2022年12月22日 11:31 弁護士ドットコム
インターネットのスラング「BBA(ばばあ)」。女性に対する侮辱的な使われ方をするときもあれば、一種の愛情が含まれていたり、女性が自嘲気味に使うこともある言葉だ。
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ある意味で深みのある「日本語」と言ってよいかもしれないが、文脈によっては「BBA」呼ばわりされて、傷つく人は間違いなくいるだろう。
今回、このネットスラングを真正面から考えてみたい。SNSなどで、女性に向かって「BBA」と書き込むことは法的に問題あるのだろうか。ネット中傷問題に詳しい中澤佑一弁護士に聞いた。
――女性を「BBA」呼ばわりすることは違法でしょうか?
「BBA」は「ばばあ」を意味し、女性の年齢や容姿を揶揄する侮辱的なネットスラングです。
これまでの裁判例でも、その意味内容は特段問題にならず、侮辱的表現だと認められています。基本的に「BBA」も「ばばあ」も同じ表現として考えればよいでしょう。
ネット上の投稿が問題になった裁判例で「BBA」「ばばあ」と侮辱する発言が違法だとされたケースはいくつも確認できます。
しかし、いずれのケースも、さまざまな悪口の中の一つとして「BBA」が用いられており、「BBA」が単独で違法とされたものは、私が知る限りありません。存在したとしても、ごくごく例外的な裁判例だろうと思われます。
――どのように違法とされるのでしょうか?
「BBA」と呼ばれることで侵害される権利は「名誉感情」と言われるものです。
「名誉感情」の侵害の成否は、その表現が社会通念上許容される限度を超えて侮辱的なものか、によって決まります。
言われた側が不快感を覚える表現というのは多々ありますので、単純に「私は傷ついた」「私が嫌だと思った」では違法とはなりません。
裁判では、「あなたの感覚」ではなく、社会通念上許容できる範囲かどうかが、検討されることになります。
――その判断はどうなっているのでしょうか?
名誉感情の侵害と判断されるかどうかは、裁判官の価値観や感性によって左右されると思われ、その分水嶺は微妙です。弁護士としても、見通しが難しい面があります。「不適切な発言だけど違法ではない」という領域もかなり広くあります。
特徴的な判断を示した裁判例として、匿名掲示板への複数の投稿が問題となった発信者情報開示請求の事例で、「デブス妖怪BBA」という投稿は違法としつつ、「欲求不満ババア」は違法ではないとしたものがあります。
また、同じように「若づくり」という言葉もあります。これに関しては、文脈とほかに何を言っているかが一番のポイントとはなりますが、基本的には「言われた側は不快ではあるが、違法ではない」というラインではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
中澤 佑一(なかざわ・ゆういち)弁護士
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。弁護士業務の傍らGoogleなどの資格証明書の取得代行を行う「海外法人登記取得代行センター Online」<https://touki.world/web-shop/>も運営。
事務所名:弁護士法人戸田総合法律事務所
事務所URL:http://todasogo.jp