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住宅街の「サッカー遊び」禁止にできる? ボールで「植木鉢」壊された人が怒り爆発、険悪ムードに

2023年01月23日 10:51  弁護士ドットコム

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閑静な住宅街の一角で、子どもたちがサッカーで遊んでいます。一見ほほえましい光景ですが、ご近所の中には「我慢の限界」という人もいるかもしれません。


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弁護士ドットコムに寄せられた相談に次のようなものがありました。



相談者によると、住宅街の「袋小路」のようになっている場所で、小学生たちがサッカー遊びをしているそうです。



サッカーのボールが、玄関のドアやシャッターに当たることもしばしば。当初、大人たちは大目に見ていましたが、ある日、植木鉢を壊された人の怒りが爆発しました。



「サッカーを禁止にしてくれないか」



公園など、子どもたちがサッカーできる場所も少ない一方で、こうした怒りもわからなくもありません。



サッカー遊びを「法的に禁止」することはできるのでしょうか。瀬戸仲男弁護士に聞きました。



●私有地なのか、公共の場所なのか

今回のケースで、子どもたちがサッカー遊びをしているのは、「閑静な住宅街の一角の袋小路のようになっている場所」です。



サッカー遊びの「禁止」については、この「場所」の法的性質はどういうものなのか、つまり、「私有地」なのか、「公共の場所」なのかを考える必要があります。



いずれにしても、サッカー遊びを禁止できるのは、その場所の「管理者」です。



この場所が、「公共の場所」、たとえば「公道」の場合、その道路の管理者(国や都道府県、市区町村等の行政機関)が禁止の可否を決定します。



この点、道路交通法76条第4項第3号は、次のように規定しています。



道路交通法76条(道路における禁止行為)4 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること



この規定は「交通のひんぱんな道路」の場合の禁止規定であり、今回のケースのような「住宅街の袋小路のようになっている場所」には適用されないと考えられます。



●私有地であれば、所有者が「サッカー禁止」を決めることができる

この場所が「私有地」であれば、その土地の所有者が「サッカー禁止」を決めることができそうです。これは、公園等の「公共の場所」であっても、公園の管理者が「球技(野球、サッカーなど)禁止」と決めて、立札を掲げることと同じです。



私有地であっても、登記簿の地目が「公衆用道路」である場合などは、人の歩行や車(自転車、自動車など)の通行を妨げることは制限されます。あくまでも歩行や通行の目的としての利用であって、サッカー遊びは認められないと考えられます。



要するに「公衆」という「公共の利益」のために、私有地を道路として提供しているので、サッカー遊びという「私的な利益」のための利用が自由に認められるわけではないのです。



●小学生が損害発生させた場合の責任

また、サッカー遊びをしている子どもが損害を発生させれば、損害賠償請求の問題となります。



責任能力(12歳程度と考えられている)のない子どもによる損害発生である場合、その保護者(監督義務者)が責任を負うことになります(民法714条)。今回のケースは、小学生ということなので、保護者の責任が問題となりそうです。



事故が起きる前には、保護者に責任発生の危険性を周知させるために、管理者(権限者)は「立札を立てる」などの処置をしておくこと(要するに「知らなかったとは言わせない」というための手段)が必要でしょう。



トラブル解決のためには、損害発生の予防処置を完璧にしたうえで、学校の校庭などを開放するのも一案です。



●「公共の精神」を学ばせる良い機会?

以上のようなことから、今回のケースのような場所(住宅街の袋小路のようになっている場所)でトラブルを事前に防ぐ解決策を考えると、次のようなものがありえます。



(1)管理者(権限者)が「全面禁止」にする。



子ども側は納得しないでしょうが、解決策としてはわかりやすい。



(2)時間・場所を限定して許可する。その際、監督者(子どもの親?)を配置する。(現実的には疑問がある)



(3)遊ぶボールを柔らかいものに限定する。何かに(誰かに)当たっても損害が発生しないような材質のものがあればよい。ただし、子どもは嫌がりそう。



(4)問題となっている「遊び」が「サッカー」だからこそ、さまざまな迷惑が発生する可能性があるのなら、ほかの遊びに限定して許可する。



と考えてはみたものの、抜本的解決策(名案)はなさそうです。この点が、行政が公園などにおける「全面禁止」に踏み切ってしまう所以かもしれません。



子どもにとっては遊び場が制限されてしまうわけで、困ったことかもしれませんが、「公の精神」(社会的配慮)を学ばせる良い機会だと捉えたいところです。




【取材協力弁護士】
瀬戸 仲男(せと・なかお)弁護士
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築・相続その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の歴史・伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。
事務所名:アルティ法律事務所
事務所URL:http://www.arty-law.com/