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山谷の街角でカメラを構える10人の男たち 「変わりゆく俺たちの街の『今』を撮る」

2022年12月31日 09:41  弁護士ドットコム

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東京・台東区のドヤ街「山谷(さんや)」には、カメラを片手に街に繰り出す男性たちがいる。この街で生活しながら、風景や人物などを写真で記録する活動をおこなう写真部(「山谷・アート・プロジェクト」)のメンバーたちだ。


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家や仕事を失うなど事情を抱えてこの街にいる彼らは、今はアーティストとして、山谷の「今」を記録し続けている(以前の取材記事<「ここならば、生きていける」閉ざされたドヤ街・山谷に流れ着いた男たちが写真を撮り続けるワケ>)。



それぞれの作品を披露する「フォトコンテスト2022」が10月、オンライン上で開催された。12月23日、表彰式がおこなわれ、受賞者に表彰状や手作りの色紙などが渡された。



 ●街に、猫に、心を寄せて撮る

コンテストでは、メンバー10人が全員受賞。一般投票でもっとも票を集めた「2022年度写真大賞」を含む13の賞が用意され、ダブル受賞をした人もいた。





「審査員賞」を受賞したメンバーのJIROさんの作品は、山谷の街からみえるスカイツリーの写真だ。





JIROさんは、ありのままの山谷の風景をカメラにおさめている。表彰式前におこなわれた撮影会では、寒空の下、街角に咲く花や風景、参加者にレンズを向けていた。





路上生活をしていたころに「猫に救われた」エピソードを語ってくれたMISAOさんは「ポルテ広場賞」を受賞。受賞作はもちろん、猫を撮った1枚だ。





撮影会では、いつもの撮影スポットに猫がいなかった。「寒いからかな…」と諦めていた矢先、街角を歩いている猫をみつけるや否や、静かに近づいた。



目線を落とし、優しく毛を撫でながら声かけをする。向けられたレンズに、猫は警戒心をみせなかったが、他の参加者が駆けつけると一目散に逃げていった。MISAOさんは「こわがっているよ」と猫の気持ちを代弁していた。





「大賞」に選ばれたのは、HIDEAKIさんの作品。路上生活者や経済的に困窮している人たちが通う無料診療所(山友会クリニック)も入るNPO山友会の建物の前で、この街で支えあいながら生きる人たちを撮影した1枚だ。





他のメンバーの作品とコンテストの結果は、山友会のホームページで公開されている。



●ドヤ閉鎖相次ぎ、変わりゆく山谷の街並み

祝いの席には、今は亡き元メンバーのマッチャンも参加。写真部には欠かせない初期メンバーのひとりだからだ。





この数年間で、大きく変わりつつある山谷の街並み。老朽化し、管理人の後継ぎがいないドヤの閉鎖は相次ぎ、大正から続く「いろは会商店街」からは活気が失われている。同時に、新しい旅館やマンションなどの建設が進んでいる。路上生活者の支援などをおこなうNPO「山友会」スタッフの後藤勝さんは「あと数十年後には、山谷は『今』とはまったく違う街になっている可能性もある」と指摘する。



写真は、その時代の「一瞬」を記録したもの。メンバーたちは、山谷を生きる人たちと変わりゆく街並みの「今」を刻む重要な役割を担っている。