2023年01月01日 07:31 弁護士ドットコム
有責配偶者の離婚請求が認められる場合はあるのでしょうか。弁護士ドットコムに「不倫をしたのは自分だけど離婚したい」という女性からの相談が寄せられています。
【関連記事:セックスレスで風俗へ行った40代男性の後悔…妻からは離婚を宣告され「性欲に勝てなかった」と涙】
2年半前に相談者が不倫をし、その後夫婦仲は全く改善されていません。何度も謝罪しましたが、不貞発覚後はセックスレスが続き、触れ合うことすら拒否されています。
「このような状況になった責任は私にある。深く反省している」と話す相談者は、精神的に疲れてしまっています。最初の不倫発覚時は離婚ではなく再構築することを選びましたが、お互いのために離婚請求をするつもりです。
有責配偶者である相談者からの請求で離婚は可能なのでしょうか。木下 貴子弁護士に聞きました。
ーー離婚原因を作った側からの離婚請求でも、認められるのでしょうか?
不貞行為をした側からの離婚請求は、有責配偶者からの離婚請求として、簡単には認められていません。
もっとも、(1)別居が相当長期間 (2)未成熟の子が存在しない場合、(3)相手が離婚により極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、判例上認められるとされています。
ご相談の事案では、このような条件があると言える場合には認められる可能性があるでしょう。
ーーセックスレスであることは、判断に影響しますか?
同居中は、(1)との関係で直ちに認められることは難しいと思いますが、判例では、「婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的とし真摯な意思をもつて共同生活を営むことにある」ともされています。
そこで、夫が肉体的な結合の意思を確定的に喪失したと言えるようなセックスレス状態が続き、相談者が誠意をもって接しても応じず、他の面でも夫婦としての共同生活の実体を欠いて、回復の見込みが全くないため、離婚を認めても「正義・公平の観念、社会的倫理観に反するもの」と言えない状況となれば、離婚が認められることはあり得るでしょう。
この場合、不貞行為をしたことも婚姻関係破綻の大きな原因となっていることを考えると、慰謝料については認められない可能性が高いでしょう。
【取材協力弁護士】
木下 貴子(きのした・たかこ)弁護士
離婚・親権・養育費の分野で1000件以上の案件を扱う。「離婚後の親子関係の援助について」「養育費」をテーマに講演。離婚調停での「話し方」アドバイスブックはこれまでに2万人以上が利用している。著書「離婚調停は話し方で変わる」「離婚回避・夫婦関係修復につなげる話し方の技術」がAmazon法律部門他ランキング第1位獲得。
事務所名:多治見ききょう法律事務所
事務所URL:https://tajimi-law.com