激安ファッション「SHEIN(シーイン)」が世界で注目を集めている。SHEINはネット通販特化型のブランド。売れ行き、ユーザーの反応をAIが分析し、小ロットでスピーディーに生産する手法をとることで台頭してきた。一方、欧米では「パクリ」を巡る訴訟が相次ぎ、米国への輸入が禁じられている「新疆綿の使用疑惑」も指摘されている。
そんなSHEINだが、中国ではどんな印象を持たれているのか?(文:昼間たかし)
中国で暮らす人たちに聞いてみると……
何人かの中国人に聞いてみたところ、ネットニュースなどを通じて「日本でのSHEIN人気」はよく知られていた。では、SHEINの中国国内での評判は、どんなものなのだろうか。
中国の大都市に住む女性(20代)に話を聞いてみると、こんな答えが。
「中国人はSHEINなんて買いませんよ。だって、あれは海外向けブランドで中国国内では売られていないんですから」
そう。SHEINは中国人が中国で創業した企業のブランドで、生産地も中国なのだが、中国国内に向けての販売は基本的にしていないのだ。もはや本社も中国にはなく、運営主体はシンガポールのロードゲットビジネスという会社だ。
あまり知られていないが、SHEINの源流は創業者の许仰天が2008年に設立した「南京点唯信息技术有限公司」という会社。最初は欧米市場向けにウェディングドレスを低価格販売して成功し、レディースファッションへと移行した。最初のうちは「中国国内の卸売り市場で仕入れた商品を海外向けサイトで販売する」というビジネスだったが、SNS活用やインフルエンサー起用で利益を拡大。2014年以降に、自社ブランド製品の生産から販売までのサプライチェーンを構築した。
そんなわけで、中国由来の企業だということもあり、中国人たちも「最近、めちゃくちゃ急成長している海外向けに服を売っている会社」というぐらいの認識はある。しかし、報じられるニュースも「原宿に実店舗オープン」といったものなので、彼らにとってSHEINは身近な存在ではなく「海外の話題」という感じなのである。
「そんなに安いとは思いません」
中国の人たちは、そんなSHEINにあこがれていたりするのだろうか? 別の中国人男性(20代)に話を聞いてみると、こんな話が聞けた。
「日本ではSHEINの安さが注目されているようですが、そんなに安いとは思いません。だって中国にはもっと安い服をたくさん売ってますから」
これは実にその通りで、中国でもっともメジャーなECサイトである「淘宝(タオバオ)」で、アパレル関連のキーワードを検索すると、SHEINと同じか、それ以下の値段で様々な衣服が販売されている。
この男性は「拼多のほうが安い服が多いので、最近はそっちを使ってます」と語っていた。
この「拼多」は新興のECサイトだが2020年末にはアリババを抜いて、利用者数トップとなったとも報じられたサイトだ。急成長の背景には地方都市や農村部でのユーザーが増加したと指摘されているが、ようは所得の決して多くないユーザーをターゲットにした結果、さらに安価な商品が並ぶようになっている。
つまり日本では「激安中国ファストファッション」として報じられ、「そんなに安いのにはウラが」と見られるSHEINだが中国の現地視点で見ると、「そんなもんだろ」という感覚らしい。
まあファストファッションは軒並み、賃金激安エリアに工場を作って服を作らせているというのは間違いないんだけどね。