旅行支援も始まり東京にも観光客の姿が増えてきた。そんな人々で賑わうのが築地。市場が豊洲に移転した後も場外市場はプロの買い物客と観光客で朝から賑わっている。でも、築地で魚を食べようと思ったら、けっこうなお値段。ところが、さすがは築地である。ワンコインで心ゆくまでマグロを堪能できる穴場があった。(文:昼間たかし)
※記事で紹介しきれなかった画像があります。関連記事からご覧になれます。
どこまで食べてもずっとマグロ
こんな感じで売られている(写真:昼間たかし)
元来、朝早くから働く人の多い築地にはガッツリ系の飲食店が揃っている。ラーメンから定食まで食べるには困らない。ただ、ちょっとイメージとは違うかもしれないが「魚」は話が別。というのも、築地で魚を食べることができる店は、だいたい観光客向けで、値段も高めなのである。ちょっとした刺身定食でも1000円以上するし、海鮮丼なら2000円。寿司も銀座に比べると格安とはいえ、千円札が何枚も飛んでいく。
そんな中で、激安価格でマグロを堪能できる店を見つけた。それが、場外に店を構える「丸豊」だ。
実はこの店のメインは「おにぎり」。並べられたおにぎりは、鮭なら辛口と甘口が両方。サバも切り身とほぐしの両方などラインナップは多彩だ。なによりもともと市場で働く人向けの店のためサイズは巨大。大人でも2コ食べると、ちょっと苦しくなってしまうレベルだ。
そんな店に存在するのが、この「鉄火巻」である。写真を見てもらえれば一目瞭然なのだが、マグロの量がハンパない。普通の鉄火巻は、「海苔巻きの中心にマグロが入っているもの」という感じだが、丸豊の鉄火巻は「マグロの塊を、ご飯と海苔でコーティングした」というような感じなのだ。
普通、海苔巻きは「米」でおなかがいっぱいになる感じだが、ここのはマグロで腹が満たされていくイメージだ。心ゆくまでマグロを堪能できるのは間違いない。
先日、筆者が食べたものは、半ばやけくそでマグロを巻いているのか、「海苔→マグロ」に直接到達する部分すらあった。鉄火巻というのは、マグロとご飯、海苔のハーモニーを楽しむものだと思いがちだが、丸豊のものは「マグロを喰らい尽くせ」という仕様なわけだ。
さて、こういうビジュアルをみると、私たちがどうしても思い浮かべてしまうのが「コンビニのサンドイッチ」である。そう、「目に見える部分に、具が異様に偏っている」というやつだ。写真を見ただけだと、この商品も「実物は見かけだおしなのでは?」 と疑う人もいるだろう。
ただ、安心してほしい。そこにあるのは、飛び出してくるのではないかと思うほどギュウギュウに巻かれているマグロの肉だ。ガブリと食らい付くとマグロ。どこまでいってもマグロである。ご飯と海苔の感触もあるにはあるが、ほとんどマグロの塊を食べているかのような食感が口の中に広がっていく。なんという満足度だ。
どこまでもマグロなのだ(写真:昼間たかし)
こんなマグロの塊がパックには6つ。ご飯の量は決して多くはないのに、マグロだけで腹いっぱいになってしまう。ご飯ではなくマグロで満腹感を味わうことのできる鉄火巻がほかにあるだろうか。値段も驚きの486円。500円玉を出せば、手渡しでお釣りを貰うことができる。いくら、あっちこっちでマグロが解体されている築地だからって、こんな価格の鉄火巻はほかにはない。
この異様な満足を味あわせてくれる鉄火巻は、築地では穴場的な存在である。早朝から店は開いているが、午後の早い時間には売り切れてしまう。近所に住んでいるか、出勤前に立ち寄る、あるいはわざわざ、これを目当てに出かけなければ食べることは困難な逸品だ。
なにより、ワンコインでこんなにマグロを食べることができるなんて……これが築地の凄さだ。
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