2022年11月30日 13:11 弁護士ドットコム
11月23日深夜、東京・新宿の路上を東京メトロ・丸の内線車両が輸送されていました。繁華街の道路を「走る」電車の光景はめずらしく、多くの人たちが写真や動画を撮影して、SNSにアップしていました。
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一方で、そんな光景を写真に撮ろうと、車両を追いかけて車道を走ったり、中央分離帯で撮影する鉄道ファンの姿も動画に記録されており、SNSでは「車道を走ってるけど大丈夫?」「道路走るんじゃねえ」などの声も上がっています。
こうした行為に法的な問題はないのでしょうか。
「歌舞伎町のどまんなかに電車が走るのはじめてみたのでとても驚きました」
そう話すのは、現場を目撃した即興パフォーマー、マッツンさんです。マッツンさんは、動画を撮影してツイッターに投稿しました。
東京メトロの広報担当者によると、「廃車となる車両(丸ノ内線02系)の陸送をおこなっておりました」とのことです。
そこで気になるのが、車両を撮影しようと集まってきた鉄道ファンの人たちです。ツイッターに投稿された複数の動画では、集団で車道を走って追いかけるなど危険とみられる行為がありました。
マッツンさんはそのときの様子を「鉄道ファンの方でカメラをお持ちの方何人かいらっしゃいまして、まわりはざわついてました。カップルとかも騒いでたのが印象的でした」と振り返ります。
東京メトロの広報担当者も弁護士ドットコムニュースの取材に対して、次のようにコメントしています。
「弊社車両にご興味をお寄せいただき有難い限りではございますが、交通ルールを逸した撮影等の行為は大変危険です。安全に支障が生じる恐れもあり、周囲の方々のご迷惑ともなりますので、ルールやマナーに十分に配慮いただきますようお願いいたします」
車道を歩行者が通行する行為に問題はないのでしょうか。濵門俊也弁護士に聞きました。
丸の内線の車両が輸送されていたのは、車道と歩道が区別されている道路でした。この場合、歩行者が車道に出る行為は、どのような法的な問題があるのでしょうか。
「まず、歩行者の通行については、道路交通法10条1項において、次のように規定されています。
『歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる』
つまり歩行者は、原則として右側通行することが定められています。
さらに、道路交通法10条2項には、次のように規定されています。
『歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路においては、次の各号に掲げる場合を除き、歩道等を通行しなければならない。一 車道を横断するとき。二 道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき』
道路工事などによって、歩道を通行できないなど、やむを得ない場合を除いて、歩行者は、歩道や路側帯がある道路では原則として、歩道や路側帯を利用しなければなりません。
なお、歩道や路側帯が道路の片側だけに設けられている道路であっても、同じように歩道や路側帯を利用することが決まっています。
このため、今回のような歩道がある道路において、歩行者が車道を歩いたり走ったりする行為は、これらに抵触するおそれがあります。ランナーが車道を走っているケースもありますが、同様です」
危険な行為に見えますが、万が一、自動車との接触事故が起きた場合、歩行者にも過失が認められるのでしょうか。
「歩車道の区別があり、車道通行が許されない場所での事故となりますから、歩行者にも基本20~30%の過失割合が認められます。また、夜間や幹線道路ですと5~15%の過失割合が加算されることもありえます」
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/