100年以上に渡って読み継がれるイタリアの児童文学『ピノッキオの冒険』。ディズニー映画や絵本など、どこかで読んだことがある方も多いとおもいます。
今回ご紹介するのは、『バンズ・ラビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ監督が手がける誰も観たことがないピノッキオの物語。
もちろんお話の主人公もピノッキオですが、そのストーリーは似ているようで似ていない “別物” なんです。
毎週金曜は各配信サイトで観られるオススメ作品を紹介する日。
今週もよく頑張った……週末はおうちでゴロゴロしながら、Netflix映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』を観て、カウチポテトになっちゃお~!
【あらすじ】
物語の舞台は、ムッソリーニが支配するファシズム時代のイタリア。
第一次世界大戦で1人息子のカルロを失ったゼペットじいさんは、ショックのあまり生気を失い酒浸りの日々を送っていました。
ある大雨の晩、酒に酔ったゼペットじいさんは息子に会いたいがあまり、息子の墓のそばに生えていた木で木彫りの人形を作ります。
それを見ていた木の精霊が、人形へ命を吹き込むと……翌朝本物の子どものように話し、動き始めたではありませんか!
【ココが見どころ!】
<その1:全く新しい「もうひとつのピノッキオ」>
ウソをつくと鼻が伸びたり、悪いやつらに利用されたり、大きな魚に飲み込まれたり……。
ストーリーは『ピノッキオの冒険』によく似ているのですが、その内容は似て非なるもの! ピノッキオが何度も生まれ変わるところ、そして戦争にまつわるシーンは、本作ならではといえましょう。
また、登場キャラクターが絶妙に違うところもポイント。
ピノッキオを惑わすネコ・キツネ・人形師といったキャラクターがどのように隠れているのか、ぜひ作品をみてほしいです。
ひょっとしたら、本家のお話の細かいパートを忘れている人もいるかもしれません。でも、まっさらな気持ちで鑑賞しても感動を味わえると思いますよ!
<その2:ありのままの自分でいること、ありのままを愛することを教えてくれる物語>
ファシズム時代は市民が従順な操り人形として生きる世界。そんな時代でもピノッキオは自由奔放に振舞おうとします。
ピノッキオはいつだって自分自身であろうとしますが、周りはそれを許してくれません。
大人に逆らうな、良い子であれ、従順であれ。そしてほかならぬゼペットじいさんまでもが、息子・カルロのように行儀のいい子どもでいるよう強要してしまうのです。
それでもピノッキオはゼペットじいさんが大好きだから、彼の幸せだけを願います。
ありのままでいること、ありのままを愛することって、案外難しい。でも、その心を持ち続けることの大切さに気づかされました!
<その3:驚異的なストップモーションと豪華すぎる声優陣>
本作において最も度肝を抜かれたのは、全シーンがストップモーションであるところ。
同時配信されている舞台裏をとらえたドキュメンタリー『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ:手彫りの映画、その舞台裏』でも明かされていますが、人形の造形、表情や動作へのこだわりなど、すべてが尋常じゃないほどハイレベル!
表情が変わるたび顔を付け替えたり、シリコン製の皮膚を動かしたりと、途方もない労力を費やしているんです。
もうひとつ注目すべきは、豪華すぎる声優陣。
ピノッキオを見守るコオロギのクリケットはユアン・マクレガーさん、木の精霊&死の精霊をティルダ・スウィントンさん、ファシストの役人・ポデスタの息子を『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のフィン・ウルフハードさんが演じているのです。
極めつけは、猿のスパッツァトゥーラを『キャロル』や『ロード・オブ・ザ・リング』でも活躍するケイト・ブランシェットさんが演じている点! まさかの配役すぎて、もう1度観なおしたくなっちゃいました!
【劇場でも観れます】
デル・トロ監督ならではの視点、価値観によって生み出された、新解釈のピノッキオ。見事な映像美と類を見ないストーリーに圧倒されてください。
ちなみに本作は、2022年11月25日から一部劇場でも公開されています。大型スクリーンで鑑賞すると、配信とはまた違った感動を味わえそうです♪
■今回紹介した作品
Netflix映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(原題:Guillermo del Toro’s Pinocchio)
2022年12月9日より独占配信中
2022年11月25日の一部劇場にて映画公開
※カウチポテトとは:ソファや寝椅子でくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごすようなライフスタイルのこと。
執筆:田端あんじ (c)Pouch
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