2023年01月09日 07:31 弁護士ドットコム
都内の某中学受験塾前では連日、夜になると校舎からたくさんの小学生たちが飛び出してくる。その光景をみて、都内の男性会社員(40代)は、いつも気になることがあるという。
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「小学校高学年くらいの子どもたちが、自転車の後部座席(幼児用座席)に乗っているんですよね。あれって何歳まで乗っていいんですか」
この塾の送迎に限らず、都心部では小学生くらいの子どもが幼児用座席に座っている場面を目にすることは珍しくない。
法律はどう定めているのか。
警視庁に聞くと「東京都道路交通規則では、幼児用座席を設けた自転車に乗車させることができるのは、小学校就学の始期に達するまでと定められています」。
つまり小学生になったらダメなのだ。たしかに、東京都道路交通規則を確認してみると、幼児用座席に乗せていいのは、小学生になるまでと明確に定められている。
第10条(法第57条第2項の規定により、軽車両の運転者は、次に掲げる乗車人員又は積載物の重量等の制限をこえて乗車をさせ、又は積載をして運転してはならない。)の(1)のアの(ア) 16歳以上の運転者が幼児用座席に小学校就学の始期に達するまでの者1人を乗車させるとき。
なお、違反した場合には「2万円以下の罰金または科料」(道交法121条2項1号)となる。
実際に乗る側の事情はどんなところにあるのか。
娘を小6まで乗せていたという母親は、このルールについて「知らなかった」という。
「重たいのでバランスをとるのが難しく、ブレーキをかける時、ヒヤッとすることはありました。ただ、自転車での通塾は禁止されているし、車の送迎も禁止。歩かせるにしても人も自転車も多い都心部では危ないので、塾や習い事の送迎時は自転車に乗せていました」
この母親は「何歳まで乗せていいのかな?と思ったことはありましたが、同級生たちも後部座席に乗っていたので、悪いこととは思っていませんでした」と話す。結局、中学生になる頃、送迎もなくなったので自然と乗せなくなったという。
自転車通勤や宅配代行の増加、駐輪場や駐車場の不足、安全面など様々な理由から、小学生たちが幼児用座席に乗っているのが実態なのだろう。
しかし警視庁によれば、令和4年10月末までに、小学生以上の子ども(小学1年生から中学3年生まで)が自転車幼児用座席に同乗中の交通人身事故件数は、36件(速報値)。事故が起きているのも事実だ(なお「統計上の『子ども』の範囲は中学3年生までだが、中学生が幼児用座席に同乗中の事故はなかった」という)。
警視庁は次のように注意を促す。
「小学生以上を幼児用座席に乗車させ自転車を運転すると、自転車の全体重量が増えることが考えられ、走行中や停車中にバランスをとることが難しくなるほか、ブレーキをかけてから止まるまでの距離も伸びてしまいます。
このような状態で自転車を運転し続けると、歩行者等と衝突してしまう交通事故やバランスを崩して転んでしまう転倒事故を起こしてしまう危険性が高まり、相手に怪我をさせるだけでなく、幼児用座席に乗車しているお子様も怪我をしてしまう危険性があります。
交通事故を起こさないため、また大切なお子様の安全のためにも、小学生以上を幼児用座席に乗車させないようにしてください」