2023年01月06日 11:51 弁護士ドットコム
「子どもが口にすることを一緒に防ぎましょう」
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アルコール入りの菓子がコンビニの菓子売り場に並べられているとして、注意を呼びかけた投稿がSNSで広がった。一般のお菓子に混ざって、アルコール分2.0%入りのソフトキャンディー『パリピ気分』が販売されていることに警鐘を鳴らすものだ。
投稿したのは、アルコールや薬物の依存症の問題に取り組む専門家。発売からまだ日が浅い商品だが、若者たちの間では「年確(年齢確認)されない酔えるグミ」などとして認知が広まりつつあるという。
〈コンビニ等のお菓子売り場でも陳列されています。保護者が注意書きを見落とす恐れがありますので、販売店の方々には酒類同様の取り扱いを徹底していただきたいです。大人の責任として、子どもが口にすることを一緒に防ぎましょう。〉
商品の写真とともに上記の投稿をツイートしたのは、NPO法人「ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)」の社会対策部薬物担当で、依存症予防教育アドバイザーとしても活動する風間暁さんだ。
風間さんのツイートには、「これ!本当に危険! うちもおととい、夫が子に買ってきたのを私が間一髪で阻止した。普通にコンビニのグミのところに売ってたみたい。私は下戸で実際に確認しようがないけど、本当に売り場は考えろ」など子どもが手に取る危険性を指摘する反響が相次いだ。
ほかにも、大人でも知らずに食べて飲酒運転をするおそれに言及したり、「これ私も買いそうになった!飲んでる薬の関係でアルコールNGなので危なかった」などのコメントが寄せられている。
1月4日、都内のコンビニで他のお菓子と一緒に売られていることを記者も確認した。購入時に年齢確認はされなかった。
風間さんがツイートしたのは、20歳未満の若者と接する中で、彼らの間ですでに「年齢確認されない酔えるアイテム」として認知が広まりつつあることに危機感を覚えたことがきっかけだったという。以下、風間さんとの一問一答。
——ツイートのきっかけは
昨年末、息子たちと行ったコンビニで、ひときわ鮮やかでポップなデザインの『パリピ気分』が視界に飛び込んできました。
手に取って見てみると、「アルコール分2%入り」の文字が。飲料であれば1%以上はアルコールとされるので、食品含有で2%というのは、かなり高いですよね。依存症の予防教育活動をしていることもあり、商品に対する危機感をおぼえました。
そして年が明け、日頃から接している20歳未満の若者たちに新年の挨拶をしていると、彼・彼女らの間でも「パリピ気分」が流行しつつあることがわかりました。
「酔えるグミって知ってる?」「酒は年確されるけど、これは大丈夫だった」と。
20歳未満のアルコール摂取は、まだ成長段階にある心身の発育に悪影響を及ぼします。摂取時期が早いほどアルコール依存症になりやすくなることもわかっています。
私は、アルコールで人生が壊れてしまった人たちと日常的に触れ合っていますが、中には子どもたちもいて、すでに亡くなってしまった方々もいらっしゃる。私の実父も、飲酒運転で事故を起こしました。そうした経験から、アルコールによる害を事前に防げるのであれば防いでいきたいと、心の底から願っています。そんな思いで注意喚起を発信しました。
——商品そのものの持つ問題と、販売環境の問題は考えられますか
まずはパッケージ表記の問題です。子どもが真っ先に向かうお菓子コーナーに陳列される菓子としては、注意書きの文字が小さすぎるように思います。「※お子様や運転時はご遠慮ください」という注意が及ばずに、見落としてレジを通してしまう保護者がいたり、孫のためにと小さい文字が読めないご高齢の方が買っておいたり、一人で買い物にいける子どもが興味をもって購入したりする可能性も考えられます。
今時の子どもたちがよく見ている動画サイトでは、インフルエンサーによって「パリピ系の商品」がレビューされやすい傾向にあります。アルコールを用いて騒ぐことは、この鬱屈とした時代を楽しく生き抜くための策と言えばそうなのかもしれません。
しかし、アルコールを摂取しながら明るく「楽しそう」にしている大人たちの姿を日常的に見ていることで、その開放感に溢れた振る舞いや奔放さを持つパリピ像と、それをもたらしてくれるアルコールに対して、正しい知識を持たぬまま憧れを抱く子どもたちも現れるのではないでしょうか。
そういった心理的な背景を考慮したうえでパッケージを見てみると、『パリピ気分』の場合は商品名やフレーズとともに、デザインのポップさも気になります。これまでもアルコール入りのチョコレートなどがお菓子売り場で陳列されていましたが、少なくともデザインはかなりシックで、「大人のお菓子っぽさ」がありました。
『パリピ気分』のパッケージは、端的に言えば「とても楽しそうな感じ」がします。添えられたフレーズも「アゲアゲハッピー」。食べれば楽しくなれそうです。こうした言葉やデザインが与える印象というのはとても大きいと思うので、子ども・若者の興味をひくような言葉選びとパッケージデザインである点からもリスクが高いと感じます。
すでに購入して摂取した20歳未満も実際にいますから、20歳未満のアルコール摂取防止に向けてどのように改善できるかを考えていけるとよいですよね。
――販売する立場では何ができるでしょうか
販売店が今からできることといえば、年齢確認をおこなったり、陳列する場所を工夫することでしょうか。たとえばアルコール依存症で断酒して過ごされている方の中には、コンビニに行っても酒類やつまみの棚には近づかない方もいらっしゃるので、酒、あるいはつまみのコーナーに置いてあれば、多少なりとも子どもからゾーニングできるかもしれません。
なお、20歳未満が飲酒した場合は本人ではなく、周囲の大人の責任とされることが法律でも定められています。なので、子どもに与える商品に関して、周囲の大人はアンテナをよく張っておく必要があります。一人ひとりがアルコールに関する正しい知識を持ち、日常的に子どもと話し合えるような関係性が築けていければ理想的ですよね。
ただ、私としては、個々人、なかでも保護者の注意や責任だけに帰結するのではなく、社会全体で、一丸となって予防していく視点を共有したいです。アルコール問題は、社会問題ですから。
私は決して、メーカーや販売店が過剰に責められたり、裁かれるようなことを望んでいません。これを機にアルコール問題を知っていただき、より良い未来のために視点を共有していければいいと思っています。
風間さんが所属するASKでは、『20歳未満へのアピール力が強いビジュアルを酒類の容器や広告に使わないことを強く求める要望書』(2021年)を酒類業界団体に提出するなど、これまでも20歳未満とアルコールの「接点」について警鐘を鳴らしてきた。
メーカーのUHA味覚糖(大阪市)には、風間さんの投稿やSNSの反応を受けて、今後の対応などの考えについて問い合わせしている。コメントがあれば追記する。