2023年01月19日 10:01 弁護士ドットコム
出張で泊まったビジネスホテルにデリバリーヘルスを呼んだけれど、これって犯罪になるんだろうかーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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男性が宿泊したビジネスホテルは、裏口から部屋番号のインターホンを押すと、部屋のインターホンで出入り口のロックを解除できるタイプでした。そのため、デリヘルの女性はフロントの前を通ることなく部屋に出入りできたのです。
男性は、会社名で予約したことや、自分が受付でサインをしたことから、後日追加請求が来たり、警察や会社に連絡が行くなどのトラブルがないか、不安を感じています。
こうした利用の仕方には、どのような法的な問題があるのでしょうか。若林翔弁護士に聞きました。
ホテルごとに約款や利用規約の内容は異なりますが、約款等で宿泊者以外の者の客室内への立ち入りを禁止していた場合などでは、ホテルとの宿泊契約に違反したとして損害賠償責任が生じる可能性があります。
実際問題としては、客室入室前にデリヘルの女性キャストであることがわかった場合、入室を断られることもありますし、他方で、黙認されることもあります。
デリヘル業者がデリヘル利用を断られるホテルかどうかを把握していることもあり、インターネット上では、デリヘル利用が断られるホテルなのかどうなのかの体験がまとめられているサイトもあるといいます。
デリヘルを呼んだことが事後的に判明し、ホテルから、「シングルとツイン/ダブルの差額」などの追加料金を請求された場合は、払わなければならないでしょう。
ホテルの約款等に違反している場合、損害賠償義務が生じます。部屋代の差額分の請求であれば、損害賠償の金額としても妥当だと考えられます。
かといって、最初からツインやダブルに泊まっていれば問題ないというわけではありません。旅館業法上、ホテルは宿泊者名簿に宿泊者の氏名等を記載しなければなりません。ホテルの約款等でもその旨は定められています。すなわち、名簿に記載されていないデリヘルの女性キャストは宿泊者以外の者であると考えられます。
宿泊者以外の者が客室に立ち入ったとホテルが知れば、損害賠償を請求してくることも考えられます。ホテルから連絡が来た場合は、きちんと対応しましょう。
刑事面についてですが、法律上、詐欺罪が成立する可能性はあります。ただし、詐欺罪の成立には、「ホテルの約款等に違反することを承知で、当初からデリヘルを呼ぶ意思があり、その意思を秘してホテルをだまして宿泊した場合」であることが必要です。
「ホテルをだます」という故意を立証することはとても難しく、単にデリヘルを呼んだことによって詐欺罪に問われる可能性は低いと思われます。
建造物侵入罪に関しては、確かに、ホテル(建造物)が宿泊者以外の客室への立ち入りを禁止している場合には、建造物侵入罪が成立する可能性はあります。
男性側もそのことを分かっていてデリヘルの女性キャストに建造物侵入をさせたとのことで、共犯になることも考えられます。
ただ、建造物侵入罪についても詐欺罪同様に警察に逮捕され、刑事事件化される可能性は低いでしょう。
トラブルになったことが会社にバレてしまった場合、注意を受ける可能性があります。就業規則次第ですが、もし刑事事件になるような大きなトラブルに発展した場合には、懲戒処分ということもありうるでしょう。
【取材協力弁護士】
若林 翔(わかばやし・しょう)弁護士
顧問弁護士として、風俗、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の健全化に助力している。また、店鋪のM&A、刑事事件対応、本番強要や盗撮などの客とのトラブル対応、労働問題等の女性キャストや男性従業員とのトラブル対応等、ナイトビジネスに関わる法務に精通している。
Youtube:『弁護士ばやし』チャンネル
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事務所名:弁護士法人グラディアトル法律事務所
事務所URL:https://www.gladiator.jp/fuzoku-komon/