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“着心地の悪さ”払拭 白衣の「クラシコ」が挑む入院患者のための心地良い服作り

2022年12月15日 11:21  Fashionsnap.com

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患者衣ブランド「lifte」

Image by: クラシコ
 テーラード技術を取り入れた白衣を中心に医療用品を手掛けるクラシコが今年5月、入院セットサービスを展開するエランと共同で、入院患者のための患者衣ブランド「リフテ(lifte)」を立ち上げた。従来の患者衣において長年課題となっていた、生地のごわつきによる着心地の悪さやデザイン面を見直し、ファッション性と機能性を兼ね備えたアイテムへと昇華させた。現在は約5施設に導入。ローンチ後から医療現場で好評だといい、2022年内に十数施設に導入施設を拡大する。

 リフテは「多くのストレスを伴う入院生活を少しでも心地よいものにできたら」といった思いから立ち上げられたブランド。「甚平」と「浴衣」の2タイプを展開し、年齢・性別を問わずに幅広い層が着用できるようピンクベージュ、ダスクブルー、グレー、バーガンディの全4色を揃えている。
 リフテの商品企画・デザイナー中尾氏は「2015年頃から私含め社内の色々なメンバーが、現場での患者衣への不満や新しい患者衣のニーズを感じていた。大学病院からもっと良い患者衣を作ってくれないかという相談をいただいたり、社員が入院した際に貸与された患者衣に不満を抱くなど、きっかけとなる出来事がいくつもあった」と振り返る。従来の患者衣は生地が薄く、ゴワゴワとした肌触りで決して着心地が良いものではなかった。また、寝起きした際に簡単に着崩れてしまうため、胸元がはだけてしまうといった問題もあった。調査を進める中で、「ペラペラな、“いかにも病人っぽい”デザインの患者衣を着るとさらに気持ちが落ち込む」「友人がお見舞いに来た時にあの姿で出るのは恥ずかしい」といった声も挙がるなど「デザイン面の不満」「生地への不満」が浮かび上がってきたという。

 「2018年に改めて病院や関連施設など現場でリサーチを行い可能性を検討したが、当時はプロダクトは作れそうだが、流通させるのはなかなか難しそうという感触を得た。2019年9月に入院セットサービスを展開するパイオニアのエランとの出会いがあり、クラシコが商品開発、流通をエランという役割分担でプロジェクトが一気に進みはじめた」(中尾氏)。
 これまでにも多くの課題があったにも関わらず、患者衣のデザインが長らく変わらなかった背景には、患者衣を清潔に保つための運用システムの体制があるという。ほとんどの病院は大量の患者衣を洗濯するためにリネンサプライ会社と協業しており、リネンサプライ会社は患者衣を清潔な状態にするために、家庭用の洗濯よりも強い洗剤や薬品を使用し、複数回かけて洗浄。そのため、患者衣に用いられる素材は硬くて肌触りの悪いものが主流となった。
※リネンサプライ会社・・・リネン製品の在庫を抱えており、契約先に貸し出しを行う。使用済みのリネン類は定期的に回収し、洗濯仕上げをして契約先に納品する。

 リフテでは患者の不満と病院・リネンサプライ会社の事情、双方の背景を汲み取りながら、工業洗濯に耐えながらも長く柔らかさ・風合いを保つ素材開発に着手。2年半の歳月をかけて、アイテムを開発した。生地メーカーの協力のもと糸からオリジナルの生地を完成させ、開発中は何度も洗濯工場に足を運びながら約14種類の試作品で80回以上の洗濯を試みたという。
 クラシコの大和新代表取締役社長は、ブランド立ち上げ後の反響として「患者さんからは『病院でレンタルされて着用したが、退院後に着るために購入したい』といった声や、看護師さんからは『入院病棟の雰囲気が明るくなった』などの声もいただいている」と話す。今後の展開としてリフテでは、素材のバリエーションの拡充、病気の症状や治療の状況に対応した最適なプロダクトの開発、利用者の声を取り入れた製品アップデートを行いながら、より細かなニーズを捉えた商品開発に取り組む計画だという。

■lifte:特設サイト