11月下旬に、全国のパチンコホールにスマートスロット。略してスマスロが一斉導入された。ただし部材の調達が難しいご時世なので、導入数は店舗によってまちまち。僕が見てきた範囲だと、パチスロコーナーにたった5台とか、その程度の導入となっていた。大手だともう少し多いのかな。
もっともスマスロというのはユニットが共用の機材になり、遊技機本体だけを取り替えることが可能。これによって多分ホール側の入れ替え作業はかなりラクになると思うし、なにせメダルレス。つまりメダルを使わず遊技させることができるのが最大の特徴。メダルレスということで、いちいちサンドにメダルを補充することも、ホッパーエラーの対応を店員さんがやることもなくなった。
総じて、導入してしまえばお店側の負担もかなり削減され、ユーザーとしてはメダルを使わないために手指が汚れず、コロナ禍にあっては感染症対策にもなる、画期的な遊技機の登場となる。
後はそのゲーム性なんだけど、これがちょっとどうかなぁ~と個人的に怖くなっちゃうところなのだ。(文:松本ミゾレ)
「6万使って当たらない」
はじめに書いておくと、僕はまだスマスロを触ってない。この原稿を書いている11月末時点で2、3軒のホールを回ってみたが、とてもじゃないが怖くて打てない履歴をしていたためだ。
怖いというのは、単純に吸い込みが激しいばかりではない。数万円分ストレートで飲んだかと思うと、そこから一気に10万円分以上の出玉が伸びる。そんなグラフも散見される。中には30万円分もの出玉を計上するグラフも、SNSには既にアップされている。
ネットにも、スマスロを歓迎する声も多いがそれ以上に「これはちょっとキツ過ぎる」という声も見受けられる。たとえば5ちゃんねるには「スマスロ打ってるんやが6万入れてAT入らないんやが」というスレッドが11月23日に立っていた。何と、この人の書き込みは12時23分。まだお昼時なのである。
恐らくは開店時刻が7時だか8時だかの地域にお住まいのユーザーさんなんだろう。しかしたった数時間のうちに6万円を喪失し、しかもなお打ち続けているわけだ。何故なら突っ込んでも一撃を引ければリカバリーできるという武器が、パチスロに帰ってきたから。
結局このスレッドを立てた人物は、7枚目の諭吉を使ったところで当たりを引くことができたと報告している。そしてその上で「絶対1か月もたんわ」と書き込んでもいる。
もたないのは台の人気のことを指しているのか。それともユーザーの財布の中の紙幣を指しているのか。恐らくどっちもかな?
まあ、性能はさておきとにかく導入されている数自体はまだ少ないから、どのホールでも遊技者続出かと思いきや、意外や意外。既に空き台が出ているホールも見受けられる。
やっぱり単純な話、万枚とか出せるスペックがあろうと、それを引き出すための資金力が乏しいご時世なんだろうなぁ。僕もどうせ打つなら8万ぐらい用意して挑みたいけど、そんなお金を今どきパチンコホールで使うのは怖い。どうせ負けるんだろうし。
既に閑古鳥が鳴くホールも…
昨今はパチンコの出玉性能もかなり苛烈になってきたが、一方でパチスロは6号機区分の時代となり、かなり抑えめの性能になっていた。というのも、パチスロ5号機時代の射幸性の高さが警察庁に睨まれ、2017年に改正規則を公布したという経緯がある。これによって5号機は順次撤去されていき、出玉性能が相当にマイルドな初期6号機群がホールデビューすることになった。
簡単に書くと初期の6号機というのは、コイン持ちがよく、投資速度も抑えられるが、最大2400枚の大当たりの連チャンを契機に強制終了するというシステムが搭載されていた。
それに併せて有利区間という概念もあり、当初は1500G経過することで有利区間が切れる機種ばかりだったが、最近になってこの有利区間が3000に……とまあ、こんな話をここで長々やってても仕方がない。過去に何度も書いてきたことだし。
とにかくこの有利区間という概念はスマスロにもまだ適用されているようだが、その扱いがどうも変わったようで、今では一撃で5000枚、または10000枚出るという6号機以前の状態に戻っているということだけ認識していただければ。
つまり、警察庁の改正規則を遵守して5号機を撤去した5年前のことは、業界にとっては「それはそれとして~」って感じで出玉改革をまた強引に推し進めている最中ということになる。こういうイタチごっこを、この業界はこれまでずっと続けてきていることは、古くからのパチンコ依存の人にとってはあまりにもよく知られた事実である。
だけど蓋を開けてみるとちょっとピーキー過ぎる調整の機種が第一陣としてリリースされたことで、良くも悪くも6号機のまったりした出玉性に慣れちゃったユーザーは面食らっている部分は大きい。
さっきも書いたように、導入1週間で空き台も確認されるようになった辺り、ユーザーからするとスマスロはこれまでの遊技台と同じか、ちょっと夢が見れる程度という扱いで、そこまでの特別視はしていないようにも見受けられる。
パチンコ業界はこのスマスロを、従来のパチスロコーナーを大きく改造し、ユニットごと導入してでも迎え入れたいカンフル剤のように考えていた節がある。
パチンコ業界サイトのwebグリーンべるとでは、8月に「【レポート】期待高まるスマート遊技機、課題は需給バランスに」という記事を出していた。以下のような記述が目を引く。
「仕様面を定めた内規(自主規制)はすでに明らかで、スマスロは、有利区間ゲーム数上限の撤廃、スマパチでは、大当たり確率の最大分母が350に増え、c時短を用いたゲーム性も付与される。とりわけc時短を用いたスマパチは、パチスロAT機のようなゲーム性が想定されており、営業手法にも影響を与える進化となりそうだ」
このように、業界人が多く参照するサイトにおいて、スマスロと今後導入されるスマパチのメリットに注目していたわけで。
大体、このご時世にわざわざ導入する上での初期投資が甚大であるスマスロの全国一斉導入を敢行する時点で、その期待度は少なくとも業界側からは高いと見積もられていたのは明白。
業界の思惑とユーザーの思惑に大きなズレがあるのがパチンコあるあるで今に始まったことではないが、今回導入されたスマスロを見ている限り「これは遊技と言うには射幸性が高すぎるし、警察庁にはどう説明するのかな」と心配になってしまう。
だってこんなんでまた待ったが掛かって振り回されるのって結局末端の僕らユーザーだもの。「同じこと何回やってんだよ」とガッカリしたくないので、第二陣以降のリリースでは、万枚とか目指さなくていいから最低限、のんびり遊べる機種をお願いしたい。
結局射幸性を煽ってついてこれるユーザーなんて、ホイホイ借金しまくってる人だけなんだし。