仕事の紹介のはずが宗教へと引きずり込まれ、20年以上の月日を信者として過ごしてしまったという女性。「幸せになれる」と勧誘された宗教で、まったく救われなかったという関東在住の40代女性(サービス業)に取材し、体験談を語ってもらった。(取材・文:広中務)
貧乏のどん底でも悩みながらお布施
宗教勧誘の体験談は多くの人から寄せられるが、実際に入信したという人はさほど多くない。そんな中で女性が信者にならざるを得なかったのは、様々な「しがらみ」ゆえだった。
「入信したのは今から25年前です。当時、シングルマザーになり一人息子を育てるために仕事を探していたんです。その時、子供の頃からの知り合いが保険外交員のクチを紹介してくれたんですが、この方が某宗教の熱心な会員だったんです」
あえて名前は伏せるが、かつては強引な勧誘で有名になった、よく知られる現世利益重視の新宗教のことだ。女性が受けた勧誘も強引かつストレートなものだったという。
「仕事が休みの日に話があると家に呼ばれたんです。そこでいってみると3、4人のおば様たちが待っていて『早速だけど、これに入ってお経を唱えれば幸せになる』とか、色々といいはじめたんです」
さすがに面食らって断りの文句を並べた女性だが、手慣れたおば様たちは諦めなかった。
「断ると『あなたは頑固ね!!』と説得してくるんです」
囲まれて家から出ることもできず、女性は仕方なく「入信」を決めた。
入信してからというもの、様々活動に参加していたという女性だが、困ったのは毎年1度やってくるお布施のシーズンだった。当時、女性は本当にお金がなかったからだという。
「あの頃は貧乏で、お布施も数千円程度だったんですが、それでもお布施にするより子供のために使いたいと思っていました」
それなら、いっそ脱会すればよいのではないか……と普通の方は思うかもしれない。でも、一度入ると抜け出しにくいのが「そういう集団」の恐ろしさである。
それでも、お経を読んで「幸福に」なれればよかったのだが、御利益はまるでなかったそうだ。
「入信した後に引っ越して、仕事も変わったので、勧誘してきた方とも縁が切れて、恩恵はありませんでした」
むしろ、宗教を通じた人とのつながりは、女性に不幸を呼び込んだ。
「入信してから3世の夫と再婚しましたが、モラハラに長年悩まされて……今年の夏にやっと離婚できました。子供たちと一緒に逃げたんですが、今の生活のほうがよっぽど幸せです」
女性はこう語っていた。
ちなみに宗教の方は脱会こそはしていないものの、もうまったく活動には参加していないということだった。