2022年12月11日 09:11 弁護士ドットコム
今から年末年始の予定を考えている人も多いことでしょう。弁護士ドットコムには「会社から年末年始に有給を使わないようにという通達がきた」という相談が寄せられました。
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相談者の女性は、派遣社員として、年中無休の職場で働いています。年末年始に帰省をしようと有給休暇の取得を考えていましたが、同期から「本社から年末年始に有給使わないようにと通達がきていた」と聞いたそうです。
すでに家族で旅行しようと旅館なども予約しているという女性。会社の通達に従って、年末年始も有給を使わずに働かなければいけないのでしょうか。森田梨沙弁護士に聞きました。
有給休暇は、一定の要件を満たした労働者に対して当然に与えられる権利であり、これは派遣労働者やパートタイム労働者についても同様です。
会社は、基本的に、労働者の請求する日に有給休暇を与えなければなりませんが、請求された日に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は、日程を変更し、これを他の日に与えることができます。これを、使用者の時季変更権といいます。
もっとも、「事業の正常な運営を妨げる場合」について、過去の裁判例はこれを狭く解釈しており、会社は、単に繁忙期だからという理由だけで有給休暇の指定日を変更することはできません。会社は、代わりの労働者を確保するよう努力するなどの配慮をすることが求められます。
ご相談のケースでは、会社から「年末年始に有給を使わないように」という通達があったということですが、先ほど述べたように、労働者がいつ有給休暇をとるかは基本的に自由ですので、このように一方的に会社が有給休暇の時期を限定することはできません。
ただし、年中無休の職場の場合、年末年始に有給休暇の希望が集中してしまうと、会社は、代わりの労働者を確保することが難しくなるかもしれません。特に、長期の休暇となると、なおさら調整は困難になるでしょう。
よって、そういった時期に年休をとりたい場合、労働者の方も、会社に対して早めに請求する、長期に連続して請求しない、などの工夫をして、会社が代替要員を確保できるようにすることが重要です。
【取材協力弁護士】
森田 梨沙(もりた・りさ)弁護士
中小企業法務、労働案件、一般民事(交通事故、不動産、離婚事件他)など幅広く手掛ける。事案の早期解決及び予防法務の観点から、依頼者と密なコミュニケーションをとることを常に心がけている。趣味はゴルフと漫画。
事務所名:共進総合法律事務所
事務所URL:http://www.kyoshin-law.com/index.html