教科書にノート、水筒、体操服、鍵盤ハーモニカ、習字セット・・・。小学生の荷物って意外と多いですよね。登校中の子どもたちの姿を見て、「重そうだなぁ」と感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私はプロ家庭教師として日々活動していますが、教え子のランドセルを持ってみると、大人でも思わず「重い!」と言ってしまうほどのずっしり感。最近は脱ゆとり教育で教科書のページ数も増え、さらにタブレットも追加されと、私たちが子どもの頃に比べてさらに重くなっているようです。
ここまで重いと、成長期の子どもたちの身体に悪影響を与えるのではないかと心配になってきます。(個別指導塾経営、プロ家庭教師:妻鹿潤)
体重の20%以上に相当する荷物を背負う子どもたち
通学カバンの製造・販売をしているフットマーク社の調査リリースによると、小学校1~3年生でもランドセルの重さの平均は4.28kgにもなります。中には10キロを超えるランドセルを背負っている子もいました。
小学1年生の平均体重は約21kgですので、体重の20%以上に相当する大荷物を毎日背負って登校していることになります。ただ、ランドセル自体は1キロから1.4キロぐらいが主流です。重さの原因は、ランドセルの中身にあります。
一般社団法人教科書協会の「教科書発行の現状と課題」(2022年)によると、2020年度の全教科書のページ数(1~6年合計、各社平均)は8520ページ。いわゆる「ゆとり教育」の時代である2005年度のページ数は4857ページですので、15年間で約75%もページが増えたことになります。
文字だけでなく図やイラストなどを使って視覚的にわかりやすく解説してくれる副読本を採用する学校も増えています。教科書・副読本・ノートと、紙だけでも相当な重さになるのです。
さらに体操服や水筒といった教科書以外の学用品も持ち運ばなくてはなりません。特にコロナ禍においては、お茶や水は家から持ってきたものしか飲んではいけない(給水機は使用禁止。クラスメイトに分けてもらうのもNG)という学校もあるようで、水筒+ペットボトル1~2本を夏の間毎日持って行っていたという話も聞きました。
GIGAスクール構想で配られたタブレット端末を持ち運んでいるケースもあります。せっかくタブレットが配備されたのですから、副読本や計算ドリル、連絡帳などはタブレット一台で済ませるべきですが、学校はそんなに柔軟ではありません。相変わらず連絡帳は紙ベースで、副読本やドリルの数も減らず、重いタブレットをプラスαで持ち帰るという事態になっています。
当然、子どもの身体には悪影響が生じます。代表例が腰痛で、重い荷物を毎日背負うことで腰や背骨に負担が掛かり、腰を痛めてしまう子どもたちが増えてきています。他にも、姿勢が悪くなったり、血流が悪くなって内臓にも負担が生じてしまったりと、その影響は深刻です。
身体の痛みや姿勢の悪さは学習効率の低下にもつながります。勉強するために教科書を持ち運んでいるのに、結果として学習の効率が落ちてしまうようでは本末転倒ですね。
文科省が「置き勉OK」の通知を出すも……
このような状況を踏まえて文部科学省は2018年、各都道府県の教育委員会に配慮を求める通知を出しています。
「児童生徒の携行品に係る配慮について」という文書の中で、宿題で使うもの以外の教科書やノートは机の中においておくこと(いわゆる置き勉)を認めたり、長期休暇前に一度に荷物を持ち帰らずに済むよう、少しずつ分散して持ち帰ったりするなどの工夫例が示されています。
ただ、保護者や児童の声を聞く限り、現在も状況はあまり変わっていないようです。学校の先生方には、「全部持って帰るのが当たり前」という固定観念を捨て、子どもたちの身体のことを第一に考えるとともに、効果的に学習を進められるよう工夫を進めてほしいと思います。
また、どうしても荷物が多くなってしまう日は、「重いものを上」に詰めると腰への負担が軽くなります。水筒や辞書などはランドセルの下の方に入れたくなってしまいますが、上に入れることで重心が上がり歩きやすくなりますので、ぜひ試してみてくださいね。