Text by 山元翔一
Text by 原雅明
Text by 植村マサ
東京藝術大学を卒業し、TK from 凛として時雨のサポート、ずっと真夜中でいいのにのレコーディングにも参加する作曲家/鍵盤奏者の和久井沙良。12月21日にリリースされた1stアルバム『Time Won’t Stop』には、自らの血肉であるクラシックピアノの要素はもちろん、ジャズ、ロック、ヒップホップ、ビートミュージックなどから受け取った影響も溶け合っている。
1998年に栃木県で生まれ、3歳からピアノを、9歳から作曲をはじめ、幼少期からクラシックピアノに心血を注ぐ一方で、和久井沙良の音楽的関心はジャズやロックにも伸びていった。早い時期から音楽家として身を立てることを志し、晴れて国内最高峰の学び舎・東京藝術大学音楽部に合格。しかしそこは自らの音楽にとって必ずしも居場所となりうる場所ではなかったのだという。それはいったいなぜか。
しかし、むしろそこに和久井沙良という音楽家がさまざまな現場で求められる理由があるようにも思われる。
ソロやサポートだけでなく、ポップユニット「LioLan」などさまざまな活動を通じて世に羽ばたく和久井沙良は、どのようにして自分の音楽を掴みとっていったのか。そしてその音が求められる理由はどこにあるのか。『Jazz Thing ジャズという何か ジャズが追い求めたサウンドをめぐって』(2018年、DU BOOKS)でも知られる音楽ジャーナリスト/ライターの原雅明が話を聞いた。
和久井沙良(わくい さら)
作曲家、鍵盤奏者。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。3歳よりピアノを9歳より作曲をはじめる。大学卒業後は独自の美学に基づく即興演奏を軸に演奏活動を開始。サポートミュージシャンとしての活動やレコーディングも行なっており、主なアーティストにはTK from 凛として時雨、ずっと真夜中でいいのに、一青窈、さとうもか、映秀。、yamaなど。2022年12月21日、1stアルバム『Time Won’t Stop』をリリースした。
ーサポートのお仕事をいろいろやられていて、お忙しいようですね。
和久井:毎日生きるのに精いっぱいすぎて昨日のことも忘れてしまっているんですけど(笑)、12月はみんなライブをやりたがる季節でして、TKさんや新山詩織さんとか、あとはデビュー前のアーティストのシークレットライブとかで演奏してます。
ーそういったなかで自分名義のライブもやられているのですか?
和久井:つくり込んだライブはまだ1回しかやったことないです。「和久井沙良さんでやってください」ってオファーをいただいたときは、時間がなくてインプロ(即興演奏)で1時間勝負みたいな感じが多いですね。
ースガダイローさん(※)ともやられていますよね。
和久井:そうですね。本当にみんな何を勘違いしてるのか、そういう大御所の方とのバトルみたいなのによくブッキングされがちで。
ステージに立ったら「絶対負けない」って気持ちでやってるんだけど(笑)、全然私はダイローさんとやるようなジャズピアニストじゃない。私はダイローさんすごく好きだから嬉しかったけど、本当はめっちゃ怖かったですよ。
ーでも、そうやって場数を踏んできたわけですね。
和久井:ずっと場違いな場所に放り込まれてやってきたら、こういう感じになっちゃったんですね。
ーそれは周りで、和久井さんのピアノがいいと推してくれる人がいるからですよね。ご自身ではどうしてだと思いますか?
和久井:本当にありがたいことに、よく言っていただくのは、「あなたのピアノはジャズでもないしロックでもない、何ともジャンルを形容しがたい」みたいなことで。あんまりジャンルにはめ込むことができないピアノだからこそ、おもしろがって呼んでくれる人がいるのかなって思っています。
ー自分の音があるってことですね。
和久井:はい。でもたぶん、歪んだ学生時代がいまの自分をつくりだしたのかもしれないって思います。
―その学生時代のことを話していただけますか?
和久井:塾の友達とバンド組んでました。
―それはどういうバンドだったんですか。
和久井:なんか恥ずかしいな……そのときはハードコア系のバンドをやってました。当時はただバンドってものに憧れて「デカい音を出したい」と思ってて。
「バンドやりたい」って言ってた男の子がたまたまハードコアとかメタルが好きだったから、もうそれしか選択肢がなかったんです(笑)。群馬のライブハウスとかでライブしていました。
―それと同時に、以前からピアノは習っていたんですか?
和久井:そうです。並行してクラシックのピアノの先生にずっと習い続けていたので、なんか二重人格みたいな感じで。ロックをやってる自分と、クラシックの勉強をしている自分がいて、おかしな高校生だったと思います。
―ピアノを弾くことはずっと途切れることなく続いていた?
和久井:もう20年以上ずっとやっています。
―音楽一家に育ったんですか?
和久井:いや、そんなことはなくて、父はバイク屋さんで、母は専業主婦です。
―音楽の英才教育を受けたわけではないんですか?
和久井:たぶん親はそういうつもりはなかったんだけど、個人ピアノのレッスンが厳しい先生で、たまたまその先生に当たったので、めっちゃピアノを練習していました。
―東京藝術大学(以下、藝大)に行かれたのも自然な流れだったのでしょうか?
和久井:音大に行きたいというのは中学校ぐらいからずっと考えてて、いざ受験するときに親に相談したら「音楽で食っていきたいと思うんだったら一番上を目指しなさい」って言われて、藝大を目指そうと思った感じですね。ピアノ科とか作曲科とかいろんな科があるじゃないですか。
―ええ。
和久井:ピアノ科はクラシックピアノの学科だったから入りたいと思わなかったし、作曲科も現代音楽をつくりたいわけじゃなかったからあんまりハマらなかった。一番入りやすそうで、何やるかよくわかんない学科がいいかなと思って、楽理科を受験しました。
―楽理科はそういう学科なんですか。
和久井:一応研究はしないといけないんですけど、音楽的には何やっても文句は言われなさそうでした。映画音楽の曲とかをつくりたかったんです。作曲家になりたかったですね。
―特に好きな作曲家は?
和久井:その当時は加古隆さんとか武満徹さん、あとセルゲイ・プロコフィエフとかロシアの作曲家はすごく好きですね。
―武満徹は現代音楽ですよね。
和久井:「現代音楽はやりたいくない」とは言ってるものの好きは好きで、でも自分が書こうとはあんまり思わないんですよね。
現代音楽をやらなきゃいけない環境にわざわざ身を置く必要はないかなと思ったのと、作曲の先生にもついてて、その先生にも「あまりあってないと思う」って言われたから、作曲科には行かなかった。
―そうなんですね。
和久井:私、大学についての話をするともうわけわかんなくなっちゃって。何のために大学に行ったのか、よくまとまらなくなっちゃうんです。
ーそれは大学でいろいろなことがあったからですか?
和久井:そうですね。大学はあんまり好きじゃなかったです。藝大生とか音大生って括りに疲れちゃって、普通の大学生と話をしたり、ものづくりをしたいって思って。
高校生向けのサマースクールの運営もやってて、海外の大学生を日本に呼んで、日本人の大学生と一緒に高校生に授業したりしていました。音楽から離れたい、みたいなことをちょっと思っていましたね。
―藝大を受けるときには音楽で食べていく志はありましたか?
和久井:ありました。もう小学校高学年ぐらいのときには、音楽しかできることがないなって思ってました。
―学生時代にプロ的な活動はされていたのですか?
和久井:一応ユニットを組んで作品をつくったりしていました。ワンマンライブをやっても会場が埋まるくらいお客さんはついてくれていて。
いい曲をつくるにはどうしたらいいかもわかっていたから、どんどん新曲もつくれたんですけど、あるタイミングで私が違和感を覚えるようになっちゃったんです。おしゃれなコードでピアノをガンガン弾く、みたいなインストの音楽があんまりいいとは思えなくなっていって。楽しい思い出もあったんですけどね。
―そこから、現在の音楽へどうシフトしていったのですか?
和久井:それは上原俊亮と森光奏太に出会ったのが大きくて。ベースとドラムのグルーヴの上で自由にやる、私がやりたいのはこっちだってなったんです。
ふたりとはrpmっていう下北沢にあるセッションバーのマスターが引き合わせてくれたんですが、実際に演奏して、「同世代にこんな人いたんだ!」って感じで、めっちゃ波長があった。それでトリオのための曲をまずつくりはじめて、それがアルバムの“Mile in the green”という曲です。
―アルバム『Time Won’t Stop』も、そのトリオが基調になっているわけですね。
和久井:そうですね。
―もともとジャズのピアノトリオをやりたかったんですか?
和久井:そういうわけでは全然ないですね。ただ、その当時、ネイト・スミスとかロバート・グラスパー、グレッチェン・パーラト(※)とかのアルバムを聴いていて、そういう音楽をつくりたいなって思っていた時期ではありました。ピアノトリオにこだわりはないけど、ベースとドラムは必要だなって思っていましたね。
―クラシックピアノをずっとやってきて、ジャズにはどうやって出会ったんですか?
和久井:中1ぐらいにガーシュウィンのピアノコンチェルトを演奏する機会があって。ジャズっぽいフレーズが入ってるし、「こういう和音好きだな」ってジャズが何かを理解する前にコードの感じが自分の好みだったんです。
それからジャズを知って、板橋文夫(※)さんがよく自分の地元にライブしに来てくれてて、高校のときからフリージャズとかをライブで聴くようになって。そのときは何をやってるのかよくわかんなかったけど、めっちゃかっこいいなって思って、その真似事みたいなのを家で弾いて親によく怒られてました(笑)。
―(笑)。仕事としてジャズを演奏したのは?
和久井:ジャズクラブっぽいところでやるようになったのは、大学2年のときですね。ジャズ・フュージョン・アンサンブルっていう大学の授業があって、そこで教えていたサックス奏者の丸田良昭(MALTA)さんに引っこ抜かれてライブするようになったんです。
もともと作曲をやっていたから即興は得意で、その場で曲を生み出すこととアドリブって似たものがあるなって思ったし、あまり難しいとも思うことなくやってたら、クラシックの大学にいる人にしてはアドリブができるほうだったみたいで。丸田さんとやってるのでいろんな人に呼ばれるようになりました。
―ここまで伺った話から、『Time Won’t Stop』にいろんな要素が入っていることも納得できました。それでも、1曲のなかにもたくさんの要素があって、どうやってつくられているんだろうと思うんです。たとえば、“tietie feat.吉田沙良(モノンクル)”はどんな制作過程だったのですか?
和久井:“tietie”は結構後半に録ったのもあって、アルバム全体のバランスを見て「もうちょっと早い曲あったらいいな」と思ったのと、「リズムがトリッキーな曲をつくりたい」ってところで、ギターのリフからつくりました。
それをループして、コードを当てはめて、パーツ、パーツでつくって切り貼りしてできた、みたいな。超大雑把な説明ですけど(笑)。
和久井:この曲だけでなく、アルバムの曲はデモをつくって譜面を作成するところまではだいたい1日でやってます。レコーディングは3回ぐらいに分けて2曲ずつ録った、みたいな感じです。1日で1曲ってたぶん普通だと思うんですけど。
―いや普通なのかな(笑)、かなり早いですよ。
和久井:休みの日に曲づくりをしてて、だから自動的に1日でつくるしかないんです。
―曲づくりで悩まないんですか?
和久井:悩まないですね。DAW(※)をまず開いて、そのとき書きたい曲に近いようなものをいろいろ聴いて、イメージを膨らませていって、あとはパズルみたいな感じでできあがっていきます。
―ピアノに向かって作曲、というスタンスではないんですね。
和久井:ピアノはつねに横に置いてます。基本的に私は鍵盤しか弾けないから、音色を変えながらギターのフレーズを鍵盤で弾いたりして曲をつくってて。楽器の音色とか、プレイスタイルとか、わりとデモの段階でつくり込みますね。
―ビートも自分でつくるんですか?
和久井:そうなんですけど、生のドラマーの考えるフレーズのほうが全然いいから、自分のものを採用してほしくないと思って適当に打ち込んでます(笑)。
リズムトラックはアウトライン的な感じなんですけど、でもだいたいのフレーズは、ちゃんとつくってはいますね。ドラムの上原くんはデモのイメージを毎回ちゃんと吸収しつつ、よりよいものを生み出してくれてるんです。
―つくり方として、トラックメイカーに近いところがありますね。
和久井:そうかもしれません。
―実際、デモから演奏してできあがったものは、想定どおりになるんでしょうか?
和久井:それが結構不思議で、想定どおりなんです。「すごい、これでOK」「そうそうこれこれありがとう、できた」って感じ(笑)。
―(笑)。
和久井:普通は思ったのと違うものに仕上がるじゃないですか。デモが豪華になったみたいな感じなんです。いつも想像どおりにできあがるから、本当におもしろいですね。
―このアルバム全部がそういう感じですか?
和久井:そうですね。それは本当に演者がすごいんだと思います。私がやりたいことをデモと譜面で理解してくれて、それをちゃんといいところに落とし込んでくれる才能ある人たちに恵まれました。
―なるほど。”tietie”は吉田沙良さん(モノンクル)が、ほかの曲でもermhoiさんやmimikoさんのボーカル、Pecoriさん(ODD Foot Works)のラップが入ってます。インストオンリーにしなかった理由は?
和久井:できあがった音源を聴いたときに、全然このままリリースしてもいいけど、できることならちょっと言葉があったほうが曲として説得力が上がりそうだし、自分のやりたい音楽が歌があるものだからと思ったんです。
―ボーカルが入ってる音楽を最終的にはやりたい?
和久井:そうですね。ここ2年ぐらいはボーカルを入れてやりたいなって思ってます。ひとまず飽きるまでは。
―和久井さんはサポートで王道のポップスの現場に関わることもありますよね。そういうポップスとここでつくられているボーカル入りの音楽は、少し違いませんか? 『Time Won’t Stop』はインストベースの音楽にどうボーカルを載せるのかに腐心してつくられているように感じます。
和久井:まったく別ものだと思っています。ポップスってミュージシャンを聴かせることが最優先ではなくて、歌とか、歌詞とか、あとはタイアップとか、いろんな要素があったうえでの演奏だと思うんです。
それが悪いわけではないし、そういう音楽があっていいと思うけど、私にあるのは「音楽を純粋に聴かせたい」って思いだけで。ミュージシャン全員が光っている音楽をつくりたいんですよね。
―ほかの楽器と同じようにボーカルもあるわけですね。
和久井:本当にそういう感じです。歌だけど楽器としての要素もあるのかなって思います。
―“Calming Influence feat.Pecori(ODD Foot Works)”は生のドラムですけど、すごくタイトなビートが印象的です。ビート面で特に影響を受けた音楽はありますか?
和久井:誰って聞かれると難しいんですけど、真っ先に浮かぶのはネイト・スミス(※)ですね。
たまたまニューヨークにトランジットで2~3日いたことがあって、そのときに「ニューヨークにいるならはブルーノート行かなきゃ!」と思って、そのときやってたのがネイト・スミスのバンドだったんです。
それで、「めちゃくちゃやべえ、これやろう」って思って(笑)。ネイト・スミスは自分がやりたいことを全部がやってて鳥肌たったし、それからずっと頭のなかがネイト・スミスになっちゃって、影響を受けてますね。
和久井:それからグレッチェン・パーラト、Anomalie、トム・ミッシュ、ルイス・コール、あとはElectro Deluxeというビッグバンドとか、そのあたりをめっちゃ聴くようになりました。ネイト・スミスがビートミュージックへの入り口を開いてくれて、興味を持つようになったんです。
―一方で、ソロピアノの“Sketch#1”やストリングスとピアノの“Can I Just Pray feat.ermhoi”のようにクラシカルな曲もありますね。
和久井:自分のできることのひとつとして、あえてクラシカルな作風の曲もつくりたいなって思ってつくってみた感じです。ビートじゃなくて、ピアノの和声感や弱音の美しさをこの4、5曲目では表現したかったです。
―ピアニストとして影響を受けた人は誰ですか?
和久井:ブラッド・メルドー(※1)、ティグラン・ハマシアン(※2)、あと……板橋文夫さん。
―なるほど。“Escape feat.mimiko”のような躍動感ある曲にもメルドー的なものを感じましたが。
和久井:この曲はブラッド・メルドーを意識したわけじゃなくて、フィーチャリングのmimikoのためにつくった曲なんです。たまたま友人の紹介で、mimikoのライブに行って「こんな人、日本にいたんだ!」と思って、この人と絶対曲つくろうと数週間後にmimikoにデモを送りつけてました(笑)。
―そのmimikoさんが入ってるもうひとつの“Maze”という曲は海外でも聴かれそうな曲に感じたんですが、これまで海外からの反応はありましたか?
和久井:私がKazuki Isogaiさんと連名でリリースをしている曲は、80%ぐらいアメリカで聴かれているらしくて。ローファイヒップホップはたぶん聴かれやすいのかな。その流れで、自分の曲がちょっとだけ海外で聴かれている感じです。
―海外にアプローチすることに興味は?
和久井:それはもちろんありますね。だから歌詞も英語にしてますし、海外に聴かれたいと思って曲はつくってます。
―型にはまらず、グローバルに聞かれる可能性を感じる曲の構成や演奏ですよね。
和久井:でもミックス、マスタリングをやると「まだまだだな」って思っちゃうところがあります。音が全然違ってて、そこをずっと悩んでますね。
―最終的な鳴りのところまで、自分でやりたいんですね。
和久井:そうです。だからこそ、マジで課題だなって思ってますね。
―もうひとつ、シンガーのキャサリンさんとやられているLioLanは、どういうユニットなんでしょうか?
和久井:いってしまうと、キャサリンを世に売り出すためのプロジェクト(笑)。ソロよりもポップな音楽を意識してつくっています。キャサリンは大学の後輩で声がすごくよくて、デモをつくって歌ってもらうって遊びをずっと前からしてたんです。
―ポップな音楽を意識しているというのは、先ほどのポップスとは違うんでしょうか?
和久井:曲調はキャッチーでポップかもしれないけど、音づくりはめちゃくちゃ時間をかけているから、そこを聴いてほしいのかもしれないです。たとえばコードの話をするとLioLanは、ここをリハモ(※)したいと思っても、あえて抑えて普通にしています。
複雑なコード進行で曲をつくろうとすると音そのもののよさやビートが映えない、シンプルなコード進行でつくることで曲全体が引き締まってかっこよくなる、って話を聞いて。自分もシンプルなコードや構成で曲をつくってみよう、と思ったことはLioLanに活かされていますね。
―LioLanのトラックをつくるときは、自分のソロをつくるときと違うんですか?
和久井:全然違いますね。LioLanはシンセをめっちゃ使うので、とにかく音づくりに時間がかかります。
―自分のソロは1日で1曲つくれると言っていましたが、それより時間かけてるんですか?
和久井:たぶん1曲に1~2週間かけてます。DAWをいじることに時間がかかるんです。素材を探したり、ビート、音色づくりにもすごい時間がかかる。
私はプレイヤー気質だからプレイにはそんな時間はかからなくて、自分の曲で使うのはピアノ、ローズ、ベース、ドラム、ギターと決まってる。でも、トラックで聴かせるとなったら、音そのものの説得力を考えたり、一つひとつのフレーズを吟味するのですごく時間かかりますね。
―Madlibは5分で1トラックつくるって言ってましたが、でも、和久井さんも楽器なら素早くつくれますもんね。
和久井:そうなんですよ。ピアノでならもう息を吸うようにできるんだけど、打ち込みになった途端にすっごい時間かかっちゃう。まだはじめて1年とかだからペースが遅いのかなっていうのもありつつ、打ち込みもできるようになったら最強の人類になれるなと思って(笑)、いまちょっとがんばってる感じです。
―それはたぶん最強だと思いますよ。ちなみに、理想とする音楽家像はありますか?
和久井:もっと音そのものに説得力を持たせることができる音楽家になりたいです。音を波形で感じられる人、というか。トラックメイカー、プレイヤー、あと作曲家という3つの柱でトップになれるような音楽家になりたいですね。