2023年01月17日 10:41 弁護士ドットコム
回転寿司店でレーンを移動中の「他人のすし」を横取りして食べる様子を見せた動画がネットで拡散したことを受けて、該当の被害店舗と思われる「はま寿司」は警察に被害相談するなど強く問題視する姿勢を示している。
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2023年1月にSNSで広まった動画では、若い男性客が、店のレーンを流れてきたすし2貫のうちの1貫を箸でとって食べる様子がうつっている。動画には「おいしそうだったので食べちゃいました」「#人の注文」などのテキストが書かれていた。
批判の声がSNS等で高まる中、はま寿司は警察に相談したことを認め、「模倣されることによって、ビジネスモデル自体が揺れ動いてしまうもので、非常に重く受け止めています」「毒性の高いものが混入される可能性もないわけではありません。ひどければ殺人につながるものもありえます」と強い懸念をみせた。
食べるだけではなく、そもそも人の頼んだすしに触れる行為もマナー違反だろう。このような行為は一般的に、どんな罪に問われるのだろうか。本間久雄弁護士に聞いた。
——店を被害者とした場合、他人が注文した寿司に触れたり、横取りしたりするような行為は、どのような罪に問われる可能性があるでしょうか
偽計業務妨害罪(刑法233条)と窃盗罪(刑法235条)が考えられます。
刑法で偽計業務妨害罪は「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
「偽計」とは、人を欺き、あるいは、人の錯誤・不知を利用したり、人を誘惑したりするほか、計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段を用いることをいいます。
他人が注文したことが明らかな寿司を箸でとって食べることは、威力以外の不正な手段であるといえ、「偽計を用いて」に該当するといえそうです。
また、回転寿司店で他人が注文した寿司を箸で取って食べる行為を動画で撮ってSNSで拡散する行為によって、店舗側は多数の問い合わせに対応せざるを得なくなったり、再発防止のために店員による見回りを余儀なくされるなどすることから、「業務を妨害」に該当するでしょう。
次に、刑法235条の窃盗罪は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と規定しています。
「窃取」とは、財物の占有者(事実上の支配者・管理者)の意思に反して、その物を自己または第三者の占有下(支配下・管理下)に移すことをいいます。
レーンを移動中の寿司の占有は、店舗ないし注文者にあり、それを箸でとって食べることは、財物の占有者の意思に反して自己の占有下に移すことに該当し、窃盗罪が成立するものと考えられます。
【取材協力弁護士】
本間 久雄(ほんま・ひさお)弁護士
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。
事務所名:横浜関内法律事務所
事務所URL:http://jiinhoumu.com/