小魚だそうですが、デザイナーいわく魚モチーフだとキッズ向けのデザインになりそうとのこと。リアルなネズミのおもちゃでもよく遊んでいるというだいふくですが、ネックレスとして身に付けてもらうことを踏まえるとボツに……。

ここでデザイナーが、「だいふくと遊んでいる堀江さん本人を表現したらどうか」と発案。堀江さんのサインをサークルのプレートに刻印することになりました。プレートに収まりがいいものを使えるように何パターンかサインを書いていきます。

「H」をふくろうのイラストで表現したこのサインについて、堀江さんは「7年ぐらい前に同期の声優でどこかのドトール(コーヒーショップ)に集まって、お互いのサインを考えよう会みたいなことをやったんです。僕が考えたのは、誰にも採用されなかったんですけどね……」と話してくれました。チェーンの形もサンプルを見ながら吟味し、長さも念入りに確認します。

■ フーディー編
Tシャツと同じく、こちらも堀江さんのアイデアを活かしたフーディー。パーカーの紐をループタイ風にすることで、堀江さんが好きなプレッピースタイルの要素を落とし込みます。胸元には天使の羽を背負った2匹の猫を左右対称にプリント。猫たちが紐の先に戯れているようなデザインに仕上げました。

□ フェイクループタイ
フーディーの紐をループタイ風に見せるポイントは、首元にあしらうパーツ。コインのような形のプレートに文字や絵柄を刻印し、その上から樹脂コーティングをすることでジュエリーのように仕上げます。堀江さんと相談し、プレートにはだいふくを意味する「Too Huge Too Glad」を刻印。アンティーク調のフォントを使い、よりクラシカルな佇まいを目指します。

□ シルエット
glambのフーディーを参考に着用し、シルエットや紐の長さを決めていきます。形はベーシックなビッグシルエットに決定。紐は長すぎても猫の手の位置と合わず、短すぎてもループタイのように見えなくなってしまうため細かく調整します。

□ タグ
フーディーの襟には、堀江さんのサインとglambのロゴが入ったタグを付けることに。ここで堀江さん、Tシャツのタグ用にサインを書きすぎてしまったせいか、手が思うように動かないというプチアクシデントに悩まされます。

■ スウェット編
「豹柄に憧れはあるけど、自分には似合わない」と言っていた堀江さん。プレッピースタイルと豹柄をミックスさせることで、堀江さんでも着やすい1枚になったのではないでしょうか。重ね着しているように見える襟と裾はフェイクパーツ。豹柄もモノトーンのため控えめな印象です。

□ 素材
スウェット本体の生地として用意されていたのは3種類。肌触り重視のソフトなもの、着用した際にシルエットがはっきり出る厚手なもの、この2つの中間ぐらいの柔らかさを持つものから選びます。頭を通すため、襟の素材はストレッチ生地を使用するとglambが解説。襟と本体の素材感を揃えたほうが服としての完成度が高くなるというアドバイスを受け、スウェット本体の生地もソフトを選びます。

□ 色
Tシャツとフーディーのカラー展開は定番の白と黒で考えていましたが、スウェットは少し冒険してみることに。色見本を見ながら堀江さんはワイン色をチョイスしますが、照明の違う場所で見ると思っていた色と若干違ったようです。結果、パープルとスミクロ(くすんだ黒)の2色を選びました。

□ メッセージ
フェイクレイヤードで華やかさはありつつも、胸元が寂しいので「Too Huge Too Glad」の文字をデザインすることになりました。何色でプリントしようか考えていると、「パープルにオレンジは攻めすぎですか?」と堀江さん。大人しめの服が多いという堀江さんの珍しい提案にglambのスタッフもノリノリで賛成です。黒のボディにピンクのプリントという案も堀江さんから出ましたが、その組み合わせはパンクな印象が出てしまいそうとのことで一旦保留に。ボディとプリントの配色はいくつかパターンを作り、後日メールでのやり取りで決定します。

■ ソックス編
毛足の長いファーをくるぶしにあしらい、だいふくの毛並みを表現したソックスです。

イメージを掴みやすくするため、工場で作ってもらったサンプルができていました。見たことのないデザインに、堀江さんも「すごい!」と声を挙げます。

□ 色
ベースの色は堀江さんの見立てで、だいふくの毛色に一番近い明るめのベージュに決めました。また靴を履いたら見えない部分ではありますが、モノとしてのかわいさをより高めるため踵とつま先部分の色を切り替えるデザインに。こちらには、ベージュと相性のいいアイボリーを採用します。さらに足の裏のところにはglambのロゴを入れることになりました。

□ 素材
ファーには杢糸(もくいと)という素材を使います。杢糸は1本の中で色の濃淡があるため、ファーにしたときにだいふくの毛並みをよりリアルに表現できるとのこと。堀江さん、先ほどと違う糸用の色見本からベースと極力似た色味を探していきます。種類が多いため時間がかかるのではと予想されていましたが、これが近そうと1発目に言い当てた色がなんとドンピシャ。ここまで色合わせがスムーズにいくことは珍しいようで、glambスタッフはその色彩感覚を絶賛。黒色ファッションに身を包みすぎたせいで「喪服の子」とかつて呼ばれていた堀江さんですが、意外な才能を持っていたようです。

■ 次回予告
この後は最終絵型の作成へ。それを堀江さんにチェックしてもらい、サンプルの制作に進みます。次回はスタジオに行き、ナタリーストアに掲載する着用写真を撮影。2月中旬、いよいよ販売開始です。最終回はまもなく更新予定なのでお楽しみに。

■ 堀江瞬(ホリエシュン)
1993年5月25日生まれ、大阪府出身。プロ・フィット声優養成所を卒業し、現在はラクーンドッグに所属。主な出演作はTVアニメ「ミギとダリ」(ミギ役)、「僕の心のヤバイやつ」(市川京太郎役)、「HIGH CARD」(レオ・コンスタンティン・ピノクル役)など。Kiramuneレーベルの音楽ユニット・SparQlewのメンバーとしても活動している。