同僚みんなが忙しく働いている時に自分だけ仕事を休むのは、事情があっても気まずいもの。中国地方のバス会社に勤務する運転手の男性(30代)は、思わぬ形で「2連続の病欠」となり、とても心苦しい思いをしたそうだ。「ホントに職場でいたたまれない」と話す男性に、何があったのか教えてもらった。(取材・文:広中務)
コロナ禍、職場の「人手不足」が加速
男性の仕事、バス運転士は常に不特定多数の乗客と向き合わなくてはならない。そのため、コロナ禍の3年間、職場はずっとピリピリした雰囲気が続いていたという。
「正直いって、バスはどんな人が乗ってくるかわからない。コロナ対策には気を遣っていたのですが、それでも感染する同僚は多かったですね。それに加えて、慢性的な人手不足なので、かなりシフトがキツかったです」
コロナ禍のストレスで、とりわけ大きかったのは「職場から、私生活面にも制限がかけられる」ことだったと男性はいう。県外への外出はもってのほか。飲み会はもちろん多数での食事も一切禁止という状況が続いていた。
「去年は、感染も落ち着いたからいいだろうと同僚二人と外の食堂で昼食をしたところ、自分以外の二人がコロナに感染してしまいました」
油断できない日々でも、男性はギリギリ病欠を避けられていたのだが、不幸は思わぬところからやってきた。
「出勤する時に、つまづいて道路の花壇に手をついてしまったんです。その日は手が痛いなと思いつつ運転していたんですが、次第に腫れてきました。翌日病院にいったら折れていることがわかりました」
手が折れている状態では、運転は不可能だ。この日から男性は休職扱いになり、会社の産業医からの指示では「2月半ばまでの休職」ということのはずだった。
「ところが、コロナ禍で運転手が足らないということで復帰が前倒し、前倒しになり、結局のところ1月2週目から復帰ということになったんです」
医者からもOKを得たうえで、勤務を再開することになったのだが、なんと復帰初日の業務を終えて職場に戻ってきたところ、急に発熱し始めてしまった。
「単なる風邪だと思ってたんですが、念のために病院で診察を受けたところ、コロナ陽性でした」
こうして職場の同僚たちが人手不足で悲鳴を上げている中で、男性はまたも10日近く「病欠」となってしまった。
不可抗力とはいえ、ダイナミックな休暇をキメてしまった男性。職場で恨まれていないか、心配しているそうだ。
「職場では『大変だったね』と、同情されてます。しかし、あんまり同情されるんで、逆にいたたまれないです」
ちなみに、同情される理由の一つには、「休職扱いだったため給料が激減している」というのもあるらしい。まさに踏んだり蹴ったりである。
「以前から、この仕事を続けるべきかどうか考えていたんですが、このコンボはなにかのお告げのような気もしてるんですよね」
この不幸の連鎖はたまたま続いたわけだが、人手不足は解消しそうにないし、骨折でも復帰を早められるような状態だとちょっとした休暇を取るのも一苦労なのは間違いない。まだ30代前半の男性は「今なら、別の仕事に転職できるかも……」と、将来について考えているそうだ。