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退職代行「即日退職OK!」って本当? 知っておきたい「退職」のキホン

2022年12月28日 10:41  弁護士ドットコム

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職場でトラブルに遭遇しても、対処法がわからない人も多いでしょう。そこで、いざという時に備えて、ぜひ知って欲しい法律知識を笠置裕亮弁護士がお届けします。


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連載の第24回は「退職代行、頼む前に知ってほしいこと」です。この数年で広く知られるようになった「退職代行」サービス。労働者に代わって退職代行業者が職場に退職の意思を伝えてくれるもので、中には「即日退職OK!」などと宣伝している業者もあります。



笠置弁護士は「会社から引き止めにあっている場合でも、会社に対して『●月●日に退職します』と意思表示さえすれば、法律上有効に退職できる」と話します。合わせて、退職代行業者の注意点も聞きました。



●会社宛に意思表示さえしておけば良い

労働相談をお受けする中で、「退職したいと思っているが会社から引き留めにあっているためなかなか辞められない、どうしたらよいか?」というご相談をお受けすることがよくあります。



法律的には、労働者側が退職の意思表示を行った場合、使用者の承諾がなかったとしても有効に成立すると解釈されています。そのため、引き留めにあってしまっているという場合であっても、会社に対して「●月●日に退職します」と会社宛に意思表示さえしておけば、法律上有効に退職できていることになるわけです。



この際に注意すべきなのは、合意退職の申込みととられないような書き方にすべきだということです。例えば、「退職したく、お願い申し上げます」といった表現にしてしまうと、会社側が承諾しない限りは退職の効力が発生しないことになってしまいます。



あくまで表現はシンプルに、「退職します」と言い切りましょう。



●会社の「退職妨害」に備えてすべきこと

退職をめぐってトラブルになっているような場合には、会社が退職妨害をしてくることが考えられます。この場合に備え、内容証明郵便やメール等、後で証拠に残るような方法を用いて退職の意思表示をすべきです。



会社から退職妨害をされないよう、翌日から出社すべきでないとアドバイスすることもあります。かなり年次有給休暇が残っている場合には、残っている有休を全て消化し終わった日をもって退職日とすればよいと思います。



体調を崩してしまっていてすぐに休業が必要であるなどの場合には、年次有給休暇の日数にかかわらず、一刻も早く欠勤すべきだということになります(その場合、欠勤分の給料が控除されることにはなります)。



電話や面談等でのやり取りをしたくないという場合には、「万が一連絡事項がある場合には書面にてご連絡ください」と付記しておいてもよいでしょう。



民法627条の規定からすれば、退職日は申し出をする日から2週間後としておけば問題ありません。この規定は、会社がどのように取り決めをしていても、会社が守らなければならないルール(強行法規)であると解釈されています。そのため、就業規則上は3か月前に退職の申し出をしなければならないと定められていたとしても、2週間前に申し出ていれば問題ないと考えられます。



以上をまとめますと、労働者が一方的に退職をするには、申し出日の2週間後を退職日としつつ、「退職します」と言い切る形で、内容証明郵便やメール等の証拠に残る形で、退職の意思表示をすれば基本的には問題ないと考えてよいでしょう。



●退職代行業者はどこまでできる?

退職妨害をしてくるような会社は、慢性的に人手が足りていないため、何とか脱出してきた方の中には、残業代未払いや長時間労働に起因する精神疾患、ハラスメント被害等、退職以外にも様々な問題を抱えている方が少なくありません。



また、人手不足に悩む会社の中には、退職時に正当な理由のない違約金を請求してきたり、広すぎる競業避止義務や秘密保持義務を入れ込んだ誓約書への署名押印を求めてきたりするところも存在します。



そのような法律問題に関する交渉は、弁護士でなければ行うことができない旨、法律上決められています(いわゆる非弁行為に該当してしまうことになるからです)。



世の中には、退職代行業者というものがあるようですが、あくまで自分でも簡単に行える上記のような退職の意思表示を代わりにやってくれるというだけであり、提供されるサービスに比べて料金が高い業者が多いように私の目からは感じます。



未払い賃金があるにもかかわらず、退職代行業者に安易に頼り、請求できるはずの未払い賃金を請求できなくなったという事例もあるようです。



●「即日退職」は本当にできるのか?

その他、業者の中には、「即日退職OK!」などと宣伝している業者もあるようですが、労基法15条2項が適用される場面(明示された労働条件が事実と相違する場合)を除き、場合によっては会社との間で業務の引継ぎや会社の物品等をめぐってトラブルに発展しかねず、鵜吞みにしてしまうと危険ではないかと考えます。



このような業者を頼るよりは、上記の注意点に留意しつつ、自ら内容証明郵便等で意思表示をした方がはるかに安価で済みますし、退職妨害以外のトラブルがある方については、速やかに労働問題を専門とする弁護士等の専門家に相談し、対応を検討した方がよいと考えます。



(笠置裕亮弁護士の連載コラム「知っておいて損はない!労働豆知識」では、笠置弁護士の元に寄せられる労働相談などから、働くすべての人に知っておいてもらいたい知識、いざというときに役立つ情報をお届けします。)




【取材協力弁護士】
笠置 裕亮(かさぎ・ゆうすけ)弁護士
開成高校、東京大学法学部、東京大学法科大学院卒。日本労働弁護団本部事務局次長、同常任幹事。民事・刑事・家事事件に加え、働く人の権利を守るための取り組みを行っている。共著に「こども労働法」(日本法令)、「新労働相談実践マニュアル」「働く人のための労働時間マニュアルVer.2」(日本労働弁護団)などの他、単著にて多数の論文を執筆。
事務所名:横浜法律事務所
事務所URL:https://yokohamalawoffice.com/