2022年12月27日 18:21 弁護士ドットコム
厚生労働省は12月27日、全国の自治体に対し、宗教の信仰等を背景とした児童虐待に対応するべき具体的な事例を列挙したQ&A集を通知した。既に10月に児童相談所に宗教関連でも除外しないよう通知していたが、「地獄に落ちる」などと脅して宗教活動を強制するのは心理的虐待に当たるなどの具体例を示した。より現場が実効性のある対応ができるよう「事細かに整理した」(同省担当者)形だ。
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立憲民主党を中心として官僚と議論する国対ヒアリングには、統一教会2世の高橋みゆきさん、もるすこちゃんさん、小川さゆりさん(オンライン)、エホバの証人3世の夏野ななさん(いずれも仮名)が参加。「宗教虐待」が定義されたことに万感の思いを語った。
VTuberとしてツイッターで積極的に発信してきた「もるすこちゃん」さんは、この日、強くヒアリングへの出席を希望した。これまで素性を隠していたが、自身について具体的に語ることを決意したのは現在、子を育てる「親」だからだ。
「きょうは公表しようと、この祝福の指輪を付けてきました。純潔というレールにのって生きてきて、2世同士の祝福結婚をしました。そして3世を育てています」
「特定されることを恐れて隠してきた。でも、この土日のクリスマス、私の家庭では幸せそうな子どもが目の前にいました。妻は子どものころ、プレゼントをもらったことがないと言います。今も、このクリスマスを祝えない子が社会に透けて見るんです」
Q&Aに明示される事例を見ると「自身は虐待されていた」「思考停止した親に育てられていた」と気づくという。
「自戒の念を込めて言います。このQ&Aを見て、子どもと向き合う勇気をもってほしい。子育ては正解がなく、大きな責任があると感じています。子育てする宗教1世に読んでほしい。私も親子の絆を築ける自分になりたい」
安倍元首相銃撃事件前には、どんなに訴えても世論が動かなかったと語っていた高橋さんは「きょうが歴史的な日になった。外形的にわかりにくかった虐待を例示した画期的なQ&A。児相の人だけでなく、国民の一人でも多くの方に読んでほしい」と訴えた。
すでにSNS上では、虐待に気づいた親や子の反応がきており、今回の指針が絶大な役割を果たしていることを実感している。その上で、こう付け加えた。
「児相に押し付ければ終わりじゃないはずです。今後は、虐待が起きないようにするにはどうしたらいいか。(宗教による虐待は)組織による指導が親になされているという点が非常に重要です。根っこを解決しないと未然に防ぐことはできません」
長年にわたり複数の宗教2世の相談に乗ってきたジャーナリスト鈴木エイトさんも「組織は罰則がなければ繰り返します。その対策が必要です」と強調した。エホバも2世や3世が取材を受ける中で、団体が回答するように変化してきたと説明。メディアにも活を入れた。
顔を出して活動しているエホバ3世の夏野さんは「30年前にこのQ&Aがあれば人生は違うものになったでしょう。でも、やっと光が見えてきたと感じています」と、きっぱりと前を向いて話した。