2022年12月06日 08:41 リアルサウンド
「漫画」は絵と言葉で、あらゆることを表現できるアートだ。10月にTwitter上で公開された創作漫画『1億年後のミュージック』は、混沌とした雰囲気で、意味が捉えにくいが味わい深い、何度も読み返したくなる作品だ。
(参考:漫画『1億年後のミュージック』を読む)
歴史学者や精神科医、未就学児童など、あらゆる分野の人達によって作られた“1億年後のミュージック”。それを聴けば脳が溶けるような感覚になれるらしく、その快感を求めて夜な夜な人々はクラブに足を運ぶ。感情を揺さぶられることが嫌いで、音楽にのめり込むことのない“ぼく”はうっかりクラブに足を踏み入れて――。
作者はバンドマンとしてプロを目指した経験のある、電気こうたろうさん(@gurigurisun)。カオスで、文学的でもある“音楽”をめぐる本作を描いた経緯を聞いた。(望月悠木)
■「わからなかったら仕方がない」
――『1億年後のミュージック』はどのようにして誕生したのですか?
電気:作業中に聴く音楽がなによりも重要であると考えており、着想もそこから得ました。あとはその音楽を聴いて頭に浮かんだナレーションをスマホに打って、それを元に絵をつけています。本作は思いついたその日に完成してネットにアップできましたので、実はそんなに制作時間はかかっていません。
――独特なタッチに感じましたが、どのように描かれているのですか?
電気:クリップスタジオのスプレーツールを使用しています。なるべく速く描くことによって絵が良くなるので、スピードを意識して描いています。まだ、本作を制作した時はまだ描き方が定まっていなかったので、なるべく意味や意図が伝わるように心がけました。
――抽象的な内容だったように感じましたが、「読者に伝わらなかったらどうしよう」といった不安感はなかったのでしょうか?
電気:もともとわかりやすい漫画を描くのが苦手だったので、「わからなかったら仕方ない」というスタンスで描きました。今もそのスタンスは変わりません。
■涙を流した曲は?
――謎めいた主人公でしたが、どのように登場人物を作り上げたのですか?
電気:そこはあまり考えおらず、音楽に身を任せて描いたので自然にそうなりました。彼女が登場したのも、特に意識したことはなく自然に浮かびました。
――電気さんも主人公同様、誰かの楽曲を聞いた時に心身ともに衝撃を受けた経験はあったのですか?
電気:ものすごくたくさんあります。中でも、くるりの『グッドモーニング』という曲の間奏部分は美しすぎて涙がでました。
――今後はどのような作品を描いていきますか?
電気:とりあえず今の絵柄で描けるものを描き切ってから、また絵柄を変化させていきたいと思っています。漫画は4コマ形式を崩さず、冷たいながらも情感のあるものを描いていきたいです。
(望月悠木)