2023年02月05日 08:21 弁護士ドットコム
不倫の証拠を集めるため自宅にICレコーダーを仕掛けたところ、思わぬものが録音されてしまった——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者の男性は、妻の不倫を調べるためにリビングにICレコーダーを設置しました。すると、妻と妻のママ友がお互いの不倫や不貞行為について赤裸々に語っているところが録音されたといいます。
そこで、相談者はママ友に「(ママ友の)夫に不倫を言わない代わりに、妻の不倫について教えろ」と、録音を盾に妻の不倫について証言をさせたいと考えています。このようにママ友に迫ることは、脅迫に当たってしまうのでしょうか。瀧井喜博弁護士に聞きました。
妻の不倫について、より詳しく知りたいと思うことは当然のことだと思います。しかし、方法次第では違法行為になる可能性もあります。どのような点に気を付ければよいのか、解説します。
配偶者からすれば、不倫は法的にも道義的にも許されるものではありません。しかし、不倫をしたからといって、家族や職場にばらされて当然ということにはなりません。
今回の相談者についても、不倫を理由に妻に慰謝料を請求することは可能です。妻との交渉を有利にするためにも、不倫の事実を示す確実な証拠がほしいと思い、妻の不倫を知るママ友に問い詰めたくなることでしょう。
ママ友に対して、妻の不倫について知ってることを教えてほしいとお願いすることは問題ありません。しかし、今回のように「(ママ友の)夫に不倫をばらされたくなければ、妻の不倫について教えろ」と迫ることは、脅迫罪(刑法第222条1項)や強要罪(刑法第223条1項)が成立する可能性もあります。
脅迫罪とは「相手を怖がらせる目的で、相手や相手の親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害悪を加える旨を告げること」で成立する犯罪です。今回のように、ママ友の不倫についてママ友の夫に対して不倫をばらすということは、相手の名誉に害を与え得る行為であり、脅迫罪が成立する可能性があります。
さらに「ばらされたくなければ、妻の不倫について教えろ」と強く求めることは、単に脅すだけでなく、義務のないことを相手におこなわせるものとして、強要罪が成立することもありえます。
脅迫罪は、懲役2年以下または30万円以下の罰金であるのに対し、強要罪は3年以下の懲役刑と、刑罰が重い犯罪です。
また、強要罪には未遂罪があることから、ママ友が妻の不倫について話さなかったとしても、相談者がママ友に「ばらされたくなければ・・・」と伝えた時点で、強要未遂罪が成立する可能性があります。
刑法上の責任追及がされなかったとしても、今回の行為は不法行為として、民法上違法になる可能性があります。脅されたママ友から慰謝料を請求されることも考えられます。
また、第三者に対して違法行為をおこなったことについて、妻との離婚・慰謝料請求において妻から指摘される可能性もあります。
相談者からすれば、妻の不倫は許されるものではありませんが、このように情報収集のやり方次第では、自身の行為が犯罪行為にあたるなど、妻との離婚・慰謝料請求において不利な立場になることも考えられます。
不倫の事実を知った直後は感情的になることも多いですが、取返しのつかない事態となる前に、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。
【取材協力弁護士】
瀧井 喜博(たきい・よしひろ)弁護士
「あなたの『困った』を『よかった』へ」がモットー。あらゆる「困った」の相談窓口を目指す、主に大阪で活動する人情派弁護士。自由と自律性を押し出す新しい働き方、楽しく成長し続けることができる職場環境として、「ブラック」でも「ホワイト」でもない「カラフル」な職場の構築、拡大を目指して、日夜奮闘中。
事務所名:弁護士法人A&P 瀧井総合法律事務所
事務所URL:http://takiilaw.com/