2023年02月03日 10:31 弁護士ドットコム
店で購入した商品が、賞味期限切れだったことはありませんか。時には、購入して家で開けた後に気づくこともあるでしょう。弁護士ドットコムにも「賞味期限切れの商品を購入。開封後だが返品できるか?」という相談が寄せられています。
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相談者はスーパーで冷凍エビを購入しました。帰宅し解凍して食べていると、賞味期限が昨日であることに気がついたのです。
「商品自体は解凍してしまってる上に一部食べてしまった」と話す相談者ですが、レシートを元に返金してもらえないかと考えています。こうした場合でも、返金を求められるのでしょうか。大橋賢也弁護士に聞きました。
——賞味期限は比較的痛みにくい食品に表示されるものですが、返金を求められますか。
賞味期限は、スナック菓子や缶詰等、劣化が比較的緩やかな食品に表示されるものです。このことから、次に述べる消費期限と異なり、1日賞味期限が切れた食品を販売したからといって、ただちに売主の債務不履行を理由に契約を解除することはできないのではないかと考えます。
つまり、売主に債務不履行があったといえるか疑問ですし、仮に債務不履行があったと言えたとしても、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である」(民法541条ただし書き)と判断される可能性が高いと考えられます。この点は、どの程度賞味期限を過ぎているのかによって異なってくると思います。
したがって、賞味期限が1日過ぎた商品を購入したというご相談のケースでは、買主が、売主に返金を求めることは難しいと思います。
ただ、実際には、スーパーに事情を説明すれば、返金に応じてくれる可能性は高いといえるのではないでしょうか。
——消費期限が過ぎた食品(食肉や惣菜、生菓子など)の場合はどうでしょうか。
消費期限を過ぎた食品は、安全性に問題が出てくる可能性があることから、売主は、当然、消費期限を過ぎた食品は販売すべきではありません。つまり、売主は、社会通念上(もしくは商慣習上)、売買契約において、消費期限内の食品を販売すべき義務を負っていると考えます。
それにもかかわらず、売主が、消費期限切れの食品を販売した場合、売主には債務不履行があることになるので、買主は、売主の債務不履行を理由に売買契約を解除することができると考えます(民法541条)。
買主が、解除権を行使した場合、各当事者は、相手方を原状に復させる義務を負います(原状回復義務、民法545条1項)。そこで、売主は、買主に受領済みの代金を返金しなければなりません。
一方、買主は、現物をいまだ保持している場合は現物を返還しなければなりませんし、現物返還が不可能な場合は、価額償還義務が生じることになります。
もっとも、購入した消費期限切れの商品の価額がいくらなのかというややこしい問題もあるので、実際には、スーパーに実情を話せば、スーパーが代替物(消費期限内の商品)を引き渡してくれるか、代金を返金してくれるという解決になるのではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
大橋 賢也(おおはし・けんや)弁護士
神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。
事務所名:川崎エスト法律事務所
事務所URL:http://kawasakiest.com/