上司:「最近の仕事の調子はどうだ?」
部下:「まあまあですね…」
上司:「今の君の目標は○○だけど、現状を点数で表すと何点?」
部下:「70点くらいですかね…」
上司:「そうか、30点のギャップがあるのだね。その30点を埋めるために、どんなことしようと思っているのかな?」
部下:「まあ、いままで通りやる感じですが…」
「コーチングコミュニケーションのスキルを学んだので、それを現場で実践してみているけど、なかなかうまく機能しないな…」と思ったりすることはありませんでしょうか?スキルを現場で機能させるためには、あることが不可欠です。今回は、そんなあることについてご紹介してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
多様な人材をまとめていくことが求められる時代
日本の労働力人口は年々減り続けています。多くの企業で今は人手不足。かつて伝統的な日本企では働き盛りの男性が中心になって職場を回していましたが、働き手が少ない今はそうも行きません。女性や外国人といった多様な人材に活躍してもらう必要があります。
そこでバックグラウンドが様々な人をまとめあげて組織全体の成果を高めるために、管理職にコーチングコミュニケーションスキルを学んでもらう機会を提供する企業が増えています。しかし、そんなスキルを学んだ管理職が、冒頭のようなコミュニケーションを現場で展開するのですが、いきなりは上手くいきません。
何を言ったかより、誰が言ったかが大切
メラビアンの法則というものがあります。これは信頼関係の出来ていない状態の時に、人がどのような部分から相手を理解していくかといったものです。この法則によると、言語情報から7%、聴覚情報から38%、視覚情報からが55%となっており、何を言っているかより、相手の見た目や話し方が大切なようです。
つまり、信頼関係が出来ていない状態では、言っていることが伝わりにくいわけです。皆さんもこれまでの経験の中に、上司Aさんに言われるとやる気になったが、上司Bさんに言われてもやる気がなかなか起きなかった経験があるのではないでしょうか。
そこには信頼関係の有無があったはずです。管理職の皆さんの指示が部下に伝わるためには、信頼関係の構築が最も大切です。その為には部下の“自己重要感”を高められる管理職になっていく必要があります。
何度かお伝えしておりますが、“自己重要感”とは、人は自分自身のことを価値ある存在だと思いたいし、他人からも自分のことを価値ある存在だと思ってもらいたいという究極の思いのことです。この思いは、この上司は私を受けとめてくれているといった実感が増すごとに上昇していきます。
まずは次のような言葉ではない非言語的な関りで、信頼関係構築に努めていきましょう。
・部下が抵抗を示さない、清潔感ある身なりと余裕を示す
・部下の話を聞いている姿勢を示すため、前傾姿勢での相槌や頷きを意識する
・所々に質問を交えながら、ゆっくりとした語り口調で話をする
心理学では、何度も接するうちに、好きになっていく心理的現象を”単純接触効果“と呼びます。部下との挨拶やコミュニケーションの場を充実させて接触回数を意識的に増やし、ベースとなる信頼関係の構築につとめて参りましょう。