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【スタッフ選出2022総集編ベスト3/スーパー耐久編】激変の一年。2023年以降にさらなる期待高まる

2022年12月30日 12:00  AUTOSPORT web

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多種多様な車種が参戦し、9クラスで争われるスーパー耐久
 2022年シーズンも各カテゴリーで熱戦が繰り広げられたモータースポーツ界。現在は2023年シーズンへ向けた束の間の“充電期間”に突入しているわけですが、当企画ではオートスポーツwebの各カテゴリー担当編集が、2022年の戦いを『ベスト3』という切り口で振り返ります。

 今回は2022年のENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookから、今季印象に残ったトピックスを編集部ヒラノが3点セレクトしてお届けします。

■最大7台。ST-Qクラスから日本のモータースポーツが変わっていく?
 個人的にはスーパー耐久はこれまでしばしば取材に訪れつつも、本格的に全戦取材するようになったのは2020年からでした。もともと牧歌的なパドックの雰囲気はすごく好きだったのですが、なんだかそれが変わりつつあるのを感じたのがその2020年。2021年第2戦富士にORC ROOKIE Corolla H2 conceptが登場してからそれが一気に変わり、大変貌を遂げたのが2022年でした。ちょうどファンの皆さんがパドックエリアに入れない時季に、S耐のパドックの雰囲気は大きく変わっています。

 ご推察のとおり、その理由はST-Qクラスの盛り上がりからです。2021年に登場したときは1台から始まり、最終戦には3台に。今季は第2戦富士SUPER TEC 24時間レースで最大7台になりました。ORC ROOKIE Racing(トヨタ)の2台、MAZDA SPIRIT RACING(マツダ)、Team SDA Engineering(スバル)、NISMO/Max Racing(ニッサン)、そしてGT4を使ってブレーキ等の開発を行ったENDLESS SPORTSという顔ぶれ。日本の自動車メーカーがこぞって参戦するクラスになったのです。当然、パドックにはメーカーのウェアを着た方がたくさん。今までのスーパー耐久では考えられなかったような光景でした。

 また興味深いのが、今回ST-Qクラスに参戦したメーカーのうち、市販車の開発に携わっていた方が多く、これまでのモータースポーツ専門でやられていた方とは違うアプローチがありました。また、メディアの側からすると広報担当も市販車担当の方が多く、今までと違う出会いがあったことも事実です。

 当初は必要以上にST-Qクラスにばかりスポットライトが当たってしまうのでは……? という印象もありましたが、これらのメーカーはカーボンニュートラルなどの目的に加え、将来へのクルマづくり、スーパー耐久に参加するプライベーターのための“先行開発”の意味合いも担っていることが取材を進めるにあたって理解できたこともあり、非常に興味深いシーズンとなりました。またST-Q参戦メーカーを中心に、スーパー耐久をもっと良くするためのミーティング等も始まったことも、今までにないことでした。

 今季ST-Qに参戦した7車種がいずれも大きな話題となりましたが、2023年はいったいどんな話題が飛び出すでしょうか……? すでにホンダの参入が明らかにされていますが、こちらも気になるところです。

■ST-X参入初年度でHELM MOTORSPORTSがチャンピオン獲得
 GT3カーで争われるST-Xクラスはスーパー耐久最速のクラスですが、今季はディフェンディングチャンピオンのD'station RacingがWECとの兼ね合いで参戦回数が減り、一方でTKRI、HELM MOTORSPORTS、Grid Motorsportと新規参入チームが数多くありました。そのうちGrid Motorsportは過去にチーム名とAドライバーは異なるとは言えチャンピオンも獲った経験があるチーム、TKRIはST-Zから車両を変えてのクラス変更という陣容でした。

 そんななかで、HELM MOTORSPORTSは、ST-3クラスからのクラス変更。鳥羽豊選手をAドライバーに据えての参戦となりましたが、ニッサンGT-RニスモGT3のパフォーマンス、そしてFIA-F4でも見られたとおり鳥羽選手のパフォーマンスで見事逆転タイトルを獲得。富士24時間での優勝とあわせ、チームにとっても大きな栄冠となりました。

 ST-X、ST-Z、ST-TCRは必ずAドライバーとしてジェントルマンドライバーを起用しなければならず、そのジェントルマンドライバーのスピード、レースでの強さが勝敗に直結するカテゴリーとなっています。今季、ST-Zでは大塚隆一郎選手をAドライバーとするTEAM 5ZIGENがチャンピオンを獲得しましたが、こちらも大塚選手が続けてきた努力が実ったかたち。

 スポーツカー耐久やアジアでのGTレースなど、ジェントルマンドライバーは重要な存在であり、いまや世界に通用するジェントルマンが日本からひとりでも多く生まれて欲しいところ。スーパー耐久で戦うジェントルマンドライバーたちはいずれも素晴らしいドライバーの皆さん(これは人格面も含めて)ですが、2023年以降もST-X、ST-Zで切磋琢磨してさらなる速さ、強さをみせてくれることを期待したいところです。

■GR86がST-4に、シビック・タイプRがST-2にデビュー
 2022年の大きなトピックスのひとつが、第2戦富士でデビューしたトヨタGR86です。ST-4はスーパー耐久のなかでも重要なカテゴリーのひとつですが、これまでホンダ・インテグラやトヨタ86がベース車として使われてきたクラスですが、そんなクラスを支える存在として登場してきたのがGR86です。

 第2戦富士ではTOM'S SPIRITと浅野レーシングサービスが投入し、第3戦SUGOからはSHADE RACINGも投入。TOM'S SPIRITがチャンピオンを獲得しました。TOM'S SPIRITが一日の長があったところもありましたが、SHADE RACINGの追い上げも強烈で、最終戦までタイトルが決まりませんでした。

 そして最終戦でST-2クラスに登場したのが、Honda R&D ChallengeのFL5型新型シビック・タイプR。市販車のポテンシャルアップがそのまま反映されたかのようなスピードをみせ、2位表彰台を獲得しました。他車のウエイトハンデもあったとはいえ、強力なパフォーマンスだったと言えるでしょう。

 ST-2は現段階ではGRヤリスが強力なクラスですが、これを打ち破る存在になり得る車種。ST-4のGR86も今後台数が増えて欲しいところですし、ST-2での新たなシビック・タイプRの登場なども期待したいところ。

 スーパー耐久はやはり、市販車と密接に繋がるカテゴリーのひとつ。市販車の話題がそのままサーキットを賑わせるのは、ファンにとっても大歓迎な流れ。こうして登場するのも市販車でスポーツモデルがあるからこそなので、今後さらなる新車種の登場も期待したいところ。来季のスーパー耐久に向けてはすでにチラホラ噂も出ているので、また新たなニュースもお届けできると思います。乞うご期待!