2022年12月15日 16:11 弁護士ドットコム
長崎県の北村貴寿県議が、JR大村線の列車内で、酒に酔って手すりをつかんで懸垂する様子がTwitterに投稿され、話題となっている。
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動画は12月10日夜に撮影されたもの。北村貴寿県議は12月14日、記者会見で事実を認めた上で謝罪した。
北村県議は酔っていて記憶がないようだが、車内での懸垂行為は法的にどのような問題があるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
動画を見て、つい「いい筋肉してますね(体幹が強い)」と思ってしまいました。ところで、今回の行為が、法的に問題にならないかを検討したいと思います。今回の当事者が県議の方ということですが、県議の方がどうかは関係なく法的な問題が生じる可能性があります。
まず、刑事上の責任はどうなのか検討しますと、犯罪の成立は難しいところかと考えます。
次に、民事上の責任についてはどうでしょうか。中々考えにくいところではありますが、懸垂が原因で電車を一時停止させたような場合、民法709条に基づく損害賠償請求の余地はあります。しかし今回は運行に一時停止など支障は出なかったようですので、請求は難しいかと思われます。
ただし、もし懸垂して吊り革が壊れた場合は別です。刑法261条の器物損壊罪にあたる可能性があります。この犯罪に当たった場合、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料が課されることになります。普通に酔っぱらっていただけならば、責任能力は認められますね。また、民法709条に基づく損害賠償請求も認められると考えます。
いずれにしても電車内で懸垂をする行為は他の乗客の方に迷惑を掛ける行為です。議員かどうかは関係なく、不適切な行動になります。
筋トレをしたい場合、最近駅前に便利なジムが増えており、そちらで思う存分やって頂きたいと思います。そんなことを言いながら、私も昨日の筋トレによる筋肉痛で腕が上がらない状態です。真似をする人が増えないことを祈るばかりです。
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/