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京王線と京王新線、2つの「新宿駅」に迷う人は後を絶たず その謎構造を調べてみた

2023年01月15日 09:31  弁護士ドットコム

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首都圏に住む人、電車を利用した人なら誰しも、乗り換えで苦渋をなめたことがあるはずだ。その1つが京王線の新宿駅だ。沿線を利用する人からはこんな不満が吹き出す。


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「京王線と京王新線の違いがわからず、どちらに乗ればよいのか、いつも迷います。橋本行きの電車に乗ろうと、本来は来ない京王新線のホームで30分以上待っていたこともありました」(都内在住の30代女性)



「京王線の笹塚駅で(都営地下鉄新宿線直通の)京王新線に乗り換えることを忘れ、本線の新宿駅までいってしまうことが。乗り換えるため新宿駅のなかを長い間歩くことになります。自分のうっかりが原因と言われればそれまでですが、これで会社に遅刻しそうになり、朝から何度舌打ちしたかわかりません」(都内在住の30代男性)



沿線住民すらも惑わせてしまうその駅、京王線の新宿駅の謎について調べてみた。



●予定通り新宿駅で京王線に乗ったのに「遅刻しそう」



「電車に乗り間違えて、遅れそう」 「え、京王線に乗ったよね?」



先日、そんな京王新線トラップにはまったのが、都内主婦のJ子(40代)さん。この日、大江戸線の新宿駅から京王線に乗り換える息子のため、ホームまで同行したJ子さん。息子は友人と「京王線の新宿駅ホームで待ち合わせ」と約束していた。



大江戸線の新宿駅で降りると、ホームにあった京王線の案内を確認し、長いエスカレーターに身を任せた。エスカレーターでのぼった先、右方に京王線のホームへの階段が目に入った。左方にもなぜか「京王線」へ導く矢印も書かれていたが、「どちらからもホームに降りられるんだと思って、気に留めず、右方の階段を降りていきました」(J子さん)。



京王線のホームは平日の朝8時台とは思えない、人の少なさだった。J子さん親子は不安に感じ、忙しそうな駅員に「多摩方面に向かう電車はここから乗ればいいですか?」と尋ねると、駅員は「はいそうです。笹塚から乗り換えてください」と説明してくれた。事前にGoogleの乗り換え案内で調べたのと同じルートだ。



安心して、ホームで息子と別れたという。しかし、それから約30分後、冒頭のSOSが息子から発せられたのだ。



「後になってわかったのは、息子が降り立ったのは京王新線のホーム。しかし友達はそこから歩いて5分くらいはかかる京王線のホームだったのです。結局、待ち合わせに遅れた上に乗り遅れ、部活に遅刻したそうです。その時はじめて京王線の新宿駅は2つあるのか、と驚きました。せめて新宿京王新線駅など駅名を変えることはできないのでしょうか」



●「京王線新宿駅」「新線新宿駅」実は"同じ駅"

乗る者を惑わせてしまう京王線の新宿駅。毎日50万人を超える人が利用する京王線の中でも随一の駅だ(京王線サイトより)。



新宿駅で乗ることができる京王線(路線の名称)のホームは2つある。1つは新宿~京王八王子間を走行する「京王線(運行系統の名称)」のホーム。もう1つが新宿~笹塚間を走行する「京王新線」のホームだ。



戦前からある「京王線」に対し、「京王新線」は1978年10月に開業した線路で、当初から都営地下鉄新宿線との相互直通運転を前提としていた。





新宿駅は、京王電鉄のほかにJR東日本・小田急電鉄・東京メトロ・東京都交通局が乗り入れているターミナル駅だ。相互直通運転をするためには既存の駅改修が容易ではなかったのか、京王新線の新宿駅は京王線の新宿駅から改札間では徒歩数分ほど西方向に離れた地下30メートルの場所に作られた。



この両駅間を新宿駅周辺の地上を歩いていこうとすると結構離れており、別の改札口が設けられているため、まったく別の駅として作られたと思われるかもしれない。しかし、正式にはどちらも同一の駅「新宿駅」で、駅番号も「KO 01」で共通している。それぞれ「京王線新宿駅」「新線新宿駅」と呼称されているが、これはあくまで利用客に向けた案内上の扱いにすぎない。



実際、改札内で行き来することができる(そのため「両駅」との表現は正確ではない)。京王グループの公式ホームページにある「新線新宿駅」の構内マップにも、改札内で「京王線新宿駅」のホームへアクセスできる旨が明記されている。





●「公式の路線図を開いても『京王新線』の文字すらない」

そもそも「京王新線」は「京王線」と別路線というわけではない。「京王線」の新宿~笹塚間を複々線化した際に増設された線路の通称であり、路線としてはどちらも「京王線」となる。



冒頭の30代男性は、「公式の路線図を開いても『京王新線』の文字すらなく、『初見殺し』と言える状態だと思います」とも述べていた。





普段から京王線に乗って新宿駅を利用している人や駅の構造を知っている人であれば、どちらに行けばいいのかを間違えることもないかもしれないが、両ホームが離れた駅の作りや「京王新線」という名称が別路線のような印象を受けることもあり、初めての利用客にとってはとまどいやすい要素があることも事実だ。



乗降客数が世界一とされる新宿駅は規模の大きさもあり、複雑な構造をしている。日々初めて利用する客が訪れており、「初見でもややこしくない利用案内」がスムースな移動には欠かせない。鉄道会社としても、名称の使用見直しや利用案内のさらなる周知徹底など「利用者目線」をより実現する余地はまだありそうだ。