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【漫画】体が氷になる奇病に蝕まれた少女は、兄と春を迎えられるのかーーSNS漫画「冬が長い村に住む兄妹の話」が尊い

2023年01月03日 16:50  リアルサウンド

リアルサウンド

漫画『雪花』より

 厳しい寒さが続くこの冬、春の到来を心待ちにしている人は少なくない。ただ、「新世代サンデー賞」で佳作に選ばれ、2022年12月14日にTwitter上で公開された創作漫画『雪花』(冬が長い村に住む兄妹の話)を読むと、春の訪れに切なさを覚えるかもしれない。


(参考:漫画『雪花』(冬が長い村に住む兄妹の話)を読む


 近くの山に住む「雪の魔女」のせいで年中冬景色の村に住む兄妹、氷と雪花。7年に一度だけ訪れる春を楽しみしていた雪花だったが、身体が氷になり、春になれば溶けて死んでしまう風土病“氷化病”に感染する。たった一人の家族である雪花を救い、ふたりで春の訪れを迎えるため、氷は一縷の望みに賭け、雪の魔女のもとを訪れるがーー・


 作者は、中学生の頃から「イラストを仕事にしたい」と考え始め、高校生で本格的に漫画制作を始めたという藤千華さん(@323snow)。冬の厳しさと美しさが交差する本作を描いた経緯を聞いた。(望月悠木)


■着想はポケモンカードから


――『雪花』を制作した経緯について教えてください。


藤千華さん(以下、藤):本作を描く1年前には、私の中でネタはできていたと思います。ポケモンカードが好きなのですが、『ユキメノコ』というポケモンカードの「春が来てしまったから さようなら」という説明文が切なくて、印象的だったのでそこから着想を得ました。


――7年に一度春が訪れる冬しか来ない世界、という設定が印象的でした。春を待つ切実な思いに説得力が出る期間ですが、なぜ7年なのでしょう?


藤:パッと思いついたのが“7年”だったことに加えて、響きが良かったからです。「人間は3と7という数字が好きだな」と個人的に思っているのですが、「3年だと流石にスパンが早すぎだな」と。


――“氷化病”という病も切なくフックのある設定でしたね。


藤;氷化病は漫画などに登場する架空の病気を参考にしながら、「氷になってしまう病気があったらドラマになるのではないか」と思って創作しました。


■雪の魔女は蛾がモデル


――登場人物の設定についてはどのように考えたのですか?


藤:ストーリーから作成したので、「登場人物はストーリーについてきた」という感覚です。名前も途中で決めています。そのため、モデルは特にいません。


――雪の魔女は怖さもありながら、どこか艶やかな印象でした。


藤:雪の魔女は『オオミズアオ』という蛾がモデルにしました。白くて綺麗で、もふもふしていて好きなんです。冬に活動している蛾ではないのですが、フォルムや色から採用しました。話し方は気づいたらあの話し方になったので、練っているというよりは「自然とその話し方になった」という感じです。


――雪花の食事にかき氷が出されていました。


藤:冷たいものしか食べられないので、かき氷しかないと思いました。あの世界では基本的に、氷は探せばすぐ見つかるため、アイスなどもないと思います。そもそも、普段雪ばかり降っている村なので、氷を食べる習慣は根付いていないように思います。かき氷という言い方自体、もしかしたらされていないかもしれませんね。


■ハッピーエンドなのか


――春を迎えた時、これまでの雰囲気のギャップがすごかったです。


藤:冬のシーンは光をなるべく入れないようにして、雪の書き込みを少し増やしたりなどしています。一方、春のシーンは逆です。特に春を迎えるシーンは光を入れています。花をたくさん描いているのも、明るく感じる要因の1つではないでしょうか。ちなみに、描いている花も全て種類を決めています。


――ハッピーエンドと言って良いのか、考察の余地が残るラストでしたね。


藤:果たして「この2人が幸せに暮らせるか」と言われると、2人次第な気がします。ただ、作者の私としては「大丈夫なんじゃないかな」とは思っています。どのような困難があっても乗り越えていける気がします。


――最後に今後の活動目標や野望を教えてください!


藤:描きたいものをこれからも描いていけたらなと思います。目標はいろいろありますが、その第一歩としても、「まずは読み切りを何本か描ければいいな」と考えています。


(向原康太)