プロ家庭教師の妻鹿潤です。私はキャリア支援会社の役員として、数多くの新卒・中途の方へのアドバイスもしています。
その中には外国人留学生もいます。海外から日本にやってくる留学生の数が年々増えていることをご存じでしょうか? 日本学生支援機構の調べによると、2019年には30万人を突破。コロナ禍で少し減りましたが、最新の2021年のデータでも約24万人と高い水準を維持しています。
長年の不況でかつての勢いを失った日本ですが、それでもなぜ海外から留学生が来るのでしょうか。実は、多くの留学生が日本を選ぶ理由の1つは、“クール・ジャパン”。日本のゲームや漫画、アニメ文化に憧れて来日する留学生が結構多いのです。(個別指導塾経営、プロ家庭教師:妻鹿潤)。
日本は「安くて良い教育が受けられる留学先」
日本にやってくる留学生のうち一番多いのが中国人で、約11万人に上ります。次いでベトナム、ネパール、韓国と続いていきますので、東アジア・東南アジアでの人気が高いことがわかります。
外国人が日本を選ぶ理由は、日本の教育のレベルが高いことも人気の理由の一つですが、加えて留学費用の安さも関係しています。特に最近は円安が進み、欧米先進諸国と比較してかなり手頃な費用で留学できます。
また、他国では留学生のアルバイトは制限されることが多い一方、日本ではほぼ制限されません。さらに最近の円安傾向も相まって、日本は「安くて良い教育が受けられる留学先」となっているのです。
そして、何よりも留学生たちを惹きつけているのは、漫画やアニメといったサブカルチャーです。私が就活支援をしてきたたくさんの留学生も、「日本のアニメや漫画が好きだから留学した(そして就職も考えている)」と答えています。景気が良いとは言えない日本を敢えて選ぶのは、スキルの習得や所得の向上よりも、サブカルの本場で過ごしてみたいという個人的な希望を留学生たちが重視しているからかもしれません。
生物学オリンピックのメダリストは銀魂オタク!?
漫画やアニメ好きな留学生の中には、驚くべき経歴や圧倒的な頭脳を持った人もいます。私が就活支援した中でもずば抜けて優秀だった方は、トルコからの留学生のTさんです。
彼は国際生物学オリンピックのメダリストで、その優秀な頭脳が評価され、国費留学生として日本にやってきました。日本を留学先として選んだのは「銀魂が好きだから」というかなりのオタクっぷりで、今はエンジニアとして日本で働きながら、オタク生活もエンジョイされています。
また、中国からの留学生のSさんは、中学・高校と超エリート校で学び、中国のトップ大学である清華大学や北京大学に進学できる実力を持っていました。しかし、中国の受験システムの都合上、トップレベルの大学に合格するには、北京や上海といった都市部に住んでいるほうが有利で、Sさんの出身地である武漢などの地方出身者は、かなり厳しい状況と話してくれました。
そこでSさんは、好きなゲームである「ニーア」や「ペルソナ」が生まれた日本に留学することに決めました。中高でいじめを受けていたSさんは、これらのゲームに救われた経験があり、自らもゲームに携わりたいという思いを持っていたそうです。現在はストーリーディレクターを目指して、日本のベンチャー企業でインターン生として活躍しています。
日本で働きたい!と思っても帰国してしまう人も
海外から優秀な人材が集まり、産業が発展し、日本の国力が高まっていくのが理想ですが、現実はそうはいきません。大学や新卒採用までは日本にいても、残念ながら帰国したり、アメリカや中国といった市場の大きい国へ渡っていく留学生も少なくありません。日本を離れる理由としてよく聞くのが、
・外国人だからと仲間に入れてもらえない雰囲気がある
・定時で帰ると白い目で見られる
・賃金が安い
といったものです。日本人独特の排他的な価値観(ウチソト意識)や、公私関係なく会社に身を捧げるような昭和的な働き方は、海外の若者にとっては受け入れ難い面があります。優秀な人材に定着してもらうためにも、日本企業の働き方を見直す必要があるでしょう。