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「給湯器故障でお湯が使えない」「代替機のスペックが低い」こんなとき賃料は減額される?

2022年12月03日 08:51  弁護士ドットコム

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お湯を沸かすのに欠かせない給湯器。冬に壊れてしまっては死活問題だが、すぐには交換が叶わないかもしれない。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、全国的に給湯器の品薄状態が続いているためだ。


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給湯器大手のリンナイによると、2021年9月ごろからベトナムでコロナのロックダウンが発生したことで電子部品の供給不足が起こり、遅延が拡大。半導体などの電子部品も長期的に不足する傾向が続き、影響が強まったという。現在も一部の型式について、数カ月の納期遅れが続いているそうだ。



そんな中、弁護士ドットコムには、賃貸住宅で給湯器が壊れてしまった人から費用負担や賃料減額についての相談が複数寄せられている。ケース別に山本幸司弁護士に法的な見解を尋ねた。



●故障でお湯が使えない、賃料減額される?

多く寄せられていたのは、給湯器の故障でお湯が使えなくなった場合、賃料の減額はされるのか、という相談だ。



「給湯器の故障(経年劣化)により、賃貸マンションの部屋のお湯が出なくなり、交換にはコロナや半導体不足が相まって数カ月かかるとの話です。管理会社に相談したところ、家主に減額の義務はない等言われました」



「入居一カ月ほどで、賃貸マンションの給湯器が故障しました。現在コロナ禍の影響もあり、交換まで数カ月かかる可能性もあるとのことでした。事情は配慮しますが、流石に見通しのつかない数カ月は家族共々疲弊してしまいます」



このような場合、賃料減額は可能なのだろうか。



「民法611条は、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用収益をすることができなくなった場合、賃料は、使用収益ができなくなった部分の割合に応じて減額される、と定めています。そして、賃借物の『一部使用不能』は、賃貸借契約の趣旨や、賃借物の種類・性質等を踏まえて判断されることになります。賃貸マンションの場合、一部使用不能の程度が社会通念上の受忍限度の範囲内であり、通常の居住ができるときは、賃料の減額は認められません。なお、使用不能となった責任が借主にある場合も、賃料の減額は認められません。ご相談のケースですが、居住用の賃貸マンションであれば、日々の生活でお湯を使用するでしょうから、給湯器の故障でお湯が出ない状態が続くと大きな不便を強いられることになります。そのため、通常の居住はできないとして、賃料の減額が認められる可能性があります」(山本幸司弁護士)



その場合、賃料がどの程度減額になるのだろうか。



「実務上の明確な基準はなく、事案によっても判断が異なります。国土交通省作成の「改正民法施行に伴う民間賃貸住宅における対応事例集」では、賃料減額の事例等が紹介されており、参考になります。また、あくまで一つの目安ですが、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会作成の『貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン』では減額の基準が示されています。このガイドラインでは、ガスや風呂が使えない場合の賃料減額割合が『10%』(ただし、免責日数が3日)とされています」(山本幸司弁護士)



●お湯は使えるけど給湯器のスペックが…

給湯器が壊れて臨時で別のものをつけてもらったものの、それまでの給湯器よりもスペックが落ちる場合についても相談が複数あった。



ある男性は、新しい給湯器に交換するのに最低でも2~3カ月かかるため、その間臨時の給湯器にしてもらった。しかし、臨時の給湯器は自動温度調整や自動湯はり機能が使えないという。



「管理会社に入居を決める際に、お風呂の機能も考慮している点を伝え、温度設定などができない間は、家賃または共益費を減額できないか交渉しましたが、民法ではお湯が出ない状態なら減額しないといけない法律はあるが、お湯が出る状態では減額はできないと言われました」



お湯は出るものの、前の給湯器と同じような機能が使えない場合も賃料減額はされるのだろうか。



「自動温度調整や自動湯はり機能のない臨時の給湯器ですと、それまでの給湯器と比べてご不便かと思います。問題は、この不便さが、賃貸借契約や賃借物の性質等に照らして受忍限度を超えるか、という点です。個別の事情によりますが、臨時の給湯器でもお湯が出て風呂を沸かせることや、新しい給湯器に交換するまでの期間に限定されていることを踏まえますと、通常の生活はできていると判断され、減額は認められないかもしれません。しかし、臨時の給湯器を使用する期間が不合理に長期化した場合には、受忍限度を超えているとして賃料の減額が認められるケースもあるでしょう。また、例えば、お住まいの物件について、入居者募集の際に風呂の充実した機能について説明があり、その機能を重視して物件を決めたといった事情があれば、賃料の減額が認められやすくなるかもしれません」(山本幸司弁護士)



●お湯をためることができず困った

別の男性も、臨時の給湯器でもお湯は出るものの、湯はりなどの風呂場の操作機能が全く利用できないため、お風呂にお湯をためることができないという。



「湯はり機能は利用できないがシャワーのお湯は出るというケースなので、極端な話、浴槽に無理やりシャワーなどでお湯を入れて風呂のお湯を貯めようと思えば貯められます。ただ、風呂場に操作機能があることを前提で入居しているため、納得がいきません」



このケースでは、シャワーでお湯をためるほかないようだ。このケースではどう考えられるのか。



「風呂やシャワーの配置・構造にもよりますが、通常、シャワーを使用してのお湯はりはかなり不便であると思われます。一般的な賃貸物件でシャワーを使用してお湯はりをすることは稀でしょうから、ご相談のケースのような事例では、受忍限度を超えるとして賃料の減額が認められやすいでしょう」(山本幸司弁護士)



壊れると生活に大きな支障が出る給湯器。リンナイによると、ガス給湯器の点検・取替え目安は10年ということで、調子が悪くなる前に対策をとる必要がありそうだ。




【取材協力弁護士】
山本 幸司(やまもと・こうじ)弁護士
広島弁護士会所属。企業法務(上場企業、医療機関など)、不動産、労働、相続・離婚問題、刑事事件などの分野で経験を積み、広島市で独立開業。税理士と共同して、法務・税務の両面からトータルサポート。
事務所名:山本総合法律事務所
事務所URL:http://www.law-yamamoto.jp