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離婚のタイミングは「同居5年未満」「3月」が最多 統計からみる日本の離婚最前線

2022年12月30日 09:21  弁護士ドットコム

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夫婦円満な生活を送るためにも、できれば事前にトラブルの芽は摘んでおきたいものです。そこで、年間100件以上離婚・男女問題の相談を受けている中村剛弁護士による「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」をお届けします。


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連載の第19回は「統計からみる日本の離婚最前線」です。日本の離婚を届出月別に見ると「3月」が突出して多くなっていること、同居期間別に見ると「5年未満の離婚」が最も多いことを知っていますか。



今回は、厚生労働省の離婚に関する統計「令和4年度 離婚に関する統計の概況」をもとに、日本の離婚の傾向と中村弁護士が扱ってきたケースとを照らし合わせながら、読み解いてもらいました。



●日本の離婚件数は?

直近の2020年の離婚件数は、約19万3千組でした。ピークは2002年の約29万組ですから、ピーク時からは約10万組、割合にして30%強減少しています。近年は、離婚は減少傾向にあり、コロナ禍においても変わっていません。





よく「コロナ禍になって離婚が増えましたか?」と「コロナ離婚」が増えているのではないか、と聞かれることもありましたが、私の実感としても、コロナ禍になったからといって、特に離婚が増えているという印象はなく、今までとさほど変わらないという印象です。



●裁判離婚が増えてきたことの意義

離婚の種類としては、大きく分けて、夫婦が協議して離婚を決める「協議離婚」と、裁判所を通して離婚を決める「裁判離婚」(調停、審判、訴訟における和解、判決などによる離婚)がありますが、1950年頃は、協議離婚が95.5%を占めていましたが、2020年では88.3%まで低下しています。





すなわち、全体の約90%は、裁判所を通さない協議離婚により、夫婦は離婚していますが、近年は、以前と比べると、徐々に裁判離婚で離婚する方も増えてきているのです。



私のところにご相談に来られる方は、様々な問題が山積している状況で、私がお受けする場合は調停などの裁判所に手続きを乗せることが多いのですが、世間全体としてみれば、そのような方は少数派で、協議離婚で離婚が成立している夫婦が圧倒的多数です。



もっとも、協議離婚で離婚している夫婦は、問題点が少ないのかというと、必ずしもそうではありません。むしろ、問題が山積しているからこそ、全てを放棄して協議離婚で離婚しているというケースも多々見受けられます。



すなわち、協議離婚の場合、離婚することと、子どもの親権者を決めればそれで足り、養育費も、財産分与も、慰謝料も決める必要がありません。そのため、「とにかく別れたい!」という夫婦の場合、親権の問題さえクリアできていれば、協議離婚でとりあえず離婚だけ成立させる、ということができてしまいます。



離婚後でも、財産分与や養育費、慰謝料などを請求することはできますが、財産分与や慰謝料が請求できるのは、離婚してから一定年数(財産分与は2年、慰謝料は原則3年)に限られてしまいますし、養育費も、過去に遡って請求するのは認められない傾向にありますから、このように全てを投げ出して離婚だけ先行して成立させることは、私はあまりお勧めしていません。



その点、裁判離婚が増えてきたというのは、きちんと法律に則り清算しようとする方が増えてきたということでもあり、望ましい傾向だと私は思っています。



●熟年離婚が増えている

離婚した夫婦の同居期間別を見ると、同居期間5年未満の離婚が最も多く、約30%程度となっています。1950年頃は、約65%前後が同居期間5年未満であったのに比べれば、大分割合としては減ってきています。



代わりに増えたのが、同居期間20年以上のいわゆる「熟年離婚」で、直近の2020年で21.5%となっています。





私がご相談を受けている方でも、やはり婚姻期間が5年未満の方は多くいます。結婚し、同居を開始してみて、思っていた生活と違った、と感じる方が多いということでしょう。それを乗り越えると、ある程度婚姻関係は継続します。



もっとも、子ども達が独立した段階で離婚のご相談に来られる方も、相当数おられます。いわゆる「熟年離婚」です。



特に、子どもが幼いうちは、相手に不満があっても「子どもが成人するまでは我慢して婚姻生活を続けよう」という方も多いのですが、そのように我慢して熟年離婚のご相談に来られる方を見ていると、当の子ども達は案外もっと早く別れてもよかったと感想を述べる人も少なくありません。



子ども達も、夫婦仲が悪いことは敏感に感じ取っており、そのような環境に長期間さらされるのは、それはそれで相当のストレスになっているようです。そのため、私としては、それほど無理して我慢する必要はないのではないかな、と感じています。



●3月に離婚する夫婦が多い理由

離婚の届出月を見ると、3月が突出して多くなっています。特に、子がいる夫婦で、3月が突出して多くなっています。





これは、年度替わりということで、新年度を迎えるにあたって、新たな環境で迎えたい、というのが影響しているものと思われます。特に、子どもの入園、入学など、子どもの環境が大きく変わるタイミングで、その前に離婚を成立させてすっきりした気持ちで新生活を迎えたい、という方は多くおられると思います。子どもにとっても、環境が何回も変わるよりは、大きく1回変わる方が影響は少なく済むことも多いでしょう。



裁判をやっていると、離婚に限らず、和解や調停が成立するのは、12月と3月が多いです。これは、年末と年度末ということで、「新年(または新年度)を新たな気持ちで迎えたい」という方が相当数いらっしゃるためです。



もちろん、全くまだ条件がかけ離れていたり、条件が煮詰まっていないときは、年末や年度末だからといって和解や調停が成立することはありませんが、かなり条件が煮詰まってきた状況の場合は、最後は「新年(または)新年度を新たな気持ちで迎えたい」という気分の問題で紛争が解決することはよくあります。



●3月に離婚したい場合どうすればいい?

なお、3月に離婚したい場合、逆算してどれくらい前から話し合うべきなのでしょうか。もちろん、ケースバイケースですので、一概には言えませんが、お互い離婚することに合意して、親権なども争いがなく、分与する財産や支払う慰謝料などもほとんどない、という場合でない限り、どんなに早くとも2~3か月前から話し合いが必要になると思われます。



離婚届自体は、双方で署名押印して、証人2人を用意して署名してもらうだけですので、それほど時間はかかりませんが、養育費などを定める場合は、公正証書作成を希望される方も多いと思います。



公正証書を作成するにも、事前に公証役場に連絡して予約をして、案文を作成して、事前に公証人に送付して…などを経るので、条件が固まってから作成までに1か月程度はかかることが多いです。その前に条件の話し合いが行われることからすると、少なくとも3か月程度は見ておいた方がいいでしょう。



もちろん、離婚条件で双方の隔たりが大きい場合は、2~3か月では決着がつかず、半年から1年、場合によってはそれ以上かかる可能性も十分にあります。





この記事が公開される頃はそろそろ12月末です。3月いっぱいまでに離婚を成立させることを目指すなら、そろそろ切り出した方がいいかもしれません。



今回は、厚生労働省の離婚の統計から見ることができる日本の離婚の現状と傾向について見てみました。今年もまもなく終わりますが、来年が皆さんにとって新たな一歩を踏み出す素晴らしい年になることをお祈りしております。来年もどうぞ本コラムをよろしくお願い致します。



(中村剛弁護士の連載コラム「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」。この連載では、結婚を控えている人や離婚を考えている人に、揉めないための対策や知っておいて損はない知識をお届けします。)




【取材協力弁護士】
中村 剛(なかむら・たけし)弁護士
立教大学卒、慶應義塾大学法科大学院修了。テレビ番組の選曲・効果の仕事を経て、弁護士へ。「クライアントに勇気を与える事務所」を事務所理念とする。依頼者にとことん向き合い、納得のいく解決を目指して日々奮闘中。
事務所名:中村総合法律事務所
事務所URL:https://rikon.naka-lo.com/