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交通死亡事故ゼロの本気度は? ホンダの最新技術を体験

2022年12月01日 08:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ホンダは2050年までに同社の2輪車・4輪車が関与する交通死亡事故をゼロにするとの目標を掲げている。野心的な目標に思えるが、実現可能なのか。カギを握るのが同社の安全運転支援システム「Honda SENSING」の機能向上だ。ホンダ車には今後、どんな機能が追加となるのか。開発中の技術を体験してきた。


○運転支援の味付けがクルマ選びを左右する?



Honda SENSINGはカメラやセンサーを使った安全運転支援システムのことで、例えば衝突軽減ブレーキや誤発進抑制機能、高速道路などで使えるアダプティブクルーズコントロール(ACC)といった機能が含まれる。現在は日米で99%、グローバルで86%の新車(ホンダ車)がHonda SENSINGを搭載しており、累計販売台数は1,400万台に達する。ホンダによると、軽自動車「N-BOX」について調べた結果、Honda SENSING搭載車の追突事故発生率は82%、歩行者事故発生率は56%減少しているそうだ。



2021年には自動運転レベル3を世界で初めて実現した「Honda SENSING Elite」を発売。2022年からは全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360」の導入を中国で始めた。ホンダは今回、Eliteと360の今後について発表し、開発している技術のいくつかについて報道陣向けに体験会を開いた。



Honda SENSING 360については2030年までに、先進国で全ての4輪車に搭載することを目指す。日本では2023年に搭載車を発売する予定だ。360には今後、「ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能」などを追加する方針。新技術は地域のニーズに合わせて順次、追加していく予定だ。


今回の体験会ではハンズオフ機能の付いたACCの完成度に驚いた。体験したのは、栃木にあるホンダのテストコース。オーバルコース(楕円形)でカーブがきつく、ハンドルを持ったままのACCでもクルマを信頼できるかどうか微妙な状況だったのだが、車速100km/hにセットしたテスト車は直線では設定速度通りに白線の中央を走行し、カーブの前には速度を70km/h台前半くらいまで自動で減速して、曲率の高いカーブを難なく切り抜けた。

この機能は高精度地図と連動しており、カメラとGPSで自車の位置を把握し、地図と照らし合わせてカーブを予測しながら、速度の調節を行っているそうだ。カーブに入る前の減速はとてもジェントルで、うまいドライバーの助手席に乗っている感じで前後に揺すられることがなく、違和感もない。しかも曲がる時には、左折なら白線内のちょっと左寄りを走ってくれるから、逆方向に飛び出してしまいそうな心配もほとんど感じなかった。



設定速度で走行中、前に遅いクルマがいたら自動で追い越し、また走行車線に戻ってくれるという機能も試すことができたのだが、これら一連の流れをハンズオフのままこなしてくれることには驚くばかり。ウインカーも操作していないし、ハンドルに手も触れていないのに車線変更してくれて、元の車線に戻ってくれるのだから楽なことこの上ない。もちろん追い越しするかどうかを判断する際には右側の車線にも目を配っていて、危険な場合には追い越しを行わない。


Honda SENSING Eliteについては、一般道での運転支援機能を拡充していく方針だ。具体的にはACC、ハンズオフのACC、自動駐車(目的地で降車したら自動で駐車しておいてくれるオートバレーパーキングも想定、2020年代後半までの技術確立を目指す)といった機能を使えるよう、技術開発を進めているという。こちらは体験できなかったのだが、一般道でもACCが使えるようになれば、かなり運転が楽になりそうだ。



一般道で運転支援システムをフルに活用するには、複雑な交通環境を正確に把握することが不可欠になる。ホンダでは一般道における認知・理解技術にAIを投入し、あらゆるシーンでのさらなる事故低減につなげていく意向だ。



体験できた技術については、ACCはもちろん、地図と連動してカーブ前に減速する機能もハンズオフも他メーカーが実用化しているので、ホンダが世界に先駆けている技術だとはいえない。ただ、減速の具合やカーブの曲がり方、つまり、(ほぼ)自動運転を行う場合の運転のうまさが、なんとなくホンダならではという気がした。



自動運転に近い技術は今後、ほとんどのクルマが装備する当たり前の機能になっていくと思うが、その際のクルマの制御、運転のうまさにはメーカーによる差が出そうだ。自分の好みに合うクルマの動きもあるので、メーカーとの相性もあるだろう。



例えば2022年のクルマ好きが「ホンダ車の魅力といえばエンジン!」といっているように、2050年のクルマ好きは「ホンダ車の魅力といえば自動運転の制御のうまさ!」といっているかもしれない。運転支援システムの完成度がクルマの魅力を左右する時代も、そう遠くはなさそうだ。(藤田真吾)