2023年01月15日 09:41 弁護士ドットコム
飲食店の料理を持ち帰る「テイクアウト」は、お店の味を感染リスクの少ない状況で楽しめるということで、コロナ下で多くの人に使われるようになった。そんな中、テイクアウトに関連するトラブルや相談が、いくつか弁護士ドットコムに寄せられている。
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ある男性は、よく利用するうどん店が、テイクアウトの容器代として料金を30円上乗せするようになったことに疑問を感じているという。
男性はこれまでうどん麺や出汁、トッピングをそれぞれ簡易的なビニール袋に入れてもらう形でテイクアウトしていたが、うどん店は「テイクアウト商品は、容器提供が前提で考えています」として、容器がいらない人にも容器代を含んだ代金を請求している。
テイクアウトする際に容器は自分で用意するという人もいそうだが、その場合も一律で容器代を支払わなければならないのだろうか。自身もホルモン屋を経営する石崎冬貴弁護士は、こう解説する。
「法律上は、店と客は同じ立場です。店は何をどのように売るか自由に決めることができますし、それを客が買うかどうかも自由です。
店が『テイクアウトは容器を店の方で準備し、その代金も合わせて販売する』と決めれば、それが販売の条件になります。したがって、客としては、容器代を含めた条件で購入するかどうかになり、『容器は持ってきたから容器代を値引きしてくれ』とは言えません。
店の立場で言えば、容器代は容器だけの値段ではなくこぼれないように容器に詰める代金も含まれています。持ち込みの容器は、異物混入や破損などのトラブルが生じるリスクもありますから、店としては一定の根拠があると言えるでしょう」
テイクアウトをめぐっては、他にもトラブルが起きている。飲食店に勤務する相談者は「テイクアウトしたら袋が破れていて、弁当のソースがこぼれ車のシートが汚れてしまった」というクレームへの対応に困惑しているという。
渡したときに袋が破けていたかは「記憶にない」というが、こうしたクレームを受けた場合、店側は賠償する必要があるのだろうか。石崎弁護士は「請求する側が立証しなければならない」と説明する。
「店の提供した袋(容器)が破損していてシートが汚損した(損害が生じた)のであれば、店の過失が認められ、その損害を賠償する義務を負います。このような事案は不法行為といいますが、不法行為に基づく損害賠償請求は、原則として、請求する側が立証しなければなりません。
客が、元々袋に穴が開いていたことを立証するのはなかなか難しいかもしれませんが、一般論として、客が自分で袋に穴を開けてソースをこぼすことはないでしょう。ソースがこぼれた段階で、すぐにでも店に戻り、破れていた袋、汚損したシートの現状などを伝えれば、店としては何かしらの対応をせざるを得ないと思います」
こうしたトラブルは、水かけ論になりやすい。もしお客の立場で商品に不備があった場合は、証拠を残すことが大事だという。
「時間が経てば経つほど、その真偽が疑わしくなりますから、店に戻るのが難しい場合でも、せめて、店に電話だけはしておいて、写真や動画で現状を撮影し、袋は保存しておくべきでしょう」
【取材協力弁護士】
石崎 冬貴(いしざき・ふゆき)弁護士
東京弁護士会所属。一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。自身でも焼肉店(新丸子「ホルモンマニア」)を経営しながら、飲食業界の法律問題を専門的に取り扱い、食品業界や飲食店を中心に顧問業務を行っている。著書に「なぜ、一年で飲食店はつぶれるのか」「飲食店の危機管理【対策マニュアル】BOOK」(いずれも旭屋出版)「飲食店経営のトラブル相談Q&A―基礎知識から具体的解決策まで」(民事法研究会)などがある。
事務所名:法律事務所フードロイヤーズ
事務所URL:https://food-lawyer.net/