2022年11月28日 14:51 弁護士ドットコム
タレントの松本伊代さんが、バラエティー番組「オオカミ少年」(TBS)の企画で、落とし穴に落下して腰椎を圧迫骨折した。全治約3カ月と診断されたという。
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TBSは事前シミュレーションや安全対策に努めていたというが、芸能人の松本さんには労災が適用されるのだろうか。
TBSが11月26日、報道各社に事故を発表した。松本さんは24日の収録にゲストとして参加。クイズ企画「ソクオチ」で約1.5メートル下に落ちて腰を傷めたという。
企画は過去2回おこなっており、穴の下にはクッションとしてウレタンを敷き詰め、事前シミュレーションも実施していたが、TBSは「このような結果となり、大変申し訳なく思っております。今後、同様のことが起こらないよう、番組制作に際しての安全管理をさらに徹底してまいります」と謝罪した。
早期の回復が願われるところだが、松本さんのような「芸能人」でも、仕事でケガをすれば、労災は認められるのだろうか。近藤暁弁護士に聞いた。
——芸能人にも労災は認められるでしょうか
労災保険法の適用を受けるには、労災保険法上の「労働者」に該当する必要があります。
これは労基法上の「労働者」と同じ概念とされていて、芸能人が労基法上の「労働者」に該当するかどうかについては、通称「芸能タレント通達」(1988年の厚生労働省通達)で判断要素が示されました。
通達では、次のいずれにも該当する場合、芸能人は労基法上の「労働者」ではないこととされています。
(1)当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっていること。 (2)当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではないこと。 (3)リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはないこと。 (4)契約形態が雇用契約でないこと。
多くの芸能人は上記の4条件に該当する「労働者」にあてはまらず、労災保険法による補償を受けることができません。
しかし、労災保険法上の「労働者」でない人でも、労災保険への任意的な加入を認める制度「特別加入制度」の対象として、2021年4月1日から芸能関係作業従事者(俳優、ミュージシャンなど)も含まれることとなりました。
松本伊代さんのような芸能人も、特別加入制度を利用することにより労災保険法による補償を受ける余地があると言えます。
なお、特別加入の手続きは、芸能人自らが特別加入団体を通じておこなう必要があります。
【取材協力弁護士】
近藤 暁(こんどう・あき)弁護士
2007年弁護士登録(東京弁護士会、インターネット法律研究部)。IT・インターネット、スポーツやエンターテインメントに関する法務を取り扱うほか、近時はスタートアップやベンチャー企業の顧問業務にも力を入れている。
事務所名:近藤暁法律事務所
事務所URL:http://kondo-law.com/